凄い事が起きそうですが!しかし 高圧は爆発する恐れがあります。
夢の超電導、超高圧実験で再燃 冷却不要に迫る
コラム(テクノロジー) 科学&新技術
2019/7/13 4:30日本経済新聞 電子版
電気が抵抗なく流れる超電導の分野で最近、研究者が色めき立っている。超高圧という特殊な条件下だが、これまでのように極低温に冷やさなくても超電導になる物質が見つかったからだ。これに続いて長く夢見られてきた「室温超電導」を実現すれば、送電網や公共交通機関、大型医療機器などに大きな変革をもたらすと期待が膨らんでいる。
新たな超電導物質の突破口を開いたのはドイツの有名な研究機関、マックスプランク研究所だ。材料は硫化水素。通常は気体だが、150万気圧という超高圧にすると金属になり、セ氏零下70度で超電導になった。最初の報告は2015年にあり、世界の超電導研究者を驚かせた。
東京大学の橘高俊一郎助教もその一人だ。「なかなか実現できない室温超電導がそう遠くない将来、可能になるかもしれないと再認識させられた成果だ」と解説する。
とっぴな実験だったわけではない。長い歴史のある金属の超電導研究で確立された標準的な「BCS理論」を基に1968年、「金属になった水素は高い温度で超電導になる可能性がある」という予測が生まれた。04年には、水素を多く含む物質であれば高圧下で金属となり、高温で超電導になると推測する論文も発表された。マックスプランク研究所はそこを狙った。
高圧にして冷やしながら超電導を調べるには特殊な装置が必要だ。すり鉢形をした、最も硬いダイヤモンドを2個使い、小さな面を向かい合わせにして間に試したい物質を入れる。上下から強い力を加えて物質を超高圧下に閉じ込め、人工的に金属のような結晶の構造を作りだす。日本では唯一、大阪大学がこの実験ができる装置をもつ。清水克哉教授は「世界を見渡しても10施設もない」と明かす。
19年に入ってからも新しい成果が相次いでいる。米ジョージワシントン大学を中心とするグループがランタンと水素の化合物を200万気圧で金属にすると零下13度ほどで超電導になったと報告し、今のところこれが最も高い超電導温度となっている。
水銀で初めて超電導現象が見つかった1911年、温度はこれ以上は下げられないという零下273度より4度ほど高い零下269度の極低温だった。銅を含んだセラミックスが超電導になると盛り上がった86年から温度の上昇は続き、零下140度にまで到達した。東京工業大学の細野秀雄教授らが発見した鉄系の超電導物質も比較的高い温度で超電導になるが、現時点で零下217度が最高だ。ランタンと水素の記録は飛び抜けている。
温度が低いほど冷却にかかるシステムは大きくなりコストも高くなる。極低温にするためには最近価格が高騰している液体ヘリウムを使わなければいけない。零下196度以上で超電導にできるようになれば、より安価な液体窒素を使えるようになる。
医療の診断に使われている磁気共鳴画像装置(MRI)やJR東海が東京―名古屋間で運行を目指すリニア中央新幹線に代表されるように、液体ヘリウムで超電導を作りだす応用分野が増えている。液体窒素による冷却で、より小型で安価にする要望は強い。
もし冷却が不要になれば、アフリカの砂漠地帯に太陽光発電を設置し、超電導の電線で日本など遠隔地に電気を送る夢のようなプロジェクトが実現できるかもしれない。このため材料研究者は冷却温度をできるだけ高く、可能ならば冷却不要で加工しやすい超電導物質を探索している。
高圧下で金属になる水素系の物質は実用性からみると不利だ。それでも研究者が注目する理由は、超電導を起こす仕組みを解明し、工業的にもっと利用しやすい材料で超電導を実現するのに役立てられると考えているためだ。
躍進著しい人工知能(AI)を使って目標達成を目指す研究も出てきた。物質・材料研究機構の石河孝洋特別研究員は、水素と組み合わせるもう一つの元素は何が適しているのか、高圧の条件下でどの程度冷却すると超電導になるのかなどをAIを駆使して調べている。
高圧で超電導になる物質は60種類以上あると予測されているが、実際に合成して超電導を確認できたのは数件にとどまる。有望な組み合わせの一つに水素とイッテルビウムがあがっており、何度で超電導になるのか、どの研究機関がそれを突き止めるのかが関心の的になっている。石河特別研究員は「超電導になる3つの元素の組み合わせを提案できるようにしたい」と話し、世界で熱くなる超電導の新物質探索で独自の成果を目指している。

