デパートで販売をしていた時のこと。

閉店時間間際、年配の男性が不慣れな様子で商品を見ていらっしゃいました。

「何かお探しですか?」と声をかけると、今日長年勤めた会社を定年退職なさったとのこと。「今まで妻に何も、結婚指輪さえもプレゼントしたことがない。今日は感謝の気持ちを込めて、何かペンダントでも贈りたい。」これは責任重大です。奥様に喜んでいただけるものを選ばなければ。お話を伺うと誕生日は1月、という事は誕生石はガーネット。好きな色は緑。「緑のガーネットなんて聞いたことないしな」と残念そう。「いいえ、あるんです。それもハートのペンダントが。」ホワイトゴールドのハート型の中に小さなグリーンガーネットを敷き詰めたように留めてあり、光を受けて透明な緑色がキラキラと上品に光る、素敵なものです。彼の顔がぱあっと明るくなり、リボンをかけた小さな箱を大事そうにカバンに入れて、足早にお帰りになりました。奥様の驚く様子、そのあとの涙まで見えるような気がしました。

 

ガーネットは和名を柘榴石というだけあって、濃い赤色をイメージする方が多いでしょう。赤いガーネットは四大文明のころから愛好されてきました。しかし、ガーネットには赤だけでなく、オレンジ、紫、緑やカラーチェンジするものなどがあります。グリーンガーネットがあまり知られていないのは歴史が浅いからです。

1960年代に鉱脈が見つかっているのですが、ケニアのツァボ公園地域で産出されたことから、1974年ティファニーがツァボライトと名付けました。ティファニーの販売促進キャンペーンは人々の関心を集め、ツァボライトの名は世界中に広がりました。

緑の石といえばエメラルドですが、エメラルドと違いグリーンガーネットはインクルージョン(内包物)が少なく、透明度が高く、硬度も7から7.5と高いので、小さな石を敷き詰めるような留め方には向いています。