クリスマスという事で、これから先の進行に関するお話しを載せました。
ネタバレ&独白文なので見づらいですが、御理解出来た方のみお進みください。































「ふう、出来た…」

例年より早く初雪が観測された今年、暖かいリビングで私はビーズと格闘していた。
透き通った薄い青色と透明のビーズを使って出来た小さなブレスレットを眺めていると、テーブルにピンクのマグカップが置かれた。

「お疲れ様、今年も上手く出来たね」

私専用のカップに温かいココアを注いでくれた鞘が微笑みながらブレスレットに視線を移した。

「ありがとう。でも毎年作ってたら腕も上がるよ~」

鞘の言葉に苦笑いをしながら窓の外を見る。

「…会えると良いね」

ポツリと言われた言葉に頷き、湯気が出ているカップへ手を伸ばした





私が幼稚園に入ったばかりの頃、多忙な両親は私の誕生日やクリスマス等の行事にも帰って来ることはなく、プレゼントだけを送ってきていた。

小学三年生になった年の12月24日

私は寂しさから一人、近所の公園にあるブランコに座っていた。
溢れる涙が地面に吸い込まれるのを眺めていると、小さい影が現れた。慌てて顔を上げた私は息を飲んだ

「腹、痛いのか?」

心配そうに顔を覗き込む男の子の容姿に目を奪われたから。


赤に近い茶髪、白い肌と同様の唇、吸い込まれそうな程に透き通った青い瞳


「綺麗…」
「は?」

思わず呟いた言葉に怪訝な顔をした男の子は惚けている私の額に手を当てて「熱はないな」と安心したように微笑む。

「え?」

突然、私の手を握って歩き出した男の子に戸惑っていると「俺の家、そこだから」と笑い掛けた


「かーちゃーん、ただい

ボゴッ!!
いってえ!?」

公園から歩いてすぐの小さな教会の扉を開けた男の子の頭に拳骨が落とされた。

「母ちゃんじゃなくて『ママ』でしょ!!てか、表じゃなく裏から入りなさいって……あら、可愛らしいお嬢さんね」

男の子を怒っていたシスターの女性は私に気付き、目線を合わせるように屈む。

「腹空いて泣いてたんだ。母ちゃん、何かない?」

ゴツンという音と共に再び頭を押さえて涙目になる男の子の襟首を掴み、奥へと入るシスター。

「ココアしかないけど、飲める?」

ピンクのマグカップを持ちながら扉から顔を出したシスターの言葉に「はい…」と答えると、男の子と同じように私の冷たい手はシスターの暖かい手に包まれた。



「御迷惑を御掛けしました」

数時間後、綱と鞘のお母さんから事情を聞いた両親が迎えに来た。

恐縮する両親を宥めるシスター。そんな大人達の姿を見ていた私を呼ぶ声がして振り返る

「良かったな、父ちゃんと母ちゃん来てくれて。
お前のこと大好きだから心配して飛んできたんだぜ?お前、いらない子じゃねえよ」

男の子の笑顔と言葉は、冷たかった私の心を暖めてくれた。

ココアを飲みながらシスターと男の子の前で「いらない子だから、お父さん達は帰って来ないんだ」と泣いた。


「あり…がとう…」

恥ずかしさで俯きながらお礼を伝えた私に一つの箱を差し出した男の子は、何も言わずに教会へ入っていった。

「ごめんなさいね、永久ちゃん。あの子、寂しいのよ」
「寂しい…?」

両親と話しを終えたシスターが戻ってきた彼女の言葉に首を傾けると、苦笑いしながら教えてくれた

「永久ちゃんが日本で初めて出来たお友達だから、お別れしちゃうの寂しいのよ」

男の子は冬休みを利用して、母親であるシスターが居る日本に遊びに来た。だが馴染めずに居る彼を不憫に思い、今夜帰国させようとしていたのだと言う。それを聞いて泣きながら抱き着いた私をシスターは優しく抱き締めてくれた。

「永久、何を貰ったの?」

帰り道、手を繋いだ母親が箱を指差しながら聞いてきたので「家に着いたら開ける」と微笑みながら答え、大切に抱き締めた

「「永久!!」」

自宅の玄関を開けると、目を真っ赤にした綱と鞘が飛び付いてきた。しばらく離れようとしなかった二人を宥めて、リビングへ向かった。綱達のお父さんとお母さんにも抱き締められて、初めて7人で夕飯を食べた


「永久…この箱、どうしたんだ?」

クリスマスケーキを食べ終えた綱がテーブルの上に置かれた箱に気付いて聞いた。

「絶対、危ないよ!!」

『早く開けろ』という雰囲気の中、鞘だけは「危ないから開けるな」と言う。

「ちょ、こ
「永久!!早く開けろ!!」

箱を取り上げようとした鞘を羽交い締めにした綱に言われるまま蓋を開けた。

「あ…これ…」
「マグ、カップ?」
「ピンク色で可愛いじゃな~い」

先程教会で使ったピンクのマグカップが、英語が書かれた新聞紙に包まれていた。
カップを取り出そうと箱に手を入れると、横にある封筒と包みに気付いて取り出す。

「あら」
「綺麗ね~」

小さな包みにはピンクと透明なビーズが交互に並んだブレスレットが、封筒には一枚の便箋が入っていた。


『 とわへ


字が分からなかったから平仮名で書きました。

今日俺は自分の家に帰る。もう会えないと思う。
だけど、大人になったら絶対日本に来る。だから、それまで俺の一番の宝物を預かっててほしい。また一緒に遊ぼうな

G.V 』


「宝物…」

綺麗なブレスレットが彼の宝物だと分かった私は、大切にしているジュエリーボックスに゛宝物゛を閉まった。


「いらっしゃい、永久ちゃん」

シスター、彩希さんは毎年来る私を嫌な顔一つせずに迎えてくれる。


「あの子、今年も来られないの…。ごめんなさい…」

申し訳なさそうに謝る彩希さんに首を横に振る。

「そろそろ…帰ります。ココア、ご馳走様でした。
…彼に渡してください。」

椅子から立ち上がり、バックからラッピングした小さな包みを彼女に渡して教会を出た。


あの日から毎年、彼をイメージしたブレスレットを母親である彩希さんを通して渡している。


彼はイブの夜中、教会に来て
クリスマスの朝に国へ帰る。



敢えて会わないのは、彼が言った゛大人゛になっていないから。
きっと彼なりの答えが出せた時、私達は再会できる。

私にとって最高のクリスマスプレゼントが来る日を夢見て、来年もブレスレットを作ります。

















そうでしょ?赤髪の吸血鬼さん














如何でしたか?

実はギファと永久は初対面ではなかったのです。
転校してきた永久は、ギファの腕にあるブレスレットを見て゛彼゛だと分かりました。
しかし、今のまま会うのは彼の思いを無下にすると思い 名乗らず゛同級生゛として振る舞います。

一方、国へ帰ったギファは二年後に起きた内紛によって幼少の記憶を無くしてしまいます。
ですが、毎年母親から受け取るブレスレットを大切に保管し、泉曲高校へ転入した日は一番最初に永久から貰ったブレスレットを手首に付けていました。
彼が永久の笑顔に惹かれたのは゛偶然゛ではなく、心の片隅にあった幼少の頃の゛想い゛だったのです。

綱達の゛普通の高校生゛の姿と共に、゛彼゛と゛ギファ゛への想いで揺れ動く永久の心情を皆様に伝えられたら良いなと思いながら、これからも頑張っていきますので来年も宜しくお願い致します。





みっちゃん:いつもメッセージありがとう。読みにくいかも知れないけれど、みっちゃんのメッセージを励みに来年も頑張るね(^o^)来年は青エクの志摩兄弟、未来日記の西島夫妻、秋雪併せ楽しみにしてるね(*´∀`*)今年もお世話になりました。来年も末永くお付き合いくださいm(__)m