11月22日のお誕生日の方へ

その日は特別な日
なぜならあなたが生まれた日

ゆるぐことないマイルール
理想は現実変えてゆく
かっちりきっちり得意でも
ちがう側面寄り添える

繊細すぎる優しさを
自分にもっと向けてみて
あなたの感性響くほど
たくさんの音が響くから

あなたの生み出す美しさ
たくさんのもとへ届くから

松居直美（オルガニスト。「パイプオルガン」演奏にとどまらない斬新な演奏でオルガンのファンを広げた。日本オルガニスト協会会員。聖徳大学音楽学部、大学院音楽文化研究科教授。国立音楽大学、同大学院、ドイツ国立フライブルク音楽大学卒業。在学中にブダペストとニュルンベルクの2 つの国際オルガンコンクールで優勝し世界の注目をあつめる。リサイタルやベルリン・フィルなど一流オーケストラとの共演、コンサートのプロデュースなど幅広く活躍。テレビやラジオなどへの出演も多く、オルガンの指導もしている)

1956年11月22日

（22(4)・9・6）

～所沢市民文化ｾﾝﾀｰﾐｭｰｽﾞ　　インフォ・マート平成29年3月号～

「割り切れない出来事」

〝曖昧なことは、あまり良いこととはされていない。むろん、社会生活は曖昧なことばかりでは成り立たないし、混乱するばかりだろう。

「はっきりしてよ」

と言ったことのない人はいないはずだ。

多かれ少なかれ、私たちは常に

選択　をしながら生きている。

余談だが、学生の頃、テレビの一般人参加番組に出た知人がアナウンサーに「最近、割り切れないなあと思うことはありますか？」と聞かれ、「10 ÷ 3」と即答したことが今でも忘れられない。

誰でも割り切れないこととは折り合いをつけているが、答えが選択から得られるとは限らないのも事実であろう。

問題は、昨今、答えに至る過程が重視されなくなっているような気がすることである。

たとえ鉛筆を倒すのでないにしろ、答案は3 択ばかりでなく、文章にしろ口頭にしろ、論じることも必要なのではないか……

それは、

割り切れないこともある世の中に必要な、

基本的なコミュニケーション能力に繋がると思うからである。

一方、人間はあえて曖昧にしておく、という高等技術も持っている。今は判断しない、というセリフは時々聞くが、誰もが無意識にしてもこの政治的な手法を、時には駆使しているのではないか。それは悪いことではない。全てを割り切ってしまうと窮屈である。

西洋音楽はある意味、

数学

である。

音価、拍子、音程などなど、数学的な秩序が音楽を支配しているのは
確かだが、割り切れないものもある。

そのひとつが

調律

である。

2 つの音の高さの幅を音程と言う。古来、同時に鳴らしたときにうなりが生じない純粋な音程が良しとされてきた。純正5 度から、音楽の多声化と共にピュアな3 度が好まれた。
ところが、純正な3 度で調律をしてゆくと、ひずみのたまる音程が残る。オクターブの12 音全てにうならない3 度を作ることはできないのである。

そうしてできた「使えない音程」を昔の人は「ヴォルフ」すなわち「狼」の音程と呼んだ。そうやってでも獲得したかった純粋な3 度は美しいが、その代償に使えない音には目をつぶったのだ。

ところが、作曲家とは今も昔も新しいことに挑戦する習性を持つ。そうなると使えない音の存在は大きな問題となった。結果、純正さを多少犠牲にしてでも使える音を増やすということが行われる。どのくらい妥協するのか、どのくらい犠牲にするのか、この手加減は感覚的で、極めてアバウトであった。

現代の科学はそれを数字化しているが、

数字化することによって微妙なアバウトさが失われた。

そもそも調律などというものは本来、学問の対象ではなく

音楽をいかに美しく響かせるか、

というツール、目的に対する1 つの手段であったはずが、

調律論

という目的と化してしまった。

これが極めて難解だから言うわけではないが、

美しさ　とは、

割り切れるとか切れないという領域とは無縁なのではないか。

調律論を否定はしないが、

それが全てではないのではないかと思うこの頃である〟

割り切れない美しさ

形×内面へ

本当の美しさ

センシュアルな人へ

KOTOuBAn 1122

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