「恋侍」 男編
お前を手放したのは俺だった
逃げたのは俺だった
後悔しても・・もう遅い・・・・。
刀を振い・・浴びた血の量はもう記憶にない
戦が終わると全身紅に染めていた
何で・・・こんな事しなくちゃならねぇ・・?
何で戦はやまねぇんだ!
俺の心を裏腹に空は雲ひとつない青空で・・・
俺は空に向かって右手を翳した。
血でベタベタになった右手は日光を浴びくっきりと俺のまぶたに焼きついた。
「昔は・・こんなおぞましい手じゃなかったのにな・・・」
ふと、記憶が飛んだ。
「白衛様の手はとても大きく暖かくて。 私は大好きです」
ごめんな? もう・・・俺の手は冷め切ってる・・・
「手を繋いでくださいませんか?」
ごめんな? そんな小さな願いさえも・・・叶えてあげられない
「柚姫はこれからもずっとお側にいます。 ですから白衛様もずっとお側にいてください」
ごめんな? 約束守れなくて。
柚姫に会いたい・・・。
「戦などいかないで、お側にいてください!」
「男ならば・・・武士ならば・・戦わなくてはならない・・・」
「何故です! 何故なのですか・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「何か申してください! 柚姫に・・・」
「黙れ!!」
「・・・・・えっ・・・・」
「貴様に何が分かるのだ! 女子の貴様に武士の気持ちが分かるものか!」
「本気でおっしゃっているのですか?」
「そうだと申したら?」
「白衛様とて許しません!! そんなに私が信じられませぬか!」
「俺は一度もお前を信じたことはない」
「・・・・・えっ・・・・・・・・・・・・・」
「もうよいか? せいぜいよい男と幸せになるのだな・・・」
それから柚姫のすすり泣く声を聞いた。
俺を軽蔑すればいい・・・顔もみたくなくなるほど俺を嫌いになればいい・・・
そうでなければ・・・きっと俺はお前を諦められない・・・。
戦では・・・ヘドロのように血を流し・・・何人人を殺めたのだろうか・・・
頬には返り血を浴びた・・・。
剣を振うたびに罪悪感を感じ。
人を殺めるたびに絶望感を味わった。
・・・・・・・・・・・・ハァ・・・・・ハァ・・・・・ハァハァ
体中痛い 足が動かない・・・何もできない・・・・
ハァ・・・ハァハァ・・・・くっ・・・ハア・・・・ハァハァ
何でこんなにも辛いのだろうか・・・
何でこんなにも苦しいのだろうか・・・
それは・・・きっと・・・・
戦はいつのまにか終わっていた・・・。
でも残骸はそのまま残されなんとも無造作だった。
俺は動くこともできなくてただただ地面に体を預けていた。
戦は終わったのに・・・
何故苦しい?
何故辛い?
何で・・・こんなにも涙が流れ落ちるのだろうか?
柚姫に会いたい・・なんどそう思っただろう。
繋がりたい・・何度そう願っただろう。
もしあの日々に戻れるならば・・・戻りたい。
ずっと手を繋いでいたかった・・・。
「白衛様!!」
嗚呼、これは夢なんだな・・・こんなに近くに柚姫がいる
「しっかりなさってください!!」
柚姫の小さくて暖かい手 俺が求めていた・・・・。
「何か申してください!」
柚姫が愛おしい。 泣かないで・・・笑って?
「白衛様・・・」
「・・・・・ぅ・・・・・」
「白衛様!!」
「・・・夢?」
「いえ・・・現実です! 夢ではないです」
現実? ・・・本当に?
「・・・・・ぐ・・・・・う・・・つ・・・」
「大丈夫ですか!」
体が動かない・・・今すぐ柚姫を抱きしめたいのに・・・指一本動かすこともできない。
「・・・ゆ・・・・ぐ・・・ゆず・・・き・・・・つ・・・ハァハァ・・・」
「何ですか?しっかりなさってください!」
苦しい・・・思うように息ができねぇ・・・。 伝えたい言葉も空気となっていく。
「・・・・・・・あ・・・あぃ・・・・・・・・て・・・・・・る・・・」
「えっ?」
「・・・ハァハァ・・・・あぃ・・・し・・・・・ハァハァ・・・てる・・・ぐ・・・っ・・・・」
やっと出た言葉も・・・何をいってるの分からないくらいの雑音(ノイズ)がかった声だった
「わ・・・私も愛しています!! しっかりなさってください! 柚姫の手を離さないで下さい!!」
柚姫が俺を愛してる? 本当に? 俺はあんな酷いこと言ったのに・・・突き放したのに・・・裏ぎったのに・・・
「・・・・ハァハァ・・・・ご・・・めん・・・・な・・・ハァハァ?」
「何で謝るのですか! やめてください! 」
許してくれた・・? 本当に? 俺・・・柚姫を好きでいていいのか・・・? 側にいていいのか? また・・一緒に・・・・
「・・・・・あ・・・・りが・・・・ハァハァ・・・・と・・・っ・・・・・う・・・ハァハァ」
精一杯の気持ちが涙とともに溢れた。 柚姫・・・ありがとうな?
「・・・・お帰りなさい、白衛様(ニコ」
涙でぐしゃぐしゃな顔で俺に笑いかける柚姫、愛おしくて仕方が無かった。
俺には・・・帰る場所があった。 やっと戦も終わって・・・俺は幸せになれる・・・柚姫と二人で・・・
「・・・・ハァハァハァ・・・・・ハァ・・・っ・・・・ハァハァ」
柚姫の顔が見えない・・・意識が遠のいていく・・・何も聞こえない・・・
俺死ぬのか?
死にたくない!! やだ・・・。 やっと・・・・やっと・・・柚姫に会えたのに・・・やっと・・・帰る場所ができたのに・・・・。
死にたくない・・・死にたくない!!
死ぬのなんて・・・怖くない。 そう思ってた。
でも・・・今思う。
死ぬのが怖い・・・・。
すごく怖い・・・。
死ぬって事は・・・愛する人と別れなくちゃいけない。
死ぬって事は・・・愛する人を置き去りにしてしまう・・・。
そんなの・・・いやだ。
愛おしい彼女をおいて逝くなんてできない・・・。
やっと掴んだものを手放すなんてできない!
まだ・・死ねないんだ・・・俺はまだ・・・
体が軽い・・・。 そう思ったとき俺は見た。
泣きじゃくる柚姫と・・・その隣に横たわっている俺の姿を・・・。
嗚呼・・・俺は愛する人を悲しませてしまった・・・。
愛する人を置いて逝っちまったんだ・・・。
そもそも幸せって何なんだ・・・?
俺は幸せだったのか?
柚姫は幸せだったのか?
・・・・こんなに苦しい思いをするのだったら・・・出会わなければよかった・・・。
彼女を泣かせてしまうのならば・・・愛さなければ良かった・・・。
何故・・俺は・・・人を愛してしまったのだろう。
掴みかけた幸せは・・・チリとなって消え失せた・・・。
もう・・・俺は幸せにはなれない・・・。
柚姫? ごめんな・・・・・?
お前が俺と出会わなければ・・・悲しまずにすんだのにな?
俺がお前を愛さなければ・・・こんな苦しいはずなかったのにな・・・?
でも・・・でもな?
俺は・・・柚姫を愛してた。 愛おしかった。
柚姫の笑顔は人を幸せにできる魔法なんだ。
だから、泣くな・・・。
笑って?
その笑顔で人を幸せにして・・・?
俺の愛したその笑顔で。。。。。
END


