※これは、私と一緒に暮らし始めたミーコとその子供たちとの2003年(2000年は誤りでした)から2003年当時について綴ったエッセイです。今回が最終回となります。
2017年にキキ、2018年にミーコ、2020年にモモとサクラをそれぞれ見送りました。この子達を巡り合えたのは私にとって奇跡的で、一緒に暮らした日々は大きな安らぎに包まれていました。幸せな日々を与えてくれたこの子達に心から感謝しています
出会いが有れば、別れが有る。ミーコが貰われてきて子猫達が育ったこの家と、お別れの時が来た。引越してきた最初の年はほとんど花をつけなかったツツジがぽつぽつ花をつけ始めた頃だった。
大屋さんの都合で更新せずに退去することになった。私としても猫家族がのびのびと暮らせるペット飼育可能の家に引越すことに異存はなかった。
ただ、親しんだ御近所さんとお別れするのはなんとも寂しい。朝夕に響く通学の子供らの声。散歩の度に家の子猫達を見に来てくれる近所の犬のお友達。ミーコを家族のように可愛がって下さった御近所の方々。別れを考えるだけで、私の心はふさいだ。
子猫達が安心して遊べる環境は新しい家には無い。家の中では勝手きままに出来るけど、今の場所より住宅が密集していて、車の量も多いから、もう外歩きに出すことは出来ないのだ。
猫家族共々幸せな時を刻ませてもらった一年余り、この土地と家に感謝して、私なりの最後の手入れをさせてもらった。子猫が破いた雪見障子を張り替え、襖の引っ掻きキズには和紙を張った。各部屋の掃除も、業者が入るから適当でいいと仲介業者に言われたものの、手を抜かずに精一杯やった。大屋さんに、「綺麗に住んでくれて有難う」と御礼を言われ、恐縮するばかりだった。
最後の最後まで良い思い出を戴いて、私は猫家族を引き連れて新しい我家へと引越したのである。
真夏の或る日、遅れに遅れた私の転居届けに、懐かしいNさんが俳句を送って下さった。
・ 引越してゆく猫来たる 夏の朝
・ 引っ越しに飛燕しきりの一日かな
・ 別れの手振らる車や夏燕
・ 御向かひの引っ越しあとの五月闇
・ 朝夕に見ゆつつじ燃ゆ転居あと
ミーコが出入りするたびに吠えていた玄関横の犬のコロは、今もまだその耳をピクリとさせて気配を探りながらミーコの訪問を待っているかも知れない。