コントラバス演奏は楽器の背後から手を前に回して、身体がある方向に向かって荷重して楽器にエネルギーを与える。


この少し不自然な体勢は、力の入れ方に問題を生じさせる。


一見すると腕を落として身体に寄せると力が楽器に乗るように感じられる。


しかしこれは楽器を背後と正面から挟みつけて動きを殺している。羽交い締めに近い力の様相である。


私は前腕のなかに支点をもったテコの動きを取り入れることで、大きな力を楽器に載せることが出来ると考えている。


この場合、作用点は支点から遠いほうが力が大きくなるので、弓の先端に行くに従い力の効率が良くなる。力点となる肘の動きは(シーソーのように)作用点の動きと反対になる。


この前腕に支点を持つ動きは、ラッパーが「チェケラッチョ」というときに動かす、腕の動きに似ていると思う。手を振り下ろすときに肘が(おそらく肩も)上がる。


この動きは軽快でありながら加速度のある仕事量を生み出す。

また支点が前腕のなかにあり、柔軟に移動するところが面白い。弦を身体と弓の間に縛り付けることなく、支点がフワフワと浮いている。しかしながら肘が上がるほど荷重はなされていく。度が過ぎると支点がバランスをとって勝手に手先へ向かう。


なかなかこの前腕に支点を持つテコ運動を説明しにくいのだが、「チェケラッチョ」はひとつのヒントになるのではないだろうか?