借金というのは痛い目にあって初めて現実になる。
子供の頃は「借金」とは無関係で、その意味も、その恐ろしさも知らない。
毎日たんぽぽやシロツメクサを摘んで、るんるんしていた時も、初恋でドキドキしたり真剣に悩んでいても、そこには「借金」はなく、裏の生臭さを嗅ぐこともない。
なんらかの関係で借金に直面して初めてその実態を知るもの。
ある意味、性の経験よりはるかに「オトナの聖域」なのかもしれない。
ヒミツが借金に直面したのは18歳の頃。
当時、ビル清掃のバイトで可愛がってくれた60過ぎの女性にヒミツはいわばパシリにされていた。
仕事以外にも使われていた。酒買ってこい、パチンコの台を取っておけ、夕飯を作っておけ、なんてことは毎日だった。
ヒミツ家の教育は「目上の人のいうことは絶対守ること」というもので、まだまだ人生経験が浅く、ヒミツは断る術も知らず、なんでもホイホイ言うことを聞いた。
今では考えられないアホぶりである。
そんなある日、その女性はアパートの近くの酒屋に行って3万円を受け取ってこい、と言った。
もう話はついているから行って名前を言えばわかる、というのだ。
言われるまま店に行き、素直にお金を受け取りに来た、と告げると酒屋の女将とその娘さんは鬼のような血相で睨んだ。
「あんたはあの女の使いで、まだ子供だから判らないだろうけど、人に金を借りるっていうのはそうやって第三者がほいほい受け取りにくるもんじゃないんだよ。ちゃんと返済すればいいってもんじゃない。たかが1万だろうと、3万だろうと、本人が借用書をきっちり書いて土下座して、ようやく借りることが出来るんだよ」
女将さんはそう言いいながらも「関係ないあんたにこんなこと言ってごめんね」と何度もヒミツに誤った。
借用書を書いて出直して来い、と言われ、ヒミツは半泣きで女性の所へ戻り、やんわりと説得して借用書を書かせると重い足取りで女性と酒屋に向かった。
そして、その女性と二人、店のコンクリートの床で女将さんに土下座した。
関係ないのにナゼ私が土下座しなければいけないのか?!と理不尽さと恥ずかしさで涙が出た。
しかし、それと同時に「借金の重さ」と身をもって知った。
女将さんは、若くまだまだ子供のヒミツにお金の基本的価値、借金の重みを教えてくれたのだと思う。
今は密かに感謝している。
それからまもなく、ヒミツは家の借金を10年かけて1千万返済していく怒涛の日々に突入する。
完済したのであえて語らないが、自分が作った借金ならまだしも、家族が遊びで作った借金を返済する苦しみと怒りと憎しみは半端なものではない。
しかも何度も繰り返されると殺すか?と本気で思う。
さて、ナゼ突然こんなことを書いたかというと、昨日、古い友人にお金を貸してくれと言われたのです。
もう、ため息もんです。
金額もウン十万。
そりゃさすがに無理、と即答した。
しかし借金の元は友人の兄弟で、それも2回目でどうしても破産宣告は出来ない立場。どうにも首が回らず泣きつかれたのだそうだ。
一瞬、貸そうかと悩んだ。
というのも、その兄弟がヒミツのところに来て土下座して借用書を書かせようかと思ったのだ。
それでとことん恥さらしにしてやろうかと。
じゃないと絶対そいつ(兄弟)は繰り返す。
友人のためにもけっちょんけっちょんにしてやろうかと・・・。
結局、友人の面子に免じて数万黙って貸して終わらせた。
次また同じことをその兄弟がしたら必ず土下座させようと思う。
ヒミツはよく友人に「お金を貸してくれ」と泣きつかれる。
結果、返ってこなくても納得がいく金額しか貸さない。
ちなみにそのパターンは決まっている。
必ずメールで来る。
そして、「貸してくれないとアパートを追い出さる」とか「車を取られてしまう」とかどれも脅迫じみている。
嫌な言い訳をしてくるのだ。
さらに、決して会って受け取ることはない。
必ず、銀行に振り込んでくれ、という。
もう、これはお約束である。
どんな人でもそう言って来る。
つまり、電話で嫌な空気を感じたくない、顔を合わせたくない、っていうのが見え見えなのだが、
1万円でも他人様から借りる時は土下座しろ!こんちきしょう!!!
と・・・心の中で思ってますが・・・・。
2回目に貸してくれと言ってきたときは縁を切ります。
本当は土下座させて借金の重さを教えてやりたい・・・。
ではまた。