日本社会において年々、過労死問題が深刻化している。
厚生労働省のマニュアルによれば、「過労死とは過度な労働負担が誘因となって、高血圧や動脈硬化などの基礎疾患が悪化し、脳血管疾患や虚血性心疾患、急性心不全などを発症し、永久的労働不能または死に至った状態をいう」と定義されている。
同省が発表した「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況」によると、脳血管疾患及び虚血性心疾患で亡くなるいわゆる「過労死」による労災認定1)は、2008 年度には、158 件と07 年度より16 件増え、過去5 年間で最多になっていることが分かった。
これまでにも、過労死やストレス疾患などの働きすぎによる健康障害が多くの企業で問題となっている。
厚労省の労災認定基準では、脳血管疾患及び虚血性心疾患等を取り扱っているが、仕事との因果関係の立証が難しいため、脳・心臓疾患の労災認定申請のうち、過労死と認められるのは一割程度である。2001 年12 月の認定基準の改正で発症前6 か月間の長期間にわたる疲労の蓄積が考慮されるようになり、うつ病による過労死も労災として認められるようになった。
日本だけでなく、過酷な労働条件が原因で死亡するという現象は、産業革命以降、先進国・発展途上国問わず存在している。
しかし、世界のほとんどの国が国連の労働基準条約を調印した現在、この先進国日本に過労死が存在する理由は、日本の行政がこの条約を無視して労働基準法を遵守していないからである。
とりわけ、先進国の日本で過労死が多発している事象については、世界的にも稀有な例として見られており、先進国の中でも労働基準法が遵守されていない例として認識されている。
本ブログでは、まず日本における過労死の現状を述べたうえで、なぜ過労死が起きるのかを考察する。
さらに実際に起きた過労死裁判の事例を紹介し、続けて現在行われている対策とその問題点を検討していく。