★新聞よ、おごるなかれ! ネットリテラシーは記者より、ふつうの人の方が高い | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。


こういう記事を読むと、つい反応したくなる。


日経新聞朝刊1面企画「ネット人類未来 第4部スマホの先③ 政治家、試される発信力」


安倍晋三首相のSNS巧者ぶりを導入部に使っているのだが……。
前半はよく調べてあり、的確に書けている。
安倍さんのページを見れば、SNSの特性をよく理解して書いていることが明瞭だ。
問題はこの記事の後半部だ。
ちょっと引用する。(◆印は引用)


◆安倍は前からフェイスブックの愛用者だった。ビックカメラで「iPad」を買い、記事を自分で書く。政治家はみな、こんなスタイルに近づいていく可能性がある。

ジャーナリスト 石川秀樹

フェイスブック、ビックカメラ、iPad、そして「自分で書く」……。
これが記者に浮かんだ“最先端”のイメージなのだろうか。
このあと記事は、地下鉄でのスマホ実用を実現させた孫正義氏のツイッターの話題、芸能人の母親の生活保護費需給をツイッターですっぱ抜いた片山さつき議員の話を持ち出して、ネットの威力を持ち上げる。
ただこれは、以下のことをいいたいがための“前触れ”であったようだ。


◆ただ、今後問われるのは情報の扱い方だ。スマホの普及でデマや偏った内容の情報が拡散することが増えた。
◆書かれた内容をそのまま事実と受け取る利用者も少なくない。



そして、お決まりの有識者を引っ張り出しての主張代弁だ。


◆東大准教授の菅原琢(36)は「ネット世論は極端な意見が目立ちがち。偏った考えを共有することで仲間意識も生まれる」と分析する。世論かサロンか、その見極めも重要になっている。


おやおや、ソーシャルメディアにおける僕らの発信は(全部でないまでも)「デマや偏った内容の情報」と決めつけられた。何の証拠もなく。


それではお聞きしたい。
2011年3月11日の地震津波を契機にした福島第一原発の事故において、新聞やテレビ、わけても日経新聞などの大メディアは事実を伝えただろうか。
こぞって、何の根拠もない、いや、結果としてウソで塗り固められた事故当事者である東電情報をうのみにして国民に伝えた。
この間の報道は、フリージャーナリストの発信の方がはるかに正確で、問題の核心を衝いていた。それらを読んで再発信したSNSの“ただの素人の発言”の方がはるかに良質で、事件の本質をつかんでいた。
大メディアの記者、論説委員はどの面下げて、ソーシャルメディアの情報をウソ、偏見と決めつけられるのか!


君たち(大新聞・テレビの記者・編集委員・論説委員)と同様、僕らもしばしば間違えるし、情報をうのみにもする。しかしその確率は、君ら“プロ”を自認する人たちとどれくらいの差があるだろう。
少なくとも僕らは、東電、そして東電情報を承るしか能がなかった政府情報を、うのみにはしなかった。
事故の現場では、「あの情報はおかしい」「ウソではないか」という声は、かなり初期の段階から上がっていた。
真摯にそういう声を聴く気があれば、あれほどに国民に、曲げられた東電・政府(つまりこの事故の責任者)の都合のよい情報を垂れ流すことはなかったはずだ。


この記者は、ネットの情報は危うい、その情報をうのみにして形成される世論はさらに危うく、ウソ情報を共有することで“烏合の衆”がサロンを形成する、とまでいいたいようだが、その思い込みこそが、ネットリテラシーの低さを物語っていると僕は思う。


君たち記者は、ブログひとつ書けないではないか。
ソーシャルメディアで、一個人として日々発信することもない。
“社畜”の君たちに書けはしまい。
君たちも、僕らも、Facebookという実名のメディアの中で、個人の名誉と責任をかけて自分の意見を発信し続ければ、世界はもっと透明になりもっと公平になる。
素人同然の新聞記者たちに、「ネット世論は……」などと高みに立った講釈などされたくないのだ。


君の書いた記事はこう結ばれていた。


◆選良たちは広大なネットの海を泳ぎ切ることができるだろうか。


誰に向かってものをいっている。
曲がりなりにも国民の選挙によって選ばれた国会議員より、君たち記者はエラいのか。
仲間意識がある、だから親しいのだろう。
それはわかる。
政治家も一流新聞社の記者も、元をただせば同じ階層、大学の仲間たちだ。
それを一見、へりくだったように「選良」などと古臭い言葉を突然使って見せる。
屈折しているのだよ、君たちの思考は。
今どき政治家を「選良=エリート」と思っているのは君たちくらいのものだ。


釈迦に説法だが、最後にいっておきたい。


「世論」は正しい情報によっても、誤った情報によっても形成される。
そして過去、日本に悲劇・惨劇をもたらしたのは大メディアによる誤った扇動によるものであった。
今日、曲がりなりにも“脱原発”の正しい意識が国民に浸透しているとすれば、それは大メディアによるものではない。
間違い続け、ウソ情報垂れ流しに加担してしまった大メディア情報を、「信じるな」「現場はこうだぞ」「事件は終わっていない」といい続けてきた、ソーシャルメディアの情報によってである。
物事の本質をつかむ力は、何ものにも左右されない、金にも権力にも利権にも名誉にも無縁な、われら無名の民たちの方が、「プロであらねばならない記者・編集者たち」の眼力を越えているのではないか。


顔を洗って出直さなければならないのは、君たちである。



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【筆者から】
このブログの元になっているのはFacebookへの書き込みです。
主にFacebookページ「ジャーナリスト 石川秀樹」に投稿しています。
ミーツ出版(株)という小さな出版社の社長をしています。61歳で行政書士の資格を取り開業しました。さらにこの数年は「ソーシャルメディアを愛する者」としてFacebookで熱く語り続けています。ブログは私の発言のごく一部です。ぜひFacebookページもご覧ください。コメントをいただけたら、こんなにうれしいことはありません。


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