「霧の中の風景」(1988年 ギリシャ/フランス)
監督:テオ・アンゲロプロス

1月26日に交通事故で亡くなられたテオ・アンゲロプス監督のヴェネチア国際映画祭銀獅子賞、ヨーロッパ映画賞作品賞、受賞作品。

ある姉弟が、まだ見たこともない父親に会うため、家を捨て、アテネからドイツへ旅に出たという実話をベースにテオ・アンゲロプロスが映画化。監督独特の静かな映像美に酔いしれることができる作品。

姉弟のアレクサンドロスとヴーラの二人は、ある夜家を捨て、父親を探す旅に出る。しかし、二人は父親のことを何も知らず、ただ母親のドイツにいるという言葉だけを信じて国際列車に飛び乗ったのだった。お金も持たずに早々電車から降ろされ、当てのない旅を始めるが・・・

国境も知らずにギリシャからドイツへ向かう二人。道中、いろんな人に出会い、希望や失望、善や悪、死、暴力と愛を体験していきます。そんな中、姉は身を犠牲にして弟の夢を叶えようと、無謀ながらも少しずつ進んで行きます。時に現実的であったり、時に幻想的であったりする二人の旅路を見守りながら、我々はどうか二人が無事にどこかにたどり着いてくれればと願うしかありません。たとえ行き着く先がなくとも、二人が納得できる場所にたどり着くことを願うしかありません。深い霧の中で彷徨う二人が幸せになってくれることを願うしかありません。
静かに心に染み渡る映像詩でした。ご冥福をお祈りします。


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