トランプ大統領も認めたCBDの効果
高齢者医療に革命を起こす可能性を提唱、大麻関連株が急騰
「CBDが病気の進行を抑え、高齢者の医療に革命を起こす」——こんな発言で、ドナルド・トランプ元大統領がカンナビジオール(CBD)の医療効果を強力に後押ししました。2025年9月28日、トランプ氏が自身のSNS「Truth Social」で公開した動画は、高齢者医療におけるCBDの可能性を強調し、医療政策と市場に即座な影響を与えています。
トランプ氏が注目するCBDの医療潜在力
トランプ氏のSNS投稿では、CBDが「痛み、炎症、ストレス、認知機能の低下」 といった高齢者が直面する一般的な健康問題に対処する可能性が示唆されました。さらに動画では、CBDがエンドカンナビノイドシステム(ECS)を「修復」することで、身体の自然なバランスを取り戻す効果が期待されると言及。
「CBDは病気の進行を遅らせ、処方薬の代替となり得る」とのトランプ氏の発言は、単なる健康情報の共有を超え、医療政策転換の兆しと受け止められています。トランプ氏は2018年にヘンプ(産業用大麻)を連邦レベルで合法化する「Farm Bill」に署名した経緯もあり、今回の発信はその延長線上にある政策的アピールと見られています。
エンドカンナビノイドシステム:健康の鍵を握る体内システム
トランプ氏の動画で言及されたエンドカンナビノイドシステム(ECS) は、私たちの体に本来備わっている生体調節システムです。1990年代に発見されたこのシステムは、痛み、炎症、免疫調節、ストレス応答、神経機能など、幅広い生命活動を調整する「指揮者」のような役割を果たしています。
しかし、加齢とともにECSの機能は低下し、痛み・炎症・睡眠障害・認知機能低下といった高齢期に典型的な症状が現れやすくなるとされています。従来の医療アプローチでは、こうした症状に対して鎮痛薬や睡眠薬といった依存リスクのある薬剤が処方されてきましたが、CBDはECSをサポートする新たな選択肢として注目されているのです。
市場が熱狂:大麻関連株が急騰
トランプ氏の発言は直ちに市場に反映され、主要な大麻関連株はプレマーケットで20%前後の急上昇を記録しました。
· キャノピー・グロース:一時18%強上昇
· ティルレイ・ブランズ:約42%上昇
· クロノス・グループ:15%強上昇
· オーロラ・カナビス:25%強上昇
この株価の急騰は、トランプ政権が8月に示した大麻の再分類(リスケジュール)方針に続く「追い風」と受け止められています。再分類が実現すれば、連邦税法上の負担軽減や資本市場へのアクセス改善が期待できるため、市場は政策の正式決定を先取りする動きを見せています。
医療費削減効果:年間640億ドルの可能性
トランプ氏が紹介した動画で特に注目されたのは、大麻を医療制度に統合した場合、年間640億ドルの医療費削減が可能だとする試算でした。この数値は世界的コンサルティング会社PwCの分析に基づくもので、アメリカの医療財政にとって大きなインパクトを持つとされています。
「CBDをメディケアでカバーすることは『世紀最大の高齢者医療施策』になる」との訴えは、医療保険財政の改善と高齢者の生活の質向上を結びつける政策的メッセージとして発信されています。
CBDとは何か:基礎知識の整理
CBD(カンナビジオール)は、大麻草に含まれる約100種類以上の「カンナビノイド」の一つで、同じく大麻草に含まれるTHC(テトラヒドロカンナビノール)とは異なり、精神作用(「ハイ」になる効果)はほとんどありません。この特性から、日本を含む多くの国で合法的に利用できる製品が流通しています。
CBDは体内のECSに間接的に作用し、アナンダミドなどの内因性カンナビノイドの濃度を高めるなどの形で機能すると考えられています。直接的にカンナビノイド受容体を刺激するわけではありませんが、様々な経路を通じて心身のバランス調整に関与しているのです。
科学的エビデンスはどこまで進んでいるか
CBDの効果に関する科学的な検証は、てんかん治療の領域で最も進んでいます。欧米ではLennox–Gastaut症候群やDravet症候群などの難治性てんかんに対して、CBD製剤(Epidiolexなど)が正式に承認されています。2025年のドイツの研究では、難治性てんかん患者の38.9%で50%以上の発作減少が確認されました。
一方、不安障害や不眠症に対する効果については、小規模な試験で有望な結果が示唆されているものの、臨床的に明確な効果が証明されるには至っていません。2024年に発表された乳がん患者を対象とした臨床試験では、CBD単回投与後の不安スコア改善が認められたものの、効果の大きさや持続時間についてはさらなる検討が必要とされています。
慢性痛に対するCBDの有効性は、今のところ証拠が弱く一貫していません。2025年のナラティブレビューでは、CBD単独で痛みが軽減したと報告した研究は42%、THCとCBD併用では66%だったと報告されています。
トランプ発言の政治的背景
トランプ氏のCBD支持発信には、高齢者層への政策的アピールという側面があります。「痛み・炎症・認知機能」といったキーワードは高齢者有権者に直結する課題であり、票田への訴求効果が高いと考えられます。
また、この発信は大麻の再スケジュール(規制分類の見直し) をめぐる政治的な駆け引きの一環でもあります。トランプ政権は現在、大麻を規制物質法のスケジュールI(最も厳しい規制)からスケジュールIII(医療利用可能な分類)へ移行させる提案を検討中です。
共和党内には「THCを痕跡レベルでも含む製品を禁止すべき」という強硬な声も存在する中で、トランプ氏がCBDを「高齢者医療の切り札」として前向きに取り上げたことは、産業界への支援姿勢を示す政治的メッセージとも読み取れます。
日本におけるCBDの法的位置づけ
日本では、大麻取締法で「成熟した茎」と「種子」から抽出されたCBD製品は合法的に利用できます。ただし、THCが一切含まれていないことが条件であり、製品を選ぶ際には分析証明書(CoA)でTHCフリーであることを確認することが重要です。
日本の厚生労働省は、THCが検出された製品を違法と判断しているため、信頼できる販売元から、第三者機関による成分分析結果を公開している製品を選ぶことが安全かつ合法的に利用するための必須条件です。
今後の展望と課題
トランプ氏のCBD支持発信が単なる政治的アピールに終わるか、具体的な政策に結びつくかは、今後の動向が注目されます。具体的には、
· 医師教育:ECSやCBDについて医師が体系的に学ぶ仕組みの構築
· 保険補償:メディケアでのCBD補償実現に向けた制度的整備
· 市場の安定化:再スケジュール実現による研究環境と流通の法的安定化
といった課題への取り組みが重要となります。
一方で、「CBDがECSを修復する」という表現はキャッチーですが、科学的に厳密な意味ではまだ裏付けが不十分である点には注意が必要です。CBDの長期的な安全性や有効性については依然として研究段階であり、政策の判断はエビデンスとリスク管理に基づく必要があります。
まとめ
トランプ氏によるCBDの医療効果への言及は、単なる成分の健康効果を超え、高齢者医療政策、市場、研究環境に広範な影響を与える可能性を秘めています。「高齢者医療に革命を起こす」というキャッチーな表現の背景には、医療費削減への期待と政治的意図が交錯しています。
消費者・患者・投資家はいずれも、こうした発信を単純に受け入れるのではなく、科学的エビデンスと法的枠組みを踏まえた上で、CBDの可能性と限界を理解することが重要です。CBDは確かに特定の疾患において有望な成果を示していますが、万能薬ではなく、あくまで医療と健康管理の一要素として捉えるべきでしょう。