【自信喪失につき】
主訴は頭痛。
が、少し変わっていて、痛みは常にあり、それも頭のてっぺんだと言う。それから、上唇、それと口の下あたりのアゴにも痛みがある、とのこと。痛みはそれぞれの真ん中よりやや右側である。
病院、接骨院、整体カイロをそれぞれ複数歴訪。治療院は何ヵ所行ったか分からないほどの、いわゆる治療院ホッパー状態だ。
おや?記録にない。罹患期間の記載が漏れている(苦笑)が、複数年に及んでいたのは間違いない。
「初めは病院。何ヵ所かを回り、あるところでゼネストパチー(幻覚=転じて幻肢痛)だと言われ薬をもらい、それを飲んだら“こんなんなっちゃって”(※筆者注:手を空中で泳がせた。「フラフラになってしまった」という意味だと思う)、それで怖くなって薬を飲むのをやめたら勝手にやめるなと怒られて…」。
「結局一番効いたのは抗うつ剤。少し緩和した。今は以前ほどの痛みはないけど、最も痛かった時は、 なかなか辛いものがあった。譬えて言えば頭のてっぺんから口の先に、ドリルが刺さっているようだった。」
「治療院は、最も長かったところで3ヵ月通った。すぐには治らないと言われ、それもそうだと思い行ったけど、結局効果がなかった。」
などと話されていた。因みに痛みの発症に、確たる原因は不明。根を詰める作業をしたことがあるが、そのあたりから痛み始めたようだ、とのことである。
ちょっと不思議な痛み方だ。同情心が生じ、なんとか治したいと思いながら解剖学書をめくり、痛む部位から「三叉神経痛のようですね」と告げる。
患者は三叉神経痛と言われ、少し訝しむ(と言うか、ちょっと戸惑う)表情。「坐骨神経痛でも坐骨神経全体が痛むとは限らず、膝だけ、とか、足のカカトだけ、という痛み方をすることも多い。三叉神経痛は通常顔面の広範囲が痛むようですが、○○さまの場合は三叉神経の突端部分が痛んでいると考えます」。
もちろん加療法は、クラニオセイクラルセラピー(頭蓋仙骨療法)である。が、その前に腰や肩の痛みは無いかと訊ねた。実は両方少しある、との答え。
白状すると、病院やほかの治療院では幻肢痛だと言われたり診断がつかなかったり、首の問題と言われたり。その上、三叉神経痛としても少し変わった痛み方であるため少し自信がなく、それで保険をかけておこうという意図があった(;^ω^A。すぐに効果が出るか疑問だったのだ。
姑息なようだが、「何をやっているか判らない」オステオパシーテクニックの、それもクラニオセイクラルセラピーだ。頭に、ほんのわずかに触れるだけ、効果が出ないと即疑われる。それで、腰痛や肩コリがあるなら、そっちで少し効果を出しておきたい。(;^ω^A
そうして、まず腰の検査。腰椎4,5番に機能障害があり、それを矯正。すると、余計なことはしてみるもので、腰椎5のカウンターストレイン(90秒間、じっとしている)をかけていると、「こうしていると口のあたりにズーンと響く」という。
ほう。
これは、分かりにくいので簡潔に記すと、クラニオの考え方では頭部と骨盤仙骨は大いに関連性がある。硬膜という脳を包む膜は、その骨盤仙骨まで、背骨の中をチューブ状になって伸びているからだ。腰椎5番は仙骨と深いかかわりがあり、それで腰椎5番矯正が背骨の硬膜を伝わって頭部に刺激を与え、 脳神経の三叉神経に影響していると思われた。
分かりにくくてゴメン。ここではそんなもんだと思ってください。まあ、とにかくそんな感じで、やはり硬膜障害。クラニオセイクラルセラピーが適切なケースだとほぼ確信した。
念のため首の矯正。頚椎1~4番に機能障害。その後、クラニオセイクラルセラピーに入った。
もっとも初日は状態の検査のつもりで頭蓋に触れていくと、果たしてメインであると思われた(側頭骨と)蝶形骨に異常が認められる。
蝶形骨は、顔面は目の奥の方、頭部の真ん中前方寄りに位置する骨で、外部から触われるのは大翼と呼ばれるコメカミ部分のみである。そのコメカミ。
分かりにくくて恐縮だが、コメカミにある大翼は、「鼻のほう」と「頭の後ろ上方」に向けて、やや斜め前後に動きがある。その斜め前後の動き。
私の触診では、その鼻のほうと頭の後ろ上方への前後の動きが右側で、
まずガクリと「肩のほう」へ、落っこちる(;^ω^A
落っこちてから、普通に鼻のほうへ動くのだよ。
戻る時には、普通に頭の後ろ上方へ。その位置に戻ると、またガクリと肩のほうへ落っこちてから普通に鼻のほうに動く。
「ガクリと落ちる」のが、かなりヘン。
(。´・ω・)ん?ん?なんだ、これ?
前頭骨が引っかかっているのか?でも前頭骨はチェック済み。特に異常はなかった。すると蝶形骨の前に位置する上顎骨が引っかかっているのか?でも上顎骨は口に手を突っ込むやり方しか知らないぞ。手術用の手袋、用意してないんだけど…。
そんなふうに考えながら、とりあえず受動的に蝶形骨を調整。でもやっぱりほとんど動きに変化はない。
結局、諦めるしかなかった。
状態だけ告げ、患者に詫び、次回を是非(次のチャンスを頂きたい)と話しをする。ご理解いただき、1週間後に予約を入れてくれた。
もちろん痛みには何の変化もなかった。何とかしなければ、と思った。
患者が帰ったあと、解剖学書をひっくり返す。何がどうなっているのか?
やがて一つの有力な仮説が浮かぶ。上顎骨ではなく、これじゃないかな?
そんな5日後。電話が鳴る。この患者さんだ。
「あのあとネットで調べたんだけど、私は電磁波過敏症なんじゃないかと思う。それを専門で診る医師がいるから、悪いんだけどそっちを受診したいと思う」のだと言う。
突然なんだ?と思い返答に困っていると、
「実は、他に音響療法(?)を受けているんだけど(※筆者注:音叉などを使い、音の共鳴現象でする補完医療があるらしい)、センセのところに行った2日後にそこへ行った。そうしたらその晩からおかしくなって、3日間寝込んだんですよ」。
…
例の、「こんなんなっちゃって」だろう。つまりフラフラになってしまった。薬の時には1日だったらしいが、私の時のあとは3日間…。
音響療法(?)は、いつも通り受けた。変わったことがあるとすると、私のところでのクラニオセイクラルセラピーだ。
その時に何を言ったのか、よく憶えていない。どう見るか、と訊かれ、やはり三叉神経痛だろうと答えたことと、寝込んだのは好転反応の一種だろう、2回目は無いかと言われれば、あるかもしれない。が、そこは少し調整する、などと答えたはずだ。それから、ウチでの加療は変化が見られないように思えたが、少しの変化は与えていたのだろう、それが音響療法(?)により表面に出てきたのではないか?そんなやりとりをし、このまま引き下がりたくないため必死に説得していたと思う。
やがて患者は思い直し、予定通り伺う、と言い電話を切った。
ますます、何とかしなければ。
あれこれ考えて、準備していた予約当日。
再び電話が鳴る。この方だ。「やっぱり行く勇気が出ない」。
まあ、薬飲んでフラフラになった時のことを「恐くなった」と言っていたからね…。
恐くなっちゃったのね。もはや言葉が出てこない。了解するしかない。
ヽ(;´ω`)ノ
。:゚(。ノω\。)゚・。
(´;ω;`)
ちきしょー
結局お役に立てず、すみませんでした。
今でもやはり、三叉神経痛であったと思います。
おそらく蝶形骨小翼というところ(上記大翼の下方に位置する部分)と下顎骨をつなぐ、内側翼突筋という筋肉の緊張が「肩のほう(下のほう)」に引っ張ることで蝶形骨の駆動に機能障害を与え、蝶形骨骨体を貫通する三叉神経に「擦れる」ことで痛みを生じさせているのだと考えていました。
内側翼突筋緊張はTMJ(顎関節)問題に関わり、結局ストレスがその原発要因だったのではないかな?