親愛なる読者の皆様へ

 

このブログ管理者の親族のものでございます。

先日来より、都内の病院に入院致しておりました当ブログ責任者でございます、トラちゃん文庫  東本京史は、残念ながら、2月23日午前7:47、肺癌(肺扁平上皮癌)の為、他界致しました。

今迄、楽しくお読み頂きました読者の方々には心より感謝申し上げる所存でございます。

これを持ちまして、当ブログは終了とさせて戴きます。

非常に残念ではございますが、出会いがあれば必ずお別れがあると言うことを実感している毎日です。

今迄、お読み戴きましてありがとうございました。

主人である、東本京史に代わり、御礼申し上げます。

 

皆様のこれからのお幸せをお祈り申し上げます。

 

代筆  東本京史親族

【お知らせ】 大変申し訳ないことですが、今日から入院することになりました。

病院がパソコンの使用禁止で更新ができません。

退院日は未定ですが、退院後に穴埋めをいたします、本当に申し訳ございません。

皆さんも健康にはご留意ください。

                     

                     この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。

 

 

  「趨勢(すうせい)」  12

 

 梅吉はさっそく動いた、目指すはヤクの売人東野勇である。

馴染みの店を数軒あたったが姿がない。

パクられた、ふと頭をよぎったがそんな筈は無い、

売人のまとめ役をしているだけでは無い、

大阪でも一二の縄張りをもつ売人の頭や。

奴がパクられたらヤク仲間が騒ぎ立てるはずや。

梅吉は作戦を変えた、色気のない東野に女は考えられない。

そうなると酒しかない、奴は中途半端な飲み屋にはいかない。

そうかといって高級料亭に行くわけでもない。

今にも倒れそうな屋台の常連や、

常連と言えども同じ店に入り浸ったりはしない。

二三十軒の屋台を順番に渡り歩くんや。

何でそんなことをするか、察やマトリの追跡を絶ち払うためや。

毎日店を変えられたら、追いかける方は大変や。

偶然出くわしてもマトリが二人で来たら、

何席も無い屋台や目立ってしょうがない。

勘のエエ東野が気づかんはずがない。

東野にワッパがかけられんのは、

この東野の慎重さと勘の良さにある。

梅吉は以前入ったことが有る屋台を覗いた。

「久しぶりやな」

 屋台の主人、喜助が驚いたように声をかけた。

「一年ほど来んかったけど元気そうやないか」

 聞きなれた挨拶を交わした。

「なんやかんや貧乏暇なしでな、オヤジも一杯どうや、

そこの関東煮適当に盛ってくれるか」

 龍蔵からの軍資金がたっぷり有る、気前よう注文した。

「いやー助かりますわ、

ここんとこ暇で首吊ろうかと考えてましたんや」

「アホなこと言わんとってくれるか、

オヤジを煮込みにしても旨ないしな」

 冗談とも本気とも取れるような顔で返した。

 

                     

                     この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。

 

 

     「趨勢(すうせい)」  11

 

「梅吉にここまで言われたら、名取ハンも形無しですな。

そやけど、梅吉の言うてることは正しい思いますで。

あの結末をメディアで聞いた世間の人は、

狐に化かされたような気分になったと思いますで。

それにつけても最近の検察のやることは不起訴ばっかりや。

たまに裁判に持ち込んでも求刑する刑期が

短すぎるきらいが有りますわ。

最近の特捜部なんて、

有っても無かってもええような存在ですがな。

国民からしたら、ただ飯食わしてる心境ですわ」

 龍蔵も梅吉に続く、しょげかえる名取に酒を注いでやった。

「あんた個人を責めてもしょうない、

そやけどあれで幕引きですか? 

不祥事が有ったら正直に公表して、

処分せなあかんのと違いますの」

 龍蔵の口がおさまりそうに無い。

「言われる通りです、

ただその不祥事も上層部だけの秘密事項になってますんや。

不祥事が有ったまでは省内の噂になりましたが、

内容は一切漏れて来んのです。

こんな場合省内の幹部かその家族にまつわる話が多いんです、発覚したら省の恥になる。

そんなことが大臣の耳にでも入ったら更迭ものです。

だから苦し紛れの言い訳で幕引きを図ったんやと思います」

 名取が苦しい胸の内を訴えた、ここで梅吉が口をはさんだ。

「ワシが探りを入れてみますわ、

今回のことは発端が覚せい剤や、

売人連中に一杯飲ませて探りを入れたら

大まかなとこだけでも掴めると思いますわ。

その不祥事を追及したら、

どんな理由で釈放したか解明できるし、

逆に釈放された理由がはっきりしたら、

裏でからみあう構図がはっきりしてきますがな」

 梅吉の意見に龍蔵は納得した。

ーつづくー

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