まだファミコンが出たばかりだった、俺が小学生時代の話。
近所に大学生の兄ちゃんがいた。地元の国立大に行ってて、
穏やかな人だったから、うちの母ちゃんが家庭教師を
お願いしたのがきっかけで仲良くなった。
そのうち、その兄ちゃんがファミコンを持ってるってことを知って、
俺を含めて近所のガキ二、三人で、その人の家によく遊びに
行くようになった。
まあ、今思うとガキなんか邪魔だったかもしれないけど、
嫌な顔ひとつせずに、俺たちと一緒にゲームに興じてくれるような
人だった。
そんな感じで半年くらいたった頃から、兄ちゃんの様子がおかしくなった。
遊びに行ってもずっと電話をしてて、俺たちに構ってくれなくなった。
おかしいっていうのは、電話を掛けてるんだけど、兄ちゃんが一言も
喋らなかったこと。ダイヤルを回して、受話器を耳に当てたまま一言も
喋らない。しばらくすると受話器を置き、もう一度ダイヤルを回す。
ずっとその繰り返し。
そんな状態がしばらく続き、俺たちもだんだん兄ちゃんが怖くなってきたし、
友達もファミコンを買ったことでそっちの家に入り浸り、兄ちゃんの家には
行かなくなった。同時期、兄ちゃんの家庭教師も終わった。
向こうの方から「大学が忙しい」って連絡が来たって母ちゃんが言ってたし、
俺は不思議にも思わなかった。そうして数ヶ月が経った。ある日、テレビに
兄ちゃんが出てた。女の人を殺しちゃったんだってさ。
後日談
後で知ったんだけど、兄ちゃんは当時付き合ってた女の人に振られてから
嫌がらせや、付きまといをしており、最終的にその人を殺してしまったそうだ。
もう分かると思うけど、俺たちの前でしてた電話は相手の女性への
無言電話だった。今だったらストーカーだって騒ぎになってたんだろうけどね。