「小雪は時計が読める」
ある日、私が取材から帰宅すると、猫の小雪と留守番をしていた彼がそう言った。
「まさか。小雪のはただの腹時計でしょ」
「いや、分かる」
彼は真面目な顔でそう繰り返した。

小雪は毎朝午前8時頃フードを要求するため、それに合わせて私も8時前後に起きる日が多い。しかし、昨日は仕事が立て込んでいたため、起床時間を1時間早めて午前7時にアラームをセットした。就寝前は「明日はちょっと早く、7時頃起きるからね」そう小雪に声をかけてからベッドに入った。

「ニャオーン」
鳴き声と共に、私の頭皮に痛みが走った。頭が重く、小雪の後ろ足の太い爪が頭皮に食い込んでいる。人の頭に乗って鳴くこと。これが小雪流の人間の起こし方。iPhoneをまさぐって時間をチェックする。午前6時50分。いつもより約1時間早い。後10分眠れるが、せっかく小雪が起こしてくれたのだからと起き上がった。普段より早い時間だが小雪にフードを与え、私自身も朝食の準備を始めた。このときはまだ、たまたま早い時間に小雪が空腹を感じただけだと思っていた。

翌日の予定は午前中から取材。そのため、朝は久しぶりに6時半起きだった。いつも通り就寝前は小雪に声をかける。「明日は6時半起きだからね。おやすみ」
朝の目覚めはいつも通り鳴き声と頭部への攻撃。まだアラームは鳴っていない。iPhoneで時間をチェックする。午前6時15分。またもや、小雪が目覚ましがわりを果たしてくれた。
アラームが鳴った後に起こしに来るのならまだ分かる。アラームが鳴る前、しかもいつもより2時間も早い時間に起こしにくるとは、時計を読めるのではないかと思ってしまってもおかしくない。

私は起こしてくれたお礼を言って、小雪のフードを用意した。


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以上、猫の不思議な話でした。
偶然に偶然が重なったことだとは思いますが、不思議です。