​今は熱も下がり、体は落ち着いています。

でも、あの日、40度の熱にうなされながら感じた「絶望」だけは、今も鮮明に心に張り付いています。

​僕がなぜ、離婚という道を選ぼうとしているのか。

それは単なる喧嘩ではなく、あの一日に全てが凝縮されていました。

​40度の高熱で、意識が飛ぶ寸前だった僕。

それなのに、ひろみは「案件をしろ」と僕を突き放しました。

僕の体よりも、目の前の案件(お金)の方が大事だと言わんばかりに。

​さらにその夜、娘のききが「お寿司が食べたい」と言えば、

病人の僕を一人、鍵をかけて家に残し、アオトも連れて三人でお寿司へ。

車もない僕は、暗い部屋で一人、孤独と熱に震えていました。

​LINEで聞いた僕に返ってきた言葉は、一生忘れません。

「案件してないのに、寿司食いに行けるわけないだろ」

​これまで僕は、どんなに除け者にされても、家族のために尽くしてきました。

アオトが食べ物を捨てれば、必死に叱ってしつけをし、

毎日料理を作り、家族の健康を考えてきた。

「パパには聞かれたくないから」と僕抜きでカラオケに行かれても、笑って耐えてきました。

​でも、あの日、40度の僕を置いてお寿司を食べに行った三人の背中を見た時、

「ああ、僕はこの家族にとって、ただの財布でしかなかったんだ」

と悟りました。

​離婚を切り出すと、ひろみは言いました。

「仲間外れくらいで馬鹿げてる」

「300万払うか、裁判するか選べ」

​過去の不倫を持ち出して、死にそうだった僕をさらに金で縛ろうとする。

離婚届一枚で終わらせてはくれない、その非情さ。

​あの日、僕が流した涙は、悲しみではなく「決別」の涙でした。

これまで尽くしてきた全てを、君たちへの「貸し」にします。

​300万の鎖か、裁判の泥沼か。

望むなら、受けて立ちます。

「ゆうくん」と呼ばれた日々を捨てて、僕は僕の足で歩き出します。