博物館巡りの後編は、午後に訪れた3つの博物館を紹介したいと思います。

まずは、Heeresgeschichtliches Museum

ウィーン軍事史博物館　です。

結論から言うと、この博物館が巡った6つの博物館の中で一番楽しめました！

フランツ・ヨーゼフ1世が、市民の蜂起に備えて兵器収蔵庫を目的として建てられた建物で、

入り口に書かれているKriege gehören ins Museumという言葉は、直訳すると「戦争は博物館のものである」

深読みすると、戦争は博物館内だけで十分だよ、という戦争を反対する意味が込められているそうです。

入ってすぐ、たくさんの彫刻がお出迎えしてくれて、

階段を上ると立派なホールが現れます。

展示を見る前にこの立派な建物で満足してしまいそうになりますが、本命はここから。

時代区分によって展示室が分けられていて、なんと日本語のガイドが置いてありました！

チェコ語やハンガリー語などの解説も置いてありました。

隣国とはいえ、こうしたマイナー言語の解説もしっかり用意している博物館の親切さと本気さに感動しました。

このガイドがあるのとないのとでは、展示品に関する理解度がものすごく変わってくるので、本当にありがたかったです。

ここからは、このガイドをもとに展示品を紹介していきたいと思います。

まずは、30年戦争（1618－1648）勃発前の皇帝軍の兵器や装備の展示室。

トルコ戦争時代の武器や衣類の展示室。

オスマントルコの武器・帽子・階級章（馬の尾）

この大きな絵はウィーン解囲戦（1683年9月12日）の様子が描かれているそう。

最古の制服の1つである1690年ごろの兵士の上着。

ツェンタ会戦（1697年）における戦利品であるトルコ皇帝ムスタファ2世の印璽。

印璽は「いんじ」と読むんだそう。

こんな漢字、初めて見ました…解説難しすぎる！！（笑）

面白いことに、日本にも関係する展示品もありました。

絶妙に反射してしまって見づらいですが、この写真は皇帝・国王軍少佐テオドア・レルヒという人で、

日本にスキーを紹介した人なんです。

レルヒは、1910年（明治43年）に日露戦争に勝利した日本軍を研究するために来日したのですが、同時にスキーを紹介し、日本でまたたくまにスキーが広まったのだそうです。

思いがけずに日本とのゆかりのある展示品を目にすることができ、なんだか嬉しくなりました。

皇太子ルドルフの絵と所有物。

彼は、1899年に自殺するまでこの軍事史博物館の所管官庁の長官だったそうです。

19世紀後半当時の最新軍用品たち。

機関銃や飛行機、電話などのが戦争の様相を変化させてきました。

これは、皇帝フランツ・ヨーゼフゆかりの品々。

彼は最高の元帥であり、優れた戦争指導者だったそう。

近衛兵の展示。この軍服を着て皇帝の護衛にあたっていたと考えるとなんだかかっこいいですね。

こちらは、第一次世界大戦前の制服を着用した実物大の軍人像。

帽子と軍の勲章コレクション。本当に圧巻です。

ただ、展示品が多いため、解説が指している展示品を探すのも一苦労。

途中、探すのを諦めてしまったエリアでは、こうして当時の領域が説明されていているパネルがあったり、

ラデツキ―行進曲でおなじみの軍人ラデツキーの肖像画やデスマスクも…！

戦争時に使われていた楽器や

鉄砲と、付け替え可能な先端部分

結構なバリエーションがあることにびっくり。

マリア・テレジアとフランツ一世、そして息子ヨーゼフの肖像画。

実はウィーンに戻ってきてから、興味本位で個人的に西洋史、特にウィーンにゆかりのあるハプスブルク家について勉強をしていて、ここに展示されているものがちょうど私が勉強しているところとリンクするものばかりでした。

日本語の解説ガイドを読み、ドイツ語の解説パネルを読み、分からない単語を調べて…などしながらじっくり見ていたら、気づけば一時間以上も滞在していました。

一時間くらいなら普通だと思いますが、実はここまで来てもまだ展示の半分も見終えていません（笑）

そして、ここからがようやく20世紀以降の戦争に関する展示がスタートです。

この博物館の一番の目玉と言っても過言ではないのが、こちら。

1914年6月28日、皇位継承者フランツ・フェルディナンド大公と夫人ゾフィーがこの自動車に乗っている時にサラエボで暗殺されました。

土地名を聞いてピンときた方がいるのではないでしょうか。

第一次世界大戦の引き金になったと言われているサラエボ事件です。

歴史を生々しく感じることのできる展示が続きます。

これは、暗殺によって血まみれとなったフェルディナンド大公の軍服と、彼が亡くなった時に横たわっていた長椅子です。

軍服には救命措置のために切り裂かれた跡や血痕が残っています。

フェルディナンド大公の肖像画と、

夫人のゾフィーが暗殺時に所有していたもの。

世界の歴史を大きく動かすような出来事のきっかけの一部が目の前にあると思うと、なんだか不思議な気持ちになります。

そして時代は進み、第一次世界大戦時に使われていた数々の軍事品が展示されています。

軍事史博物館の中で最大の展示物である大砲（38cm 榴弾砲）

写真で伝わりづらいですが、圧倒されるほど大きいです。

このアルバトロスBⅡ複葉機は、1915年まで偵察機として実際に使われていたそうです。

複葉機とは、揚力を得るための主翼が2枚以上ある飛行機を言います。

こんな単語知らなかった…またまた勉強になりました。

砲弾跡がリアルなトーチカは、中に入ることができ、

戦場の景色を見ることができます。

ちょうど、勉強していた西洋史にまつわる展示がたくさんあったのに加え、思いがけずに置いてあった親切な日本語ガイドのおかげで本当に有意義な滞在になり、ますます西洋史にのめりこむきっかけになりました。

こうして書いてまとめているうちに博物館で感じた高揚感が再燃してしまい、私が博物館で撮ってきた大量の写真を皆さんにも見てもらいたいという思いから、博物館紹介の一つ目なのにこんなに長くなってしまいました。

もう一つ別の記事として分けて紹介するべきかと思ったのですが、最後に訪れた2つの博物館は、今まで巡った博物館で満足してしまったのと、歩き回りすぎて疲れてしまった結果、ただ訪れただけ記念みたいになってしまったので、さらっと紹介しちゃいたいと思います。

英雄広場の前にある博物館なのですが、ちょうど英雄広場前でイベントをしていたこともあり、長蛇の列。

まずは、Papyrusmuseum der Österreichischen Nationalbibliothek

パピルス博物館

パピルスとは、カヤツリグサ科の植物の一種、カミガヤツリ（パピルス草）の地上茎の内部組織から救られる、古代エジプトで使用された文字の筆記媒体のこと。

というのも、信じられないことに家に帰ってきてから調べて知りました（笑）

たしかに古代時代の展示が多かったなぁ、というくらい前情報なしで行って、館内で解説パネルを読む集中力や調べる気力もないくらいに疲れていました。

ラストは、同じ敷地内にある　Haus der Geschichte Österreich

直訳すると、オーストリアの歴史の家となりますが、オーストリアの歴史についての博物館です。

年代ごとに、その年のビッグニュースや情勢がポップに紹介されていて、

コロナが流行したことを表すディスタンスするベンチがあったり、

ウクライナ情勢を表す看板があったり。

ここだけ見ると、オーストリアの歴史というより世界の流れの展示が多いように感じますが、

他の展示エリアでは、きちんとオーストリアの歴史にフォーカスされていました。

解説は全く読んでいないです。ごめんなさい。

館内がとにかく広すぎて、

最後は、出口はどこ？と軽く迷子になりました。

早く帰りたいときに限って、出口が見つからない！！！（笑）

一日で６つの博物館を巡るのは体力的に厳しかったのですが、色々な分野で新しい発見があり、とても楽しかったです。

長くなってしまいましたが、ここまでお付き合いしてくださった皆さま、ありがとうございました！

🌻

博物館巡り【後編】