第10話 様々な問題 "後編"
"死後生殖"についてある興味深い記事がありました。オーストラリアの州最高裁判所が"死後生殖" を認め死亡した男性の精子を出産のために使用することを認める判決を下したというものでした。オーストラリアのクイーンズランド州に住む当時、23歳のエイラ・クレスウェルさんは付き合って2年になる彼氏のジョシュア・デイビスさんとの結婚を夢見ていました。自分たちの未来を語り合い愛を深めていた矢先2016年8月23日。彼氏のジョシュアさんが23歳という若さで亡くなってしまったのです。未来を誓い合ったパートナーが突然いなくなってしまった悲しみは想像できないほどだと思います。しかしエイラさんはすぐにある行動を起こしました。それはジョシュアさんが亡くなった直後に裁判所へ向かい彼の遺体からまだ生きているであろう精子を採取する許可を得るということでした。ふたりで家庭を持つことはできませんでしたがせめて愛した人の子どもを産もうとエイラさんは考えたのです。裁判所は亡くなったジョシュアさんの精子の採取・保存を認めその後、亡くなったパートナーの子どもを産む権利を勝ち取ったのです。現地の弁護士会では"これまでに、亡くなった人から精子を採取し、生殖のために使用しても良いと認められたことはなかった"とコメントし"歴史的な判断だ"と評価した一方では"さらなる法的な問題が生じる可能性もある"と指摘しています。まず"子どもは父親の名前を名乗るのか""特定の宗教の元で育つのか""父親は亡くなったジョシュアさんとするのか""祖父母は子どもに面会できるのか"等、他にもたくさんの問題があります。まず単純に、亡くなった人から精子等を取り出して出産することが可能だということに正直驚きました。ただ、この "死後生殖" という言葉自体非常に衝撃的な言葉だと思います。ですが、現実には亡くなった方の身体の細胞は脳死・心臓死いずれにしても亡くなった瞬間に完全に機能が停止するわけではないそうです。48時間以内に精子を取り出すと十分に機能する精子が獲得できそれらを保存できることも分かっているそうです。では今回のエイラさんのケースでも技術的に "死後生殖" は可能だということですが具体的にはどんなケースで行われているかというと"死後生殖" の場合大きく分けて2通りのことをまず想定する必要があるのです。それは"生存中にパートナーが病気やなんらかの理由で精子を残しておきたい"そしてそれを凍結して保存しておいた精子を死後に使うというケースが1つ。それから2番目には"なんらかの突然の事故その他で亡くなった場合ご遺族が希望されてご遺体から精子を採取して体外受精を行う"というこの2つが想定されます。ですが、前編でもお伝えした通り日本では亡くなった方の精子などを使って生殖医療ができません。こういった技術は子どもがなかなかもてない方には本当に可能性を広げる技術だと思う反面亡くなった方の精子や卵子を使って子どもを産むということはなかなか理解が追いついていない部分があると思いました。ただ、善悪はつけにくい問題なのでこういった流れは今後どんどん増えて行くのだろうとも思いました。そこでぼくたちが考えておかなければならないことは"多様な価値観を持っている方々が多様な選択をする"という前提があることと今回のぼくの友人のようにグローバル化が進んだことにより"国境を超えた治療" というのが極めて容易になっていて国内だけで完結する話ではなくなってきています。これらのことをよく踏まえた上で"今後のこと""法律の整備""それぞれの考え方""様々な問題"を見直していく必要があるのではないかと思うのです。