石田 衣良
4TEEN

<あらすじ>

北川テツロー、14歳。「都会」とも「下町」ともいえる月島に住む、ごく普通の少年。デブでおおらかなダイ、冷静沈着なジュン、重い病気を抱えているが明るい性格のナオトという3人の親友とともに少し背伸びをして「大人の世界」を学んでいく。


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14歳という年齢。明らかに子供の年齢でありながら、大人の世界が垣間見えつつ、そこに手を伸ばしたくなる年齢。また、小学生の頃には「何でもできる」と思っていたのに、自分にはできないことがあるということに気づく年齢。


義務教育でしっかり勉強しなくてはいけないとか、ゆとり教育で子供の創造性を伸ばさなくちゃいけないとか、色々な議論がある。でも、子供たちが本当に知りたいのは、学校では教えてくれないオトナの世界であり、それを体験したときの喜び、自分が成長したと思う実感は計り知れない。


テツローたちは「友達に女子高生のプレゼント」「人妻との出会い」「新宿中央公園野宿の旅」など、オトナでさえタイトルを見るだけでドキドキするようなことを次々と企画し、体験していく。人妻との出会いでは夫婦というもののあり方について考え、新宿の旅ではゆきずりの男に妊娠させられたユウナを思いやり、助けようとする優しさなど、学校では絶対に学べない、でも今のオトナに根本的に欠けていることを学んでいく。


もちろん、学校の勉強が全く必要ないとは思わない。しかし、何でもかんでも学校で学べるわけじゃない。そんなバランスがうまく取れている人間は、真に「人間的」になれると思う。彼ら言う。「大人になったときに、バラバラになっちゃうかもしれない。辛いことがあるかもしれない。でも、そんな時も「こんな友達がいたんだ」って思い出そうぜ」


陳腐なセリフかもしれない。でも、立ち止まってこの言葉をつぶやいてみれば、誰もがふっと思い出すんじゃないだろうか、あの頃の友達を。


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あさの あつこ
バッテリー〈2〉

<あらすじ>

中学に入った巧と豪。念願の野球部に即座に入部すると思われた巧は、入部期限ぎりぎりの一週間後まで届けを出さないと宣言。訝る豪。しかし、真の狙いは中学の練習を見た巧が、其の練習内容に不安を感じたため、できるかぎり自分たちできちんと練習したいという事にあった。

一週間後、入部する巧。きちんと統制された練習だったが、各選手が軍隊のように言われたことのみを行う現状に不満をいい、一年生ながら監督、先輩にたてつく。その結果、監督は認め、先輩からはリンチの対象にされる。マウンドは「余計なものを剥ぎ取って、自分をさらけ出す」場所だったのに、今、マウンドと巧の間には、「とうていかなわない力」で遮られている。意地を張ったがばかりに、他人にまで影響を与えていることを知り、戸惑う巧だが・・・



「たかだか10年くらい先に生まれたからって先生と呼ばせ、たかだか1,2年先に生まれたからって先輩と呼ばされるなんて」。巧の偽らざる気持ち。野球とはそんなものではなく、ただ純粋に力と力のぶつかり合いだと主張する。


組織は、長くなれば長くなるほどその中にいることに甘え、それを乱される人物が入ることに異常なほど怖れを抱く。新田東中野球部は、まさにそれを地で行く状況に陥った。既得権を主張する展西らと、ただ早く力を認めてもらいたい巧。このギャップがあるかぎり、巧はその力を発揮できないだろうし、チームとしての成長も見込めないだろう。


ただ救いは、監督である戸村が巧の力を見抜き、それを育てたいという気持ちが芽生えたこと。トップが気付けば、組織は活性化する。


しかし、戸村はここから非常に難しい立場となるだろう。自分もずっと体育会系にいたから分かるが、下の学年の台頭は、上級生にとって何にも変えがたい恐怖であり、下手をすると「俺らはかまってもらえないから」と曲がった考えを持ってしまい、その彼らの本来の力を発揮させられなくなってしまうからだ。


こんな上級生だってやり方しだいでは伸ばすことができる。卓越した巧をしっかりと育てつつ、他の人材にもしっかりと気を配り、最高のチームに仕立て上げていく。戸村の監督として、そして組織トップとしての手法を見ていきたいと思う。



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あさの あつこ
バッテリー

記念すべき第一回目にこの本を選んだ。本当は、もっと前からやろうと思っていて、何冊も読んだのだが二の足を踏み、結局今日まで引き伸ばしてしまった。


でも、結果的にはこの本になってよかったと思っている。


この本の主人公・巧は小学校から圧倒的な能力を持ち、他の小学生とは次元の違うレベルで野球をやっている。私Camuは今も野球をやっている。しかも、同じ「ピッチャー」というポジションだ。しかし、Camuは高校から野球を始めた。それまでは、ソフトボールを1年やったくらいで、あとは全く違うスポーツを転々としていた。


自分はピッチャー向きの性格だと思っている。強気だし、お山の大将になりたいし、何よりも目立ちたい。高校からはじめたというかなり大きいハンデがありながらも、それなりに投げられるまでにはなった。


しかし、巧からすれば鼻で笑うような実力だろう。しかし、彼の心の中は、どうも自分のそれと似ているようだ。


野球は一人ではできない。当たり前の事に聞こえるだろうが、天才(と、お山の大将)には聞こえない。自分が圧倒的な力で投げ、打たせなければ勝てる。これも真理だ。しかし、その前に「野球は9人そろわなければできない」という至極単純なところまで抜けてしまっている。


Camuは天才ではない。圧倒的な力もない。しかし、マウンドに立つと周りが見えなくなる。「自分が投げて、自分が抑えて、自分が楽しめればそれでいい」。こんな感じだった。

ただ、たった一回のマウンドが自分を変えた。その試合で全く歯が立ちそうもない相手」を見たとき、初めて謙虚に「1球1球を丁寧に、打たせてみんなで守ろう」という気持ちを1試合持ち続けることができた。すでに社会人になって草野球をするようになってからだったが、それ以来、得意の(?)四死球も、ピンチのときに崩れることも少なくなった(まだまだ未熟だが・・・)


野球は、自分にとって最高の人間形成の場であったと思う。バッテリーはまだ1巻を読んだのみ。ピンチにたたされたことがなく、本当の意味での野球の恐さを知らない巧がどのように成長していくのか、非常に楽しみだ。



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