「いっちねんせーいになったーらぁー♪」
無意識に口ずさむその歌。
私はだいすき。
「ともだちひゃっくにん______」
「またその歌なの?!うるさいって何回言えばわかるのよ!」
でも。お母さんの怒鳴り声は、大嫌い。
バチンッ!!
痛いっ・・・・。
お母さんの、私を叩く手も大嫌い。
「あんたねぇ!そんな歌覚えてるのに小学校の受験問題をどうしてもっと覚えられなかったの!?公立の普通の小学校に行くことなにが楽しみなんだか!」
お母さんは普通の小学校が大嫌いらしいです。
お母さんの叫ぶ言葉は全然わからないけど、きっとぜんぶ私を怒ってる言葉です。
「なんでお姉ちゃんみたいに育たなかったんだか!お腹痛めて産んだのがこの出来損ないなんて・・・もう嫌・・・。」
デキソコナイ
ってなんですか、お母さん。
なんでいつも怒ったあとに、泣くんですか?私は、ないてはいけないんですか?
「きっともうダメなんだわこの子は・・・。せめて・・・せめて、もう迷惑だけはかけないでちょうだい・・・。迷惑だけは・・・。」
わかりました。お母さん。
もうクレヨンで壁を汚しません。
もうお味噌汁をこぼしません。
もうお風呂に入るときに泣きません。
もう・・・・
もう
受験に、おちません。
だから・・・このおうちに居させてください。おばあちゃんの家じゃなくて、このおうちにみんなと住んでいたいです。
お母さん。
お母さん。
おねがいします。
「・・・・。」
佐々木は、ゆっくりと、ゆっくりと、坦々と、自分の幼少期の話を語った。
その話は、まるで私の実体験のように心に響き、何故か紅茶のカップを持っている指先が小さく震えていた。それは佐々木も同じなようで、佐々木も肩が震えていた。
きっと、私のように進んで思い出したくない話なんだろう。
「・・・じゃあ。ここの向かいって言った家も、ほんとは・・・」
「は、はい。おばあちゃんの家です。もう住み始めて、9年くらいになります・・・。」
「そう。」
「お、お母さんはたまにこっちに来て様子を見に来るんです。受験の進み具合とか、学校の評価表とかを見に・・・。」
「それだけを・・・?」
「はい・・・。見たらすぐに帰っちゃいます。まぁ。もういいんですけどね。」
虚ろな佐々木の瞳には、何故か小さく光る水滴が浮かんでいた。
