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【お知らせ】 大変申し訳ないことですが、今日から入院することになりました。
病院がパソコンの使用禁止で更新ができません。
退院日は未定ですが、退院後に穴埋めをいたします、本当に申し訳ございません。
皆さんも健康にはご留意ください。
この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。
「趨勢(すうせい)」 12
梅吉はさっそく動いた、目指すはヤクの売人東野勇である。
馴染みの店を数軒あたったが姿がない。
パクられた、ふと頭をよぎったがそんな筈は無い、
売人のまとめ役をしているだけでは無い、
大阪でも一二の縄張りをもつ売人の頭や。
奴がパクられたらヤク仲間が騒ぎ立てるはずや。
梅吉は作戦を変えた、色気のない東野に女は考えられない。
そうなると酒しかない、奴は中途半端な飲み屋にはいかない。
そうかといって高級料亭に行くわけでもない。
今にも倒れそうな屋台の常連や、
常連と言えども同じ店に入り浸ったりはしない。
二三十軒の屋台を順番に渡り歩くんや。
何でそんなことをするか、察やマトリの追跡を絶ち払うためや。
毎日店を変えられたら、追いかける方は大変や。
偶然出くわしてもマトリが二人で来たら、
何席も無い屋台や目立ってしょうがない。
勘のエエ東野が気づかんはずがない。
東野にワッパがかけられんのは、
この東野の慎重さと勘の良さにある。
梅吉は以前入ったことが有る屋台を覗いた。
「久しぶりやな」
屋台の主人、喜助が驚いたように声をかけた。
「一年ほど来んかったけど元気そうやないか」
聞きなれた挨拶を交わした。
「なんやかんや貧乏暇なしでな、オヤジも一杯どうや、
そこの関東煮適当に盛ってくれるか」
龍蔵からの軍資金がたっぷり有る、気前よう注文した。
「いやー助かりますわ、
ここんとこ暇で首吊ろうかと考えてましたんや」
「アホなこと言わんとってくれるか、
オヤジを煮込みにしても旨ないしな」
冗談とも本気とも取れるような顔で返した。