今年も宮崎国際音楽祭でズーカーマン氏の演奏を同じ舞台上で見て聴くことができた。

毎年思わされることだが、その右手が作り出す濃密な音に圧倒される。彼の氏であるアイザック・スターンの生演奏も芸大の公開レッスンで聴いたが、やはり緻密な弓使いから現れる音は圧倒的だった。

これは、動きの無駄を極力排除し、効率的に楽器のポテンシャルを引き出していることに由来している。見た目の想像を超える音がする。聖人が指先で巨岩を崩すかのような光景だ。

弓の量を少なくして弾くことは力のバランスが難しくなる。しかしトライしていくと、濃厚な音が現れることを感じることは出来る。研究していきたいとおもう。

また、ズーカーマン氏はリズムに対してもシビアである。もちろんアゴーギグ等の揺れは絶妙に施しているが、理由なきリズムの乱れに敏感であった。これは確固たるリズム形成の上でなければ精緻なボウイングの分割を施すことは不可能であることを示唆していると考える。


練習時の会話も、一歩間違うと批判になりそうなところではあったが、ユーモアある話をしていた。

練習も要所を押さえるだけで、あとは表情に合わせるだけで進行していくので、あっさりと終わる。ここでもやはり密度の濃さを感じることができる。

濃い密度は距離と時間を節約し重さを感じることができる。