画我画要塞-がががようさい-

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クローン少女は電気羊の夢を見るか?ー2話





《帰宅》



少女の瞳はビー玉のように透き通って
逆さまに映る向こう側の景色さえも見えそうな気がした。
よく手入れのきいた植木で囲まれた透明なフィルムで覆われた自宅の
駐車場に車を停め、フィルム内で外の空気を吸った。


環境汚染や疫病で蔓延した街の空気を直接吸おうとする者は
もうこの時代にはいなかった。
こうなることをわかってはいたが、止められる者がいなかったのだ。

今やお金を持っていない者は野生動物と一緒で、物の価値が暴騰し、
水1コップ分を手に入れるにも
1週間働いても手に入れ辛い物になってしまった。
負傷者や免疫力のない者が医者にかかっても
お金の問題で断念するようなこの時代に
若く、張りのある肌を持つ少女を手に入れることなどは
ほとんど皆無に等しかった。
それは人間の肌が周りの環境を受け入れつつも拒絶反応を起こし、
清潔を保つのが難しくなったからだ。

彼女を見た時、人間離れした少女だと思ったが、
思えばこれが本来の人間の姿なのだ。
触りたくなるような肌。
拒絶もしない。
自分が信じていたような過去の人間。
正にその通りであった。

車のドアを開き、彼女を抱きかかえる。
少女の体は軽く、普段ジムも通わない自分でも
抱きかかえる事が可能だった。
彼女の呼吸も、体の反応も一切乱れる事なかった。


玄関で網膜認証し、扉が開く。
中に入ると、いつものように壁一面の水槽。
自給自足生活のためのサンルーム。
キングサイズのソファベッドの前にはテーブルと大型スクリーン。

帰って来てすぐ消毒ができるようにクリーンゾーンを通らないといけない。
外の空気を新鮮な空気にして家の中に排出する清浄器。
自宅は工場よりも清潔にしている。
汚い物がこの世で何よりも嫌いだからだ。

彼女はそれらを食い入る様に見ていた。
外にいるよりも安全清潔な自宅にいさえすれば何の心配もない。
そもそも網膜認証で通らない。
少女をずっと僕の元に置いておける環境がついにやってきた。

これでもう困る事はない。
今の人間の不潔さを忌み嫌い、
人と接触することを極力避けていた人間が、
少女を、生身の人間を抱きかかえるの何て夢のまた夢であった。


一連のクリーンが終わり、
彼女を一旦ソファベッドに寝かせる。
全てを受け入れてくれているような
髪の艶、眼光、肌、生み出される光の反射を、
その全景を
ぼんやりと見た。
明るい未来の光。
朝陽のような清々しく気持ちのよい光。
自分の体がその反射された光で
焦げてしまいそうな程、熱を持った。

自分の四肢がこれまでにない、
浮いたような感覚に襲われ、
プログラムされたかのように無駄のない動きで
順番にボタンを外す。

彼女がそれを、
変哲もない表情で凝視する。

自分の鼓動と呼吸音だけが聞こえる。

それらに急かされる様に、
自分も目の前にいる少女の輝く姿と
早く同じようになりたいと
プログラムの言う事を無視する。

彼女は自分の一挙手一頭足ごとに
ストロボのような瞬きをする。

上半身が少女の体の光に照らされ、火照る。
腰の前に手をかけ、ベルトを緩める。
手の制御はもはや不能であった。
前のめりになりつつ、素早く、体に着いているものをほどす。

彼女から小さな二つの光が消え、
そこから現れる雫が僕を写しだす。

それに気がつかずに、懸命に、
自分のなかのオーバーヒートした全身を
さらけだし、少女を覆った。

顔と顔とが近づいて、初めて雫に気がついた。

少女は阿鼻叫喚の表情を浮かべ、
先ほどまで何も抵抗のなかった白のキャンバスに、
黒いインクが一滴落とされ、にじんだようだった。

 「あくまで試作品だからな」
あいつの言葉を思い出す。
嘘ではないようだ。
一度伸びきったゴムはもう元には戻らない。
そんな無抵抗のゴムが己の過去を思い出した。

彼女の顔に映る自分が、
無表情で、素っ気なく、味気なく、正気に戻っていた。

少女の扱いは難しいんだ。
人間に取扱説明書は付いてないんだ。
そのままの体勢で彼女の様子を伺う。
彼女の叫喚がサイレンになって耳を刺激する。
 「怖いのか」
ふと漏れる。
自分の小さい声では彼女には届かない。
 「初めてだもんな」
彼女の体勢が崩れ、自分に向かって来た。




《帰宅》ー終わり





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