樋口佳知が連載形式で執筆している小説を載せています。
感動を誘う物語もあると思いますのでご期待ください!
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第六章「損傷」 その1
次の日、僕は夏未が寝ている事を確認して外科病棟第二診察室を訪れていた。
「先生」
「ん?あぁ・・・村山君じゃないか。どうしたの」
僕は先生に相談をもちかけた
「実は・・・」
僕は先生に前から考えていた事を話した。
「え~っ?彼女に本当のことを話す?」
先生は驚いていた。
「何か・・・夏未がかわいそうで」
「だからって彼女に本当のことを話すのは残酷すぎる。だめだ・・・絶対に彼女に本当の事を言ってはいけない」
そう言うと思っていた僕は先生に言った。
「先生・・・もしかしたら夏未は自分の病気に薄々感ずいているような気がするんです」
「なんだって?」
「昨日・・・また夏未が記憶を消去しちゃったんです」
「今度は一体何について記憶をなくしちゃったんだ?」
「いや。直接の記憶については何も失っていないんですが・・・」
「じゃあ・・・一体何を・・・」
「感覚ですよ。『痛み』とか『味覚』・・・その他いろいろな感覚を失っているんです」
「何で・・・何でそんな事になってしまったんだ」
「たぶん・・・あの時、階段から落ちたのが原因じゃないかと・・・」
思い当たる原因がそれ以外なかった。
「よしっ。今から河東さんの容態を確認に行こう・・・そこで、この症状に気付いているか診察してみよう」
そう言うと、先生は夏未のいる病室に向かって行った
先生は、夏未がいる病室のドアを開けた。
「河東さん・・・診察の時間ですよ」
「えっ?・・・はい」
「じゃあ・・・まず、頭の傷から診ようか」
そう言うと先生は夏未の頭に巻いている包帯を外し始めた。
「ん~・・・傷も殆どくっついてきたね・・・縫った跡も目立たないし・・・頭の傷は大丈夫みたいだね」
「あ・・・ありがとうございます」
「いえいえ・・・河東さん・・・先生の目を見てごらん」
夏未は先生が言ったように先生の目を見ていた。
「あの・・・何ですか?」
その瞬間、先生は夏未の膝に針を刺した。
もちろん夏未は気付いていない。
「河東さん・・・どこか痛いところは無いですか?」
先生は当たり前のことを聞いていたが・・・
「いえ・・・痛くありません」
感覚が無い夏未にわかるわけが無い。
先生は針を抜いた。
「そうですか・・・じゃあ診察はこれで終わります」
そう言うと先生は部屋を出て行ってしまった。
「夏未・・・僕、トイレに行って来るよ」
「うん」
僕は部屋を出て、すぐに外科病棟第二診察室に向かった。
先生は、夏未のレントゲン写真を見ていた。
「先生・・・どうだったんですか?」
「レントゲン写真を見るからには異常は無いんだけど・・・」
「という事は・・・まさか」
「うん。階段から落ちたときに、頭を強打していると思います・・・その時のショックで脳に損傷を負っているんです」
「それは・・・治らないんですか?」
先生はレントゲン写真を見たきり黙りこんでしまった。
「まさか・・・」
「いや。手術をして治らないわけでは無いですが・・・」
「何ですか?」
「もし、治らなかったら最悪の場合・・・更に障害が残るという可能性も」
「そんな・・・」
「全ては河東さんの判断しだいです」
僕からすれば夏未には手術を受けて欲しい・・・でも、もし失敗したら・・・。
「どうしますか?」
「夏未の判断に任せます」
「私から河東さんに話をしましょうか?」
「・・・お願いします」
「では、河東さんのご両親も呼びましょう。村山君は1時間後に3階の相談室まで河東さんを連れてきてください」
「わかりました」
第五章「悪化」 その2
「よしっ。今日は学校も休んだし、久しぶりに外に出るか?」
「えっ?学校・・・休んだの・・・大丈夫なの?」
「夏未が心配で学校になんて行ってられないから・・・」
「雄介君・・ありがとう。じゃあ行こうか」
僕は夏未を車いすに乗せて、病院の中庭に出た。
「雄介君・・・風が気持ちいいね」
「あぁ・・・そうだな」
運のいいことに中庭には僕たち以外、誰もいなかった。
「周りは誰もいないから静かに散歩できるな」
「そうだね」
夏未は久しぶりの外に満足しているようだった。
考えたら、入院を始めてから今日まで夏未はずっと病室で過ごしていた。いつも、病室の窓から外の風景を見ているだけだった。
「私・・・久しぶりに外の風に触れられて・・・嬉しかった」
「えっ?何を言ってるんだ?」
「病院に運ばれたときには『もう、風を感じる事はできないのかな』って思っちゃったんだ」
「えっ?」
「倒れた日・・・私・・・気分が良くなかったの。その時は何とも思ってなかったけど、雄介君と走って学校に行っている途中・・・自分の足が遅くなっている事に気がついた。今まで雄介君の足について行っていたのに。しかも、体育のマラソンだって自分が何でこんなに疲れてるんだろうって思った」
夏未は自分の身体の異変に気付いていたのか
「夏未は・・・自分の身体が異変を起している事に気付いていたのか?」
「・・・うん」
やっぱり・・・。まさか、記憶障害の事まで知っているのだろうか?
「夏未・・・それ以外に気づいた事は無いよな?」
「うん」
よかった。夏未が自分の病気を知れば・・・きっと、自分を見失ってしまうだろう。
「そうか・・・それならいいんだ」
僕はそれ以上の事を話すのをやめた。本人には知ってもらいたくないから・・・。
「そろそろ部屋に戻るか」
「うん」
僕が車いすを方向転換させようとしたその時・・・
「うわっ」
「きゃっ」
誤って車いすを傾けすぎてしまい、夏未は車いすから落ちた。
「ごめん夏未。大丈夫か?」
「うん。大丈夫・・・痛くないから」
「痛くないって・・・肘から血が出てるじゃないか」
僕は偶然持っていたティッシュを夏未の肘に当てた。
「痛くないのか?」
「うん・・・全然」
僕は夏未が言った事が不思議で仕方が無かった。
僕たちは病室に戻った。
「夏未・・・何か飲むか?僕、自販機に行って来るから」
「うん。じゃあオレンジジュース頼んでいい?」
「あぁ・・・わかった」
僕はジュースを買いに自動販売機に向かった。
「ん~・・・オレンジジュースは・・・あった」
僕はオレンジジュースを二本買い、夏未のいる病室に戻った。
「はい夏未・・・オレンジジュースだったよな?」
「うん。ありがとう雄介君」
僕は夏未にオレンジジュースを手渡した。
まず、夏未が缶を開けて飲み始めた。
「おいしい・・・少し甘いかな」
「へぇ・・・じゃあ僕も」
僕もジュースの缶を開けて飲み始めた。
「うわっ・・・すっぱい」
オレンジジュースは少しすっぱかった。
「おい夏未・・・すっぱいじゃないか」
「えっ」
ん?夏未の様子がおかしい。
「どうした夏未・・・何かあったか?」
「えっ?いや・・・なんでもないよ」
夏未の行動がおかしい事に気付いた僕はその夜、夏未を連れて病院内を歩き回った
「どうしたの?雄介君」
「いや・・・たまには二人で病院内を歩くのもいいだろ?」
僕は待合室で止まった。
「夏未・・・飲み物買ってくるからここで待ってて」
「えっ?う・・・うん」
そういうと僕は飲み物を買いに行った。
「ほらっ。夏未・・・コーヒーでいいよな?」
「ありがとう」
夏未は僕が渡したコーヒーを飲んだ。
「うん。冷たくて甘いね」
夏未は僕が渡したコーヒーを飲んでそう言った。
「そうか・・・冷たいのか」
「えっ?」
「夏未・・・それ本当に冷たいのか?」
「何を言っているの?冷たいよ」
「それ・・・ホットコーヒーなんだ」
バシャッ
夏未は紙コップを落とした。
僕は確信した。
「やっぱり」
「なに?」
「夏未・・・何も感じなくなってるじゃないか」
僕はあの時、階段から落ちたショックだとすぐにわかった。
「えっ?どういう事?」
「今日の昼も車いすから落ちたのに・・・肘から血も出てたのに・・・痛がらなかっただろ?」
「・・・・・・」
「それって・・・その時には『痛み』や『味覚』といった感覚が無かったからだろ?」
「違うよ・・・ちょっと冗談で・・・ふざけただけだよ」
彼女が嘘をついているのはすぐにわかった。
僕は夏未の腕を握り、思いっきり握り締めた。
「・・・・・・」
「どうした・・・痛くなかったのか?」
「えっ?」
僕は夏未の腕を夏未に見せた。
「ほらっ。こんなに腕が真っ赤になってる・・・僕が思いっきり腕を握ったのに痛がらなかったろ?」
「あっ・・・」
「これが証拠さ。夏未・・・もう嘘をつくのはやめてよ」
夏未は下を向いたまま、待合室のイスに座った。
「・・めんね」
「えっ?」
「ごめんね。嘘をついて」
「夏未・・・」
「本当はわかってたよ。『味』とか『痛み』の感覚が無くなってた事・・・」
「いつから?」
「最初の車いすの時から・・・知らないうちに『痛い』という事を思わなくなっちゃった。その後のオレンジジュースも・・・私が飲んだ時には、もう味がしなくて・・・だから『甘い』と嘘をついた」
「何で・・・なんで早く言わなかったんだよ」
「だって・・・雄介君に迷惑かけたくなかったもん。今もこうして入院生活だけで雄介君には迷惑をかけてるのに・・・」
「そんな事無いよ。僕は夏未に迷惑をかけられた事もないし、そんな風に思ったことも無いよ」
「でも、やっぱり打ち明けられなかったもん。それは、私が心の底から雄介君を愛していたから・・・だから、心配をかけたくなかったし、迷惑もかけたくなかった」
夏未の考えている事を考えた僕は、目頭が熱くなって来た。
「バカだ。バカだよ夏未は・・・」
僕は夏未に抱きついた。
「ごめんね雄介君・・・私、感覚無いけど・・・涙は出るみたい」
そう言うと、夏未は瞳から涙を流した。
僕も自分の瞳から大粒の涙が流れている事がわかった。
「何でだろう・・・瞳から雨が降ってるよ」
僕はおかしな事を言いながら夏未を抱きしめたまま泣いていた。
第五章「悪化」 その1
「誰か来て下さい。大変なんです」
大声で助けを求めたが、まだ六時も来てない・・・誰もいるはずがない。
「夏未・・・しっかりするんだ」
僕は夏未を抱えあげた。
「夏未・・・頑張れよ。すぐに僕が助けてやるからな」
僕は夏未を抱え上げたまま三階にあるナースステーションに向かった。
ナースステーションに着いた僕は看護士の人に言った。
「階段から落ちたんです。すぐに治療してください」
「大丈夫ですか?すぐに先生を呼びますね」
さすが看護士・・・対応が早い。
わずか三分程で先生も来てくれた。
「どうしたの?頭から血が出てるじゃないか」
「階段で足を踏み外して・・・そのまま」
「とにかく今は治療が最優先だ」
そう言うと先生は看護士を指差してこう言った。
「おいっ・・・念のためレントゲンを撮っておいて。彼女の場合はショックを与えるのも病状悪化につながるかもしれない」
「はい。すぐに用意します」
「じゃあ村山君は僕についてきて」
「えっ?何で・・」<
「彼女のそばにいてあげて欲しいんだ」
「わかりました」
僕は先生の後をついていった。
幸いにも傷は浅いみたいだった。
「先生・・・夏未は何ともないんですか?」
「あぁ。レントゲンも異常は見られない」
「そうですか・・・」
僕は正直ホッとした。
「ただ・・・」
「えっ?」
「彼女の今までの病状を考えると安心はできないので、一応・・・注意はして置いてください」
「わかりました」
(やっぱり安心はできないのか)僕は思った。
僕はすぐに夏未のいる病室に戻った。
夏未はぐっすり眠っている。
その頭には包帯が巻きつけられている。
「夏未・・・ごめんな。守ってやれなくて」
僕は自分の瞳から大粒の涙が流れている事に気付かなかった。
どれくらいの時間が経っただろう。
時計を見ると時間は六時四十五分を指していた。
「今日は学校休むか」
夏未のことを考えていると学校なんて行きたいとは思わなかった。
僕は学校に電話をかけるため、公衆電話まで行く事にした。
「夏未・・・すぐに戻るから待っててくれよ」
眠っている夏未にそう言うと僕は部屋を出た。
「はい。ですから今日は学校休ませてください」
『風邪で熱が三十九度出たから休ませてください』なんて明らかにバレそうな嘘だよな。
「よし。電話も終わったし、夏未の部屋に戻るか」
僕が部屋に戻ると夏未は既に起きていた。
「あっ。おはよう雄介君・・・私・・・雄介君に酷い事言ったよね?」
「もういいって。気にするなよ」
僕はさっきの夏未の言動を許す事にした。
きっと入院が続いて心配になったんだろう・・・。
「河東さん。お食事の時間ですよ」
そこに看護士が朝食を持ってやってきた。
「さっきの事故があるから急遽、お粥に変えたからね」
「はい。ごめんなさい・・・迷惑かけて」
「それと・・・村山さんも朝ご飯はお粥で我慢してくださいね」
「は・・・はい」
『僕は病人じゃないのに~』僕は心で叫んだ。
でも、これしか朝ご飯無いし・・・我慢するか
僕はお粥をスプーンに取り、口に入れた。
「熱っ!」
お粥はものすごく熱かった。
「おい夏未・・・お粥が熱いから気をつけて食べろよ」
「えっ?もう食べちゃったけど・・・」
えっ?いくらなんでも早すぎるだろう。
「別にお粥は熱くなかったけど・・・」
えっ?夏未のお粥は冷たくしてあるのか?
僕はそう思い、夏未の食器を持った。
おかしい・・・夏未の食器はかなり熱い。
なのに、夏未は平気で食べていた。
「夏未は熱さに強いのか」
「ん~・・別に強くは無いけど」
まぁ、夏未が熱くないって言ってたんだし・・・大丈夫か。
僕はそんな風に考えていた。
第四章「思い出」 その2
ガタッ
変な物音で僕は目が覚めた。
僕は瞳を開けた。
すると、僕から見て左側に夏未が立っていた。
「夏未?」
僕が名前を呼んだ瞬間、夏未はパジャマのボタンを外し始めた。
「ちょっ・・・夏未」
夏未は手を止めようとしない。
夏未は僕の言っている事が聞こえてないようだ
「雄介君・・・私を愛して」
「えっ?」
「私と二人っきりの夜を過ごそう」
僕はとっさにベッドから飛び起き、夏未と距離をとった。
「夏未・・・どうしたんだよ。いつもの夏未らしくないよ」
「・・・・・・・」
「何があったんだよ・・・教えてくれよ」
「・・・・・・・」
「おい!何とか言えよ夏未」
「怖いんだもん」
「えっ?」
「雄介君は・・・『私は絶対に良くなる』って言ってくれたけど、やっぱり不安なの。雄介君が私を励ましてくれるのは嬉しいんだけど・・・やっぱり病人と看病する人とは考え方が違うから」
「夏未・・・そんなヤケにならなくても・・・確かに僕は病人じゃない。でも、夏未の気持ちは痛いほどよくわかってる。周りの人間にはわかってもらえなくても、夏未にはわかってもらいたい」
なんか言い訳みたいだったけど、僕の気持ちに嘘はない
「ご・・・ごめん。雄介君の気持ちを考えてなかった」
彼女はわかってくれたようだ。
「じゃあ・・・寝ようか」
「うん。おやすみ雄介君」
僕たちは再び床に着いた。
翌日・・・
僕はいつもより早く目が覚めた。
時計を見ると、午前五時四十五分・・・。
「早く起きすぎたなぁ・・・夏未もまだ寝てるよな?」
僕はそう言いながら夏未の寝ているベッドに向かった。
夏未はいなかった。
僕は驚き、病院を探し回った。
自動販売機コーナー・待合室・・・どこを探してもいない。
僕は最後に屋上に行ってみた。
奥に進むと、人影が見えた。
夏未だ!
「夏未!!」
僕は大声で夏未を呼んだ。
すると、夏未は僕のほうへ振り返った。
「雄介君・・・おはよう」
夏未は元気な声で言った
「あぁ。おはよう」
「ここから観る景色・・・キレイだね」
「あぁ」
「こんな景色を観たの・・・生まれて初めてだよ」
「えっ?」
「なに?どうしたの雄介君」
「初めてって・・・どういう事だよ」
「どういう事って言われても初めて観たんだもん」
「いや・・初めてじゃないだろう」
僕は取り乱した。
なぜなら、この景色を見る場所は違うが・・・僕たちが初めて出会ったのは、この景色が観える高台だったからだ。
「まさか」
夏未は新たな記憶を消去してしまったのだろうか?
僕は夏未の肩を掴み叫んだ。
「嘘はやめろよ。おまえはこの景色に見覚えがあるはずだ」
「雄介君・・・痛いよ」
夏未は涙を流しながら言った。
「あっ。ごめん」
夏未は僕の豹変振りに少し驚いているようだった。
「だって、本当にわからないんだもん」
「・・・・・・」
「何でだろう・・・雄介君は見覚えあるのに、私だけが覚えてないなんて」
ヤバイ。何とかごまかさないと夏未の病気について知られてしまう。
何とか・・・何とかごまかさないと。
「別に・・・忘れているだけかもしれないだろ?オレが悪かったよ」
突然、夏未が僕の頬を平手で打った。
「な・・何をするんだよ」
「また、そんなわかった言い方をする・・・それって、私から見ると迷惑なの」
夏未が何を言っているのかわからなかった。
「どうしたんだよ夏未。別にわかった様な言い方してないじゃん・・・」
「ほら。そうやって否定するでしょ?やっぱり雄介君・・・何かを隠してる」
「いや。何も隠してない」
僕は嘘をついた。
「だから嘘をつくのやめて」
そう言うと夏未は走り去ってしまった。
「待って。待ってよ夏未」
僕は夏未の後を追いかけた。
夏未は屋上の入り口から病院内に入り、階段に差し掛かった。
夏未が後ろに振り返ったとき、夏未はバランスを崩した。
僕は手を差し伸べたけど、間に合わなかった。
夏未は階段を頭から落ちていった
「夏未!」
僕は急いで階段を駆け下りた。
「おい。夏未・・・しっかりしろ」
夏未は階段の一番下で倒れていた。
「誰か・・・誰かいませんか?」
僕は大声で助けを求めたが、その声は誰にも届いていないようだった。
第四章「思い出」
「夏未・・・本当に覚えてないのか?」
「覚えてないのか?って言われても・・・分らないんだもん」
やっぱり・・・夏未の病状は少しずつ悪化してる。
「雄介君・・・やっぱり私は病気なのかな?」
「な・・・何を言ってるんだよ」
「毎日ね・・・決まった夢を見るの」
「夢?」
「うん。私の全てが消えていってしまう夢・・・」
僕は一瞬ドキッとした。
「何を言ってるんだよ」
「その夢を見るたびに怖くなるの。いつの日か・・・ママやパパ・・・雄介君とも会えなくなるんじゃないかなって考えると・・・」
僕は彼女を抱きしめた。
「・・・雄介君?」
「そんな事ない。会えなくなる事なんてない・・・僕と夏未はずっと一緒だ」
「うん。ごめんね変な事言って・・・」
僕は嫌な予感がした。
「雄介君・・・今日も帰るの?」
「んっ?当たり前だろう・・・」
「そう・・・」
夏未の様子がおかしい。
「どうしたんだよ」
「いや・・・別に何でも」
まさかと思うが一応聞いてみた。
「泊まって・・・欲しいのか?」
「・・・・・うん」
いきなり無茶な話をする。
「でも、ここは個室だろ?僕の寝る所がないから」
夏未はベッドから降りた。
「おい夏未・・・どこ行くんだよ」
「ちょっと待ってて」
そう言うと夏未は部屋を出て行った。
「夏未・・・どこに行ったんだろう」
5分ほどして夏未が看護士の人と一緒に戻ってきた。
「雄介君・・・行こう」
「『行こう』ってどこに?」
「先生が・・・雄介君のベッドも用意してくれるって」
何だよそれ・・・
「あぁ・・・行こうか」
僕たちは個室を出た。
「夏未は先に行ってて」
夏未が離れていった事を確認すると僕は看護士さんを呼び出した。
「看護士さん・・・なんで夏未のわがままを聞いたんですか?」
すると、看護士は暗い表情で答えた。
「だって・・・『いつ完全に記憶を無くすか分らないから、今のうちに思い出を残させてあげよう』って先生が言うから・・・」
「あっ・・・そうか」
確かにそれは正しい判断だった。
夏未はいつ完全に記憶を無くすのかわからない・・・なら、せめて記憶が残っている間だけ楽しい事・思い出に残る事をさせてあげたい・・・僕も病院の先生も同じ考えだった。
「初めてだね。雄介君とお泊りするの」
「そうだね」
「なんか別の意味でのお泊り会だから面白いね」
「別の意味?」
「うん。雄介君や私のうちじゃなくて病院でお泊りなんて・・・なかなかできないよ」
なかなかって・・・普通できないよ
『君の病状を考えて特別に許可が下りたんだよ』
そんな事・・・口が裂けてもいえない。
「そろそろ消灯時間だ。寝ようぜ」
「うん。おやすみ雄介君」
僕たちは消灯時間前に床に着いた。
第三章「原因不明の病」 その2
「残念ながら確実に治る治療法はありません」
「そんな・・・」
僕は何も信じられなかった。
「ただ・・・」
「えっ?」
「症状は良くならなくても、彼女の前で精一杯の事をすれば彼女の記憶は消えてもみんなの優しさは一生心に残ると思いますよ」
医師の言葉に僕は元気を取り戻した。
「でも、どうやれば・・・」
「何でもいいんです。彼女にとって良い事ができればそれでいいんじゃないですか?」
「彼女にとって良い事?」
「君は夏未さんの彼氏でしょ?彼氏に優しくしてもらって嬉しくない彼女はいませんよ」
医師の言っている事は一つもはずれてはいなかった。
「わかりました。僕ができる事があれば何でもします」
僕は彼女のために全てを尽くす事を決めた。
先生の話が終わった僕は急いで病室に戻った。
「夏未」
「なに?雄介君」
僕は夏未に病状について話そうと思った。
「先生から・・・夏未の容態について聞いてきたんだ」
「・・・・どうだった?」
「・・・・・・・・・・」
「雄介君?」
「何ともないって・・・。必ず元気になれるって」
僕は初めて夏未に嘘をついてしまった・・・やっぱり本当のことは言えない。
「そうか・・・なら安心した。退院できたら雄介君ともっと遊べるもんね」
夏未は笑顔で言った。
こんな夏未を見て・・・本当の事なんて言えない。
「じゃあ・・・今日は帰るよ」
「うん。雄介君・・・昨日はありがとうね」
「いや別にいいんだよ」
僕は彼女の部屋を後にした。
その夜・・・僕は夏未の事が心配でたまらなかった。
「記憶を消去する病・・・理解できない。何で・・・夏未がこんな目にあわなきゃならないんだ」
僕はつい、自分の部屋で叫んでしまった。
夏未の事を考えるとやっぱり何も集中できなかった。
――――翌日――――
「ねぇ・・・村山君」
「なに?」
話し掛けてきたのは、夏未の親友 まどか だった。
「あのね・・・聞きたいことがあるんだけど」
「えっ?聞きたいことってなに?」
「夏未ちゃん・・・具合どうなの?」
「えっ?夏未に・・・会ってないの?」
「・・・うん」
「何で・・・親友なら会ってあげないと・・」
「私だって会いたいけど・・・夏未ちゃんが会うのを拒んでるみたいで」
僕は彼女の言ったことが信じられなかった。
「何それ・・・どういう事?」
「この間・・・夏未ちゃんのお見舞いに行ったときに、看護士さんに夏未ちゃんの部屋を聞いたら夏未ちゃんから伝言があるって言ってて・・・」
「で・・・何ていわれたの?」
「『私は雄介君以外の人には会いたくない』って」
彼女がそんな事を・・・
「そんなの嘘だろ・・・夏未はそんなやつじゃない」
・・・待てよ。確か医師は・・・『徐々に記憶が消える』と言っていた。
もし、夏未が学校の友人の記憶を消去していたとしたら・・・
僕は学校が終わってすぐに病院に向かった。
・・・彼女の病状を確認するために。
「夏未」
「あっ・・・雄介君」
僕は早速、夏未に問い詰めた。
「夏未・・・お前の親友の まどか って知ってるか?」
「まどか?・・・そんな人・・・いたかな?」
やっぱり・・・
彼女はまた新たな記憶を消去していた。
第三章「原因不明の病」 その1
『学校・・・?私・・・学校に行っていたかな?』
どういう意味なのか・・・全然理解できない。
「あ~・・・もう全然わからねえよ」
「村山・・・先生もお前の行動が全然わからないよ」
「えっ?」
最悪な事に僕は教室で大声で叫んでしまった・・・授業中に。
「村山・・・二分だけ時間をやる。前の問題を解いてみろ・・・解けなかったら廊下で頭を冷やせ」
何か・・・頭の中は夏未の事でいっぱいだった・・・。問題にも集中できない・・・こんな事なら初めから廊下に出た方がいい。
「・・・すみません。解けないので・・・廊下に立っています」
「あっ・・・あぁ」
僕はクラスメイト達の視線を背中に感じていた。
僕は廊下に出た。
廊下に出た僕は窓から外を眺めていた。
「夏未・・・どうしているかな?」
やっぱり朝の夏未の言葉が気になって仕方が無かった。
放課後・・・僕はすぐに夏未のいる病院に向かった。
「夏未」
部屋に入ると夏未は起き上がり、何かを書いているようだった。
「あっ。雄介君」
夏未は机の上にあった紙を慌てて隠した。
「何を書いてたんだ?」
「・・・秘密」
「何だよ・・・教えてくれてもいいじゃんか」
「いつか・・・わかると思うから」
夏未は隠した物を見せてはくれなかった。
「そういえば・・・身体はもういいのか?」
「うん。先生がもう大丈夫だって。でも、退院はまだ無理みたい」
「えっ?何でだよ」
「それが・・・先生も教えてくれないの。『今はまだ説明できない』って」
「そんな・・・」
「私・・・何か悪い病気なのかな?」
「そんなわけないよ」
「だって・・・明らかに先生の様子がおかしいもん。普通ならはっきり言ってくれるでしょ?『大丈夫。すぐに退院できるよ』って。でも、そんな事言うどころか表情を暗くして、患者の私には何も教えてくれない。こういう時ってやっぱり自分でも不安になっちゃうのよ・・・『私・・・ホントに大丈夫なのかな』って考えたくないのに考えちゃうよ。私は本当に良くなるのかなって考えちゃう」
夏未は何かを思いつめているような顔つきでそう言った。
「大丈夫だよ。夏未は絶対に良くなる・・・僕が保証する」
「・・・やめてよ」
「えっ?」
「患者でもないのに・・・先生でもないのに・・・わかったような口で言わないで」
突然、夏未が僕に向かって大きな声で言った。
「ご・・ごめん。でも、夏未には元気になってもらいたいから」
「だから・・・そんなわかったような言い方しないで」
「ご・・・ごめん」
僕は彼女に謝った。
「雄介君・・・今日は帰ってくれる?」
「えっ?」
「ホントは酷い事を言っているというのはわかってる・・・だから・・・これ以上、雄介君を傷つけたくないから」
「・・・僕がいると邪魔?」
夏未はコクリとうなずいた。
僕は夏未の病室を後にした・・・外に出て、僕はドアの前で立ち止まった。
すると、夏未が声を殺しながら泣いていた。
「グスッ・・・グスッ・・雄介君・・・ごめんね」
(いいよ・・・。夏未の気持ちは痛いほどわかるから)
僕は心の中でそう思った。
病院から出ようとしたその時だった。
「あのっ」
僕は後ろに振り返った。すると、そこには看護士が一人立っていた。
「もしかして・・・村山雄介さんですか?」
「はい。そうですけど・・・何か?」
「河東さんの症状について先生からお話があるんですけど・・・よろしいでしょうか?」
「えっ・・でも、夏未のご両親には・・・」
「それが、ご両親からの希望で村山さんにも一緒に聞いてもらいたいと言われていまして」
僕は迷ったが覚悟を決めた。
「わかりました」
「では、こちらへどうぞ」
僕は外科病棟の第二診察室に通された。そこには既に夏未の両親が待っていた。
僕は夏未の両親に軽く一礼した。
「雄介君・・・ごめんなさいね。昨日は夏未の看病で疲れているのに」
夏未のお母さんが詫びるように言って来た。
「いえ・・・別にいいんですよ」
僕はこう言い返すしかなかった。
しばらくして夏未の担当医師がやって来た。
「お忙しいのにすみません。実は河東夏未さんの病状について説明をしようと思い、今日は集まっていただきました」
「それで・・・夏未はいったい何の病気なんですか?」
僕は真っ先に聞いた。
「じ・・・実は」
「まさか・・・命に関わる病気なんですか?」
医師が暗い表情で答えた。
「彼女は・・・河東夏未さんは・・・原因不明の病に冒されています」
「えっ?」
夏未の両親は凄く驚いているようだった。
「原因不明というか・・・一種の記憶障害かと思われます」
「記憶障害?」
僕も医師の言った事に驚きを隠せなかった。
「わかりやすく説明すると・・・夏未さんの病は日が経つにつれて、それまで残っていた記憶を少しずつ消去されてしまう病なんです。直接の原因はわかりませんが、発症前は著しい運動能力・学習能力の低下が考えられています」
「それって・・・もしかして、いきなり走るのが遅くなるというのも症状の一つなんですか?」
「恐らくそうではないかと」
(夏未の足が遅くなったのは、これが原因だったのか)僕はそう思った。
僕はショックのあまり、そこに座り込んでしまった。
「先生・・・夏未は助からないんですか?」
僕は最後の望みをかけて先生に聞いた。
自分の野望をかなえるために
僕は小説を書いている上で2つの野望を果たそうと考えている。
まず1つは自分の作品を本にして出版する事。
作家を目指すなら・・・まず、必要最低限のことだ!
2つめの野望は自分の作品を映像化させる事。
自分の作品がテレビで放送されるなんて本当に夢のようだ。自分の作品が映像化して、今の恋愛に少しでも変化が起きてくれたら・・・小説を書いている僕からしても凄く嬉しい事です!
僕は正直言ってファンタジーとか非現実的な物語は書きたくない。僕は主に恋愛を中心とした小説を書きたいと思っている。
ファンタジーなんて・・・僕には無理だろう。
僕はやはり・・・恋愛とか感動を誘う小説が似合っているのかもしれませんね・・・。
連載も好調に・・・
小説の連載も順調に進んでます。
このまま最終回まで進んでいくと嬉しいですね・・・これから読者さんも増えて言ってくれると本当に嬉しいです。
今はカップラーメンをすすりながら小説の誤字・脱字が無いか確認中です。
皆さんをアッと驚かせてみようと思います!
siawase-lifeさん>読者登録ありがとうございました。
これからも驚きを隠せない展開が待っていますのでご期待ください!!
