モーニング娘。の50枚目シングル「One Two Three」以降のシングル曲には歌詞を矢継ぎ早に歌っていくセクションが見られる。

これらは歌詞がよく聞き取れて勢いもあり、印象的に感じ取れる。



ここには間宮道芳著「現代音楽の冒険」で触れている

日本語が聞き取りやすいリズム

が応用されているように感じる。



そのシステムはいたって簡単で、長短リズムの繰り返しに対しては無造作に日本語を組み込んでも聞き取りやすいということである。

日本の音頭や南京たますだれ等に現れる、チャンカチャンカ…というリズムである。

面白いのは、日本語がアクセント言語でないので、長短どちらから単語を始めても聴取に問題がないという点である。

モーニング娘。の最近のシングルでは、16ビートを2:1で割って続けていく形を主体にしてリズミカルに歌詞を連呼していく。

「One Two Three」では、拍を乱さない程度のリズムであるが、その後は2:1の連続など様々なパターンが現れる。

「ワクテカ…」では「ここから始まるのさ」が1:2の連続である。実は「LOVEマシーン」のイントロにも現れるリズムなので珍しいものではないが、日本語が乗ると聞き取りやすいので面白い。

「Help me !!」では後半はほとんど1:2が支配している。地名を連呼する場面はこのパターンからは少し離れている。

「ブレインストーミング」では何度も現れ、しかも最初と最後に現れるフレーズがこのリズムである。

「君さえ居れば何も要らない」では最後のフレーズが2:1:3:2で4音節でちょうど2拍分となり、「長短長短」と感じ取れるので、単純なリズムよりも日本語のメッセージが伝わりやすくなっているだろう。

ただし、これらのリズムはポリリズム的に拍からズレてアクセントがくるので、適当に歌うと滑ったり、重くなったりする。

16ビートでカッチリはめこんでこそカッコイイので、安易に曲に入れることはできない。

ミチシゲイレブンはこういうリズムを多用した楽曲をこなすことが指命でもあるのだろう。50枚目以前との違いを感じる。



テレビ放映された、ひな祭りイベントで初披露された「君さえ居れば何も要らない」のサビ部分で、道重さゆみは長短リズムを歌っていながらも歌詞のもつ切ない表情を、リズムのノリから離れてゆるやかに演じていたのが印象的だった。楽曲にレイヤーのかかった表現となっていたと思う。鞘師もコメントしていたが、道重さゆみは決して歌ヘタではない。