(「道徳の教科化」への動き)

 キーワードは、「正直、誠実」と「公正、公平、正義」。7日、文部科学大臣の諮問機関・中央教育審議会(中教審)の道徳教育専門部会は、小中学校の「道徳」の「特別の教科」(仮称)への格上げ(道徳の教科化)を目指す議論の取りまとめの中で、これらのキーワードを、指導する徳目として示しました。

「道徳の教科化」は、「道徳」が人の心の問題でもあることから、これまでも議論はありましたが、慎重に議論が行われていました。しかし、一昨年末に第二次安倍政権が発足してからは、拙速とも言える速さで、しかも、「集団的自衛権問題」を議論した「安保法制懇」と同様、安倍首相寄りの人選で進められてきました。

(小川・准教授の指摘)

上記のキーワードも、特に違和感のない言葉が並びますが、徳山高専の小川仁志准教授(公共哲学)は、「指示への『誠実』さが企業の不祥事を生んだり、『正義』の名の下の戦争が起こされたりすることもある。こうした言葉の善悪そのものを疑って議論するような授業にならなければ、国家が重視したい特定の価値を国民に押し付けることに繋がりかねない」(朝日新聞)と指摘しています。

これまでの経緯を調べてみると、正に、小川准教授の指摘が当たっているのではないかと思われます。安倍首相は、「戦後レジームからの脱却」を目指して「突き詰めて言えば、命を懸けても守るべき価値の再発見」(20117月、修学院政経セミナー)をしようと言っています。道徳が、「個々人の人格の形成のため」にあるのではなく、「国家や社会のため」にあると考えているのです。

(安倍政権の動き:教育再生実行会議)

安倍政権の下では、道徳の教科化は、昨年1月に閣議決定だけで設置された「教育再生実行会議」で、「いじめ」の問題にからめて取り上げられました。同年215日の第2回会合「いじめ・体罰の問題に関する討議」において、安倍首相は、「いじめ問題は、…道徳教育を充実していくことが大切」「道徳は、第1次安倍政権の時は教科にならなかったが、教科化も含めてもう一度検討していく必要がある。」と挨拶しています。

教育再生実行会議でわずか一回の審議しか行われていなかったのに、同月26日の第3回会合で、「いじめ問題等への対応について」が提言(第1次提言)されたのです。そして、その提言の中に、「道徳を新たな枠組みによって教科化する」、「道徳教育の指導方法を開発し普及する」といった重要な課題についての方向性が示されたのです。

(安倍政権の動き:道徳教育充実懇談会)

その提言を具体化するため、同年4月には、文科省・初等中等教育局長の決定だけで設置された「道徳教育の充実に関する懇談会」会合が開催されました。まるで、集団的自衛権問題の「安保法制懇」の「手口に学ぶ」進め方です。本懇談会では、道徳教育は「国家・社会の安定的で持続可能な発展の基礎となるもの」と位置付けられています。

本懇談会は、同年12月に「今後の道徳教育の改善・充実方策について」の報告をし、その中で、「教科化」するに当たっての「成績評価」や「教科書検定」に関し、「数値による評価は不適切であるが、評価することは重要。記述式の欄など多様な評価の方法を検討」、「教材を教科書として位置づけ、新たに教科書を導入することが適当」と言及しています。

(安倍政権の動き:中教審への諮問)

これを受け、下村・文科大臣は、今年2月に中教審(中央教育審議会)に対し、「道徳の教科化について」諮問しました。これまで、中教審では道徳教育専門部会において、検定教科書の導入、成績評価の検討、教員養成の在り方等について協議が行われてきましたが、今回(7日)、その取りまとめが行われたのです。

(安倍政権の動きを認識すべき)

憲法解釈の変更によって「集団的自衛権の行使」を容認した安倍政権は、「戦争のできる国」を目指し、国家安全保障会議(日本版NSC)の設置(昨年12月)、特定秘密保護法の強行採決(同月)、武器輸出3原則から「防衛装備移転3原則」への変更(今年4月)等を行ってきています。「道徳の教科化」もその動きの中の一つです。国民がシッカリと認識すべき時が来ていると思います。

(了)