山の上ホテルは、有名な作家さんが「缶詰」になって作品を執筆するやどでもありました。
三島由紀夫もその一人で、ホテルに次のような言葉を寄せています。

 



『東京の眞中にかういう静かな夜があるとは思わなかった。設備も清潔を極め、サービスもまだ素人っぽい処が実にいい。ねがわくは、ここが有名になりすぎたり、はやりすぎたりしませんやうに。三島由紀夫』

 

 

 



1967年11月に刊行された「不道徳教育講座」。1970年に三島由紀夫は45歳で亡くなったので、その3年前ということになります。そこに「文弱柔弱を旨とすべし」というのがあります。
少し長いですが、引用します。

「くにゃくにゃ、じゃらじゃら、軟体動物的な青年で日本中が埋まったら、再軍備はおろか、ファッショ化や共産革命の心配も全くありません。
次にいけないのは貧乏です。貧乏は人間をたえず緊張させ、たえず向上の意欲に燃え立たせ、闘争心をあおり、奮起させます。青年柔弱化のために、なるだけ金をフンダンに持たせる必要があります。…
それから青少年はおしゃれに憂き身をやつし、お化粧に熱中すべきです…
私はそのころ(戦争中)、本当にヒョロヒョロで、青白くて、ナンパ小説を書いていて、文弱と言われても仕方がなかったが、…「今に見ろ、文弱の時代が来るから」と心の中で呟きました。」

だけど、文弱国家になんてならなそうな感じだったので、見切りをつけて、ボディビルとか始めたんですって、三島さん。

ほんとは、生き続けたかったろうなと思うのです。
三島由紀夫の著書は、金閣寺と仮面の告白とこの不道徳教育講座しか読んでないんですけど、まあ自分がニートみたいなときに不道徳教育講座に出会ったのもあり、人間を励ます考え方というのは、こういうものなのではないか、と思っています。