「どら蔵」朝井まかて　講談社

主人公のキャラクターがいい！テンポがいい！

主人公の「どら蔵」こと、寅蔵

道具屋「松仙堂」の跡取り息子

16歳になっての丁稚奉公

なぜ、こんなに年をとってからなのか？

松仙堂は主筋にあたる本家「龍仙堂」の別家の店

龍仙堂とは一生続くであろう上下関係があり、別家とはいえ跡を継ぐ者は龍仙堂で七年間の丁稚奉公をしなければ跡継ぎと認められない決まりがある

寅蔵の母は松仙堂の家付き娘、寅蔵が幼い時に病死

父は手代から娘の婿になった身

後妻は、実子の佐次郎に跡を継がせたい

佐次郎を龍仙堂に丁稚奉公に出したいのだ

その事でスッタモンダがあり丁稚奉公に上がる年が大きく遅れてしまった寅蔵

その間に遊里通いも覚え、丁稚奉公に上がっても夜な夜な店を抜け出し遊里通い

ある日、塀を乗り越え店に戻ると待ち構えていた番頭に捕まる

口の上手い寅蔵、何処へ行っていたのか？と聞かれてものらりくらりと言い逃れていたが

どうも…違う理由で大きな失敗をやらかした模様

遊郭で、お遊びでやった古物の目利き

その品は、龍仙堂から他所に渡った品であった事から龍仙堂の面目を潰してしまう結果となっていた

丁稚奉公、終了

実家も追い出され

母の妹の家に転がり込む

亡き姉の息子に甘い叔母は支度金も持たせ寅蔵の旅立ちを見送る

ここまでが序章（大阪編）

そして、江戸での生活が始まる

大阪から江戸へと出てきた寅蔵が古物商の見習いでこき使われながら、成長してゆく過程を描く話なのだが

丁稚奉公をしくじった寅蔵が、江戸で世話になる先々で学んだ事が

この先、古物商道具屋の商人として役に立って行くのだろう

ついつい喋りすぎる寅蔵、富山の薬売りの元で修行では「余計な事は喋るな」と厳しく躾けられ、静かに付き従う事を学び

古物商の大師匠、温古堂の元で身の回りの世話をした時は、まるで古女房のような気遣いまでできるようになる

大阪の道具屋のぼんとして暮らしていたなら学べなかった事ばかり

江戸で知り合った人たちも個性派揃い

怪しい屑拾い集団の白浪屋、いけ好かない若旦那の鍋善貫太郎、大師匠の温古堂•田端掖斎

皆、いい味出してる

1番のいい男は…富山の薬売り久太郎

久太郎が想い人への気持ちを言った言葉がいい

「そうだ、惚れてるよ！魂が反っくり返る程にな。悪いか」

寅蔵も惚れちゃってた？ないい男（笑）

ところどころに差し込まれる心の声みたいな、捨て台詞みたいなひと言が笑える

例えば…

「お頭もご息災のようでなによりだす。頻尿は治りましたか」

「まあな」

【この言いようは治っていないのだ、時々漏らしているかもしれない】🤣

稼いでも散財してしまう女義太夫

「稼いだら、稼いだ分だけ消費しちまう」

【好き、そういうの好き】😆

「わしの死水をとることになっても知らぬぞ」

「まかせて、まかせて」

寅蔵可愛い💕

最初から最後まで、面白くて温かい

朝井まかては、実在の人物を小説にすることが多いので主人公が山あり谷ありの大変な人生だったりする作品が好きな読者には評価★が低いようですが

私は、愛嬌のある主人公の明るい話もいいものだ！と思いました

引くほどに分厚い📖ですが、面白くてあっという間に読み終えました

「どら蔵」朝井まかて 読了

「どら蔵」朝井まかて　読了