もう亡くなってしまいましたが、田原坂の近所に伯父が住んでいました。子供の頃には夏休みになると泊まりに行って、この坂を上ったりしながら沿道にある樹木などからカブトムシやクワガタを捕まえたりしていました。
この田原坂は…ご存知の方も多いでしょうが、明治10年の西南戦争での最大の激戦地です。
伯父が子供の頃には、近所の畑や山で穴を掘ると、鉛の弾がゴロゴロ出てきたそうです。
薩摩軍のは丸い弾、官軍のは先の丸い筒型で
、それを熱して溶かし、文鎮などを作ったそうですが、近年でもたまに出土することがあるみたいです。
日清戦争で使用した弾薬量以上の弾の消費量だったそうですから無理もない。

田原坂の山頂には記念館がありますが、私が子供の頃には、弾痕の家という名前のボロボロの蔵が建っていました。名前の通り弾痕がある建物で、今は無くなりきれいな記念館となっています。
公園を奥に進むと慰霊碑があり、数千人の戦没者の名前が彫ってあります。
その昔、大勢の最後の侍達がこの地で亡くなり、日本は近代化を遂げてきたんですね。
トムクルーズと渡辺謙主演ののラストサムライは、まさに西郷隆盛がモデルで、この田原坂の戦いが映画の中でも描かれていたのかな。私の手元にも白くなった鉛の弾があります。手に取って眺めると、その昔命をかけて信じることのために戦った人達の思いや辛苦などを想像し、思いを馳せていろんなことを考えてしまいます。

随分長いことブログ書いてなかった。と言うよりか、この二年近く全くそんなことをする余裕もありませんでした。
今は俗に言うブラック企業?に近い会社で働いてます。
最近のささやかな楽しみは読書です。
暇さえあれば読んでいるのですが、宮本武蔵読みました。吉川英治のです。
通勤電車の中で読んだり、寝る前に布団の中で読んでいたのですが…とにかく長かった。
読み進むうちに、どんどん物語の中に吸い込まれていってしまい、武蔵や又八、お杉ばばやお通さんや沢庵和尚、伊織などの気持ちなど感情移入してしまってました。
はがゆい気持ちになったり、爽快な気持ちになったりしながら読み進み、物語の終盤は休日の朝に布団の中で読んでいたのですが、図らずも涙が溢れて、指で涙を拭いながら読み終わりました。
自分でも、まさか小説を読んで泣くとは思いもよらなくて驚いてしまいました。

そんなことを誰かに話したくてブログに書いてみました。
私が当時働いていたバーはドアをあけるとすぐに下りの階段でした。
お店の照明は少し薄暗くセッティングしてありました。

ある日の夜、すでに夜も遅く3組くらいのお客様が来て、お酒を飲んでいました。そのうちの一組のお客様の一人は有名な俳優さんでした。

私はオ-ダ-されたお酒を持って行ったり、灰皿を交換したりしていましたが、そんな時にドアが開いて背の高いお客様が立っていました。
外の街灯の光が明るく、逆光でよく顔が見えませんでしたが、そのお客様が階段を下りてきて、私はハッとしました。

昔からテレビでよく見知ったその顔…松田優作さんでした。

刈り上げた頭髪にサングラス、独特の威圧感があり、私はドキドキしてしまいました。
彼は待ち合わせをしていたらしく、先に来ていた有名俳優さんと一緒のテーブルにつきました。

私は興奮する気持ちを抑えて「お飲み物は何にいたしましょうか。」と尋ねました。
「ビールくれる。」と言いながら煙草のエコーを取り出して火をつけました。

その日は松田優作に目が釘付けの夜でした。

その後、映画『ブラックレイン』が上映され、あの鬼気迫る演技に圧倒されました。
私がお会いした時は映画の中の髪型と同じでしたから、既に癌だったんですね。
子供の頃に憧れていたので、お会いできて良かったです。