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| ペット保険などで知られる少額短期保険は、制度発足から5年を経過し、事業者数も70社に膨らんだ。既存の生損保が合従連衡によって大型・集約化を進めているのとは対照的な存在で、事業者の数が年々増えている。日本少額短期保険協会の専務理事である五十嵐正明氏に、業界の現状と展望を聞いた。 |
ペット保険などで知られる少額短期保険は、制度発足から5年を経過し、事業者数も70社に膨らんだ。既存の生損保が合従連衡によって大型・集約化を進めているのとは対照的な存在で、事業者の数が年々増えている。日本少額短期保険協会の専務理事である五十嵐正明氏に、業界の現状と展望を聞いた。
——そもそも「少額短期保険」とは?
2005年5月の保険業法の改正によって制度が導入され、2006年4月1日から施行された少額短期保険制度に基づいて地方財務局に登録している保険事業者の保険を指します。2011年8月現在で70社が登録しています。
そもそも少額短期保険制度ができた背景には、根拠法のない共済の存在がありました。社員共済や組合共済などの「共済」という仕組みは、相互扶助のための自主運営的な保障制度として、私たちの身の回りに数多く存在していました。ところが、事件になった「オレンジ共済」など「共済」の名前をつかって詐欺を働く問題事業者が出てきました。そこで、金融庁など国の監督機関が事業内容をチェックできるようにして一般の方々が安心して加入できる保険にしていこうということから、新たな制度ができました。
一般の生損保や、根拠法のある制度共済(JA共済、COOP共済、県民共済、全労済など)と区分するため、制度上の枠組みでは、年間の収入保険料が50億円以下(以上の場合は免許制の保険会社に移行する)、疾病による重度障害・死亡の保険金は300万円以下、疾病・傷害による入院給付金等は80万円以下、損害保険は1000万円以下などと保険金の上限が設けられています。また、保険期間も損害保険は2年、生命保険・医療保険は1年という上限があります。
——一般に生損保があるのに、少額短期保険の必要性はあるのですか?
もともと任意共済が数多く存在していたのは、やはり既存の生損保ではカバーしていない保険ニーズがあったためです。保険というのは相互扶助ですから、ある地域や団体の人たちが、万が一のリスクに備えて、常日頃からお金を出し合って保険の制度を作るということが昔から行われてきました。たとえば、家財保険というのは、一般の損保商品としてあるのですが、不動産賃貸業者が組合を作って自分たちが管理している物件を対象とした独自の保障制度を作り、少額短期保険に発展したケースがあります。
また、既存の生損保が扱っていない範囲の保険もあります。たとえば、「ペット保険」は、わかりやすい事例です。人間や自動車などと比べてペットにかける保険は高額にはなりませんが、それでも保険のニーズはあります。また、ぜんち共済が扱っているのは知的障害者のための保険です。エクセルエイド少額短期保険は、糖尿病患者のための保険を扱っています。このように、従来は市場が小さくて商品化されていなかった分野や、従来の保険会社で加入しようとすると保険料が割高になったり、加入を断られていたようなケースに応える形で少額短期保険制度を使った保険が作られています。
——保険の加入者数は増えているのですか?
2011年3月末現在で、営業開始していた66社の決算数値をまとめると、保有契約件数は425万件で前年比8.5%増。収入保険料は466億円で12.2%伸びています。少額短期保険の誕生から5年が経過し、業界の認知も広がってきていることがうかがえます。特にペット保険分野の成長が目立っています。ペット保険の契約件数は前年比23.2%伸び、収入保険料は29.9%の伸びとなっています。
少額短期保険会社数は、8月時点では70社になっています。2007年度と2008年度に30社程度の新規登録があって業界が大きくなったのですが、その後も毎年数社の新規参入が続き登録社数が増えています。また、保険の募集を行う代理店数は2万5552店となり、募集人資格取得者数は9万4842人になりました。
——業界の全体像はどうなっているのですか?
「家財・賠償」の保険を取り扱う事業者が最も多く、契約件数で業界シェア88.6%、収入保険料のシェアが73.1%を占めます。次に「生保・医療」で、契約件数の6.2%、収入保険料の15.8%を占め、「ペット」は契約件数の4%、収入保険料の10.5%を占めています。
——「家財」「医療」などは、既存の保険会社も扱っていますが、少額短期保険は何か特徴があるのですか?
保険種目では、既存の保険会社の取り扱い分野と重なる部分もありますが、補償内容等は、70事業者のそれぞれに個性があり、少額短期保険ならではの特徴が生かされています。共通するのは、シンプルで分かりやすい商品内容です。手軽な掛け金で加入できることも特徴のひとつだと思います。一方で、各社とも、お客様のニーズを商品内容に反映していますので、同じ家財保障でも、医療保障でも、それぞれ特徴がありどれひとつとして同じ商品はありません。
——保険会社の健全性など会社経営の情報開示は?
情報開示については従来の保険会社と同等レベルの情報開示が求められています。保険金の支払い余力を示すソルベンシーマージン比率や、決算内容、財務の状況など、各社でホームページに開示したり、ディスクロージャー誌等で誰でも確認できるようにしています。また、決算については、2011年3月期において66社中で半数以上の会社が黒字化を達成しています。2010年3月期には全体の3分の2が赤字だったことと比較すると、経営の安定化と財務基盤の確立が進展しています。
——少額短期保険は、どこで販売されているのですか?
任意共済の当時は、いわゆる互助会など会員制で限定的に募集するケースが多かったのですが、新しい保険業法の下では、広く一般に保険募集をすることが一般的になりました。保険の代理店やインターネットなどで販売されています。また、銀行や信用金庫でもペット保険を扱うようになって、間口が広がっています。
——今後の展望は?
現在、協会としては2つの点で規制緩和要望を出しています。ひとつは、保険金の上限の引き上げです。たとえば、死亡保険金の上限は300万円ですが、簡易保険や告知のみで加入できる生命保険とのバランスも踏まえて、上限額を1000万円に引き上げてほしいと要望しています。また、1契約における被保険者を100人以下にするという規制があるのですが、これも会社が契約者になって従業員を被保険者にする場合、企業規模が大きくなったときに既存の保険を解約しなければならないというデメリットがあり、規制の撤廃を求めています。一般消費者の目線で不都合が感じられる規制はなくしてもらうことで、業界の発展につながると思っています。
制度が発足して5年が経過したことで、業界の進むべき方向ははっきりしてきていると思います。保険のニーズは、人それぞれですので、たとえば大手の生損保のように様々な保険を揃えて、コンサルティングを通じて最適な保険をプランニングしてもらうことで安心を感じられるお客さまもいれば、死亡時にいくら、入院時にいくらとシンプルな保障を求めて、コンビニで買い物するように手軽に保険契約を望まれるお客さまもいます。業界の成長は、コンビニ感覚の手軽な保険へのニーズが高いことを示しています。
また、生損保会社が手がけて来なかったペット保険など独自の保険ニーズに柔軟に対応していくことも重要です。小さな組織で運営しているので、小さな保険ニーズにも柔軟に対応できるメリットがあります。少額短期保険は、ニッチで身近な保険を提供するユニークな存在として一層の成長が期待できると思います。(聞き手・編集担当:徳永浩)
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