エリザベス女王の次は、井伊直弼ですか(^^)。

岡田くん待望。来ましたね~。

ロダンと同じく、若い頃いろいろ報われなかった井伊直弼の苦労を共感しましょう。

私、割と井伊直弼好きなんですよ。

芽が出ないのわかってても、努力を怠らないところ。

ちょっと岡田くんに通じるところも感じたり。

 

井伊直弼が暗殺される歴史の流れを決定的にした、日米修好通商条約。

不平等条約というレッテルを張られていますが、まぁ、実際に不平等だったんですけど、

その頃の国際情勢から言って仕方ないことだと思うんですよね。

例えば、アメリカに有利な治外法権ですが、ヨーロッパやアメリカから見れば、日本なんて中国のそばの小さい国で得体が知れなかったわけで、またけっこう法律も厳しかったので、アメリカでは咎められない罪をうっかり日本で犯してしまった場合、打ち首とかにされちゃうわけですから、アメリカとしては自国民の身の安全を確保しなくてはいけませんでした。

 

また、貨幣価値が周りの国々と齟齬があったのも痛かった。

ハリスたっての強気交渉で自由貿易を約束させられたものの、日本の銀の価値は他国に比べて四倍ありまして、貨幣価値の齟齬がかみ合うまで、日本に大量の銀が持ち込まれ、代わりに金が流出しました。

日米修好通商条約当時、一キロの銀に対して他の国では金は1/16キロにしかなりませんが、

日本では1/4になるんですから、バカみたいな大儲けされちゃったわけですね。

その頃世界は金本位制(今もそうですが)で動いていたんですが、日本は銀本位制だったんですね。故に、実際の銀の価値より、日本国内では銀は高かったんです。

今の紙幣が、実際は貴金属ではないのに、信用で貨幣価値があるのと同じですね。

今でも銀行って言うでしょう?

いろんなところに「銀座」って地名も残っていますよね。

日本でお金、と言えば、銀のことを指していたんですよ。

 

まぁ、古代ではヨーロッパでも、銀はとりだすのに技術が要りますから、そのまま砂金などでとれる金より高価な時代があって、わざわざ、金の器を銀でコーティングしているものも残っています。富貴の象徴でね。

そういや、今じゃ、安価な器の代表みたいなアルミ。

ナポレオンはその頃、金やプラチナより高かったアルミニウムの器で食事をしています。

今から考えるとちょっと滑稽ですよね。

金属の価値なんてバカバカしいものなんですけど。

 

また、関税自主権のないのも不平等とのそしりをまぬかれませんが、

その当時の江戸にはその観念が存在しなかったので仕方のないことだったかもしれません。

けれども、だからと言ってタダ無課税で日本に貿易されていたかというとそうではなくて、

食料品や建材などでは5%ですけど、そのほかのものは20%の関税、酒に関しては35%の関税をかけることを、条約の中できちんと取り決めています。

 

もう一つ、不平等とされるのは、日本がもしこの日米修好通商条約後に、他の国ともっと有利な条約を結んだ場合、アメリカには無条件で適用される、という特別待遇かな。

なぜ日本がアメリカに好条件でこのような条約を結んだかと言えば、実は、当時、中国はアロー戦争で英国に敗北しており、フランスも利権を求めてアジアに進出していましたから、日本としては、古来から頼みとしていた中国を頼れないわけで、新たな後ろ盾を必要としていたわけです。

日米修好通商条約には、日本が他国とのトラブルになった場合、アメリカが仲裁する、という約束を取り付けた意味も大きかったと思います。

また、日米修好通商条約ではアヘンの取引も禁止されています。

アヘン戦争に続き、アロー戦争でも敗北した中国。

アヘン戦争は、もともと英国が中国に密かにアヘンを売り付け、莫大な富を稼いだことから勃発した戦争ですから、日本は絶対二の轍を踏みたくなかったはずです。

 

井伊直弼は、この条約を締結したことで、様々な手違いもあり、国内の反発を受け、暗殺される羽目になってしまいますけど、この後、明治政府が不平等を是正するために奔走する羽目になるとはいえ、その過程で、日本の近代国家としての歩みがあるわけで、私としては、ただの不平等条約として考えたくはないんですね。

がんばったと思うんだけどなァ、大砲撃つぞーって脅してくる相手に空手でよく交渉したなって。

 

ハリスの日本滞在記は面白いです。

彼は最初日本人をあなどっていたと思いますが、滞在するにつれ、その質素ながら清潔な生活習慣に好意を抱いていきます。

すでに日本料理を褒めてたり。かなり気に入ってた模様。

日本人のことを、「喜望峰の東で最も優秀」とか言ってみたり。

でも、何をやらせても間違いのない国民性なのに、混浴の習慣だけは受け入れられないと困惑します(笑)。

そんなことをして、男女の間違いはないのか、と尋ねると、ある、と返答があり、結婚の時、相手が処女じゃなかったら男はどうするんだ、と真面目に憂いています。

聞かれた役人は別にどうもしないよって風流だったみたいで、ハリスはますます頭を抱えます(笑)。

で、その当時の日本女性の社会的地位はアジアの他のどの国より高い、と評していますね。

 

その当時の日本人の暮らしぶりを見て、ハリスは自国と比べ、ある意味ここはパラダイスだと。

身分の差もあまりなく、武士も庶民も質素に努め、誰か一人だけ富貴に浸ることはない。

しかも、素朴で質素なことを保つために持てる技術を抑制する傾向があると。

他のどの国に比べても安全で命を脅かされることもなく、質素で満足している日本人を見ていると、ハリス自身、日本を開国するために来ているのに、日本に外国の影響をもちこむことが、日本人にとっての幸福になるか悩んでいます。

そして、蒸気機関によって一変した世界の技術を得て、日本人が持てる力を解放されたら、ほどなくして、西欧諸国に肩を並べることを予見しています。

ハリスは、世界の情勢から遅かれ早かれ日本が開国しなくてはならなくなることがわかっていました。

そんな彼が、日本と結んだ日米修好通商条約が一見不平等に見えようとも、彼の忖度が潜んでいるものと思うのです。