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児童養護施設退所後の孤立防ごう 自立支援に動き 

「多くの相談にのりたい」と話す竹沢昭さん=同市中央区

家庭的でゆったりとした自立援助ホームの共同リビング。自炊もしながら自立への準備を進める=神戸市垂水区

 さまざまな理由で親と離れ、児童養護施設で暮らす子どもは全国で3万人に上る。就労する場合、中学や高校の卒業とともに退所しなければならないが、その後の生活基盤は安定せず、行政の支援も始まったばかりだ。「同じ仲間として、支えたい」と当事者らによる支援の動きも相次いでいる。(鈴木久仁子)

 施設で暮らす子どもの進学率は高校が93・6%、大学は11・9%。特に大学進学率は全国平均(54・3%)に遠く及ばない。就職後は自活を余儀なくされ、十分な支援が得られずに孤独感を深めるケースも少なくない。人間関係や仕事になじめず離職した結果、住まいを失う人もいるという。

 こうした若年層を支援するのが自立援助ホームだ。国と都道府県が運営費を補助し、現在全国82カ所。国は2014年度までに倍増させたい考えだ。

 ホームでは、高校中退や卒業後の人を対象に格安で住まいを提供し、指導員が日常生活の立て直しや就労支援などをする。兵庫県内では、今月1日に神戸市垂水区にホームが開設された。ただ定員が12人で入所者の年齢にも上限がある。

 神戸市は、施設退所者を対象に、就職準備金を貸し付けたり、家賃を補助したりする制度があり、本年度は3人が利用した。

 施設で育った人たちも支援に動き出している。06年に発足したNPO法人「日向(ひなた)ぼっこ」(東京)は、当事者が集まり、食事をしたりイベントを楽しんだりするサロンを運営している。

 就職支援、勉強会の開催、行政などへの働きかけなど活動はさまざま。理事長の渡井さゆりさん(28)は「自分の生活だけで精いっぱいの当事者が声を上げるのは大変な苦労が伴う。施設退所後の問題の深刻さを理解してもらうことで、社会的な支援が広がれば」と話す。

 このほか、「なごやかサポートみらい」(名古屋)「CVV」(大阪)なども活動している。

 兵庫県では、児童養護施設で育った神戸市中央区の竹沢昭さん(31)が支援を呼び掛けている。竹沢さんは京都府内の施設を退所後、県内で製造業に就いたが、人間関係や病気で1カ月後に退職した。一時は住まいがなく、ネットカフェを転々とする時期もあった。その後ヘルパーの仕事などを経て、自立した。

 「居場所のないつらさ」を痛感し「後輩の力になりたい」と昨年末から仲間と呼び掛けを始めた。「ワンラブ・ワンライフ」「ひまわりプロジェクト」と名付けたグループを作り、居場所づくりや生活相談などの支援を始めた。口コミで広がり、これまでに15人あまりが竹沢さんを頼ってきたという。

 「退所者が一番欲しいのは、『ただいま』『おかえり』と言えるような場所。施設を出た後、里親を離れた後の支援の大切さを社会に訴えたい」と話す。

 神戸市児童養護施設連盟の会長で、真生塾施設長の富川和彦さん(69)は「これまで施設側も退所した子どもたちの暮らしが気に掛かっていたが、十分なことはできなかった。課題は多いが、こうした活動が軌道に乗ってほしい」と話す。

 竹沢さんのグループは新社会人を応援するための電化製品、布団などの生活用品などを募っている。問い合わせは竹沢さんTEL080・4644・5959かメール(oneloveonelife@mail.goo.ne.jp)で。

(2012/03/05 13:30)