尾形回帰 ROCK AND ROLL LEADER !!!!!!! -10ページ目

洗濯機狂騒曲 〜日々の徒然〜

今年の六月に引越した直後、
ここ数年、使っていた洗濯機が壊れた。

どんな風に壊れたか説明すると、
普通に「洗い」はできるのだが、
「すすぎ」に入り、
脱水の段階になると洗濯機から「ピィィーッ!!」と音を発して動きが止まってしまう。

電源を入れ直して何度、挑戦しても同じ現象が起こる。

どうやら排水が上手く出来ないようだ。

排水する部分に何かが詰まっているのか?
思い切って洗濯機を裏返してみるも、
素人には何もわからないし、わかるはずがない。


あれ?待てよ…。心当たりが少しある…。
もしかして、こ、これが原因か…?






この時の砂だらけの衣装を洗濯したからか?!
排水する部分に大量の砂が詰まったに違いない。。

この話を大阪のバンドのRhycol.のキムにすると…
「尾形さん、砂はヤバいっすよ!砂はマジで詰まるんですよ!
俺も中学の時に砂だらけの野球のユニフォームを洗ってオカンにメチャメチャ怒られましたもん。
砂はヤバいっすよ!原因は絶対に砂っす!!」

キムは凄い剣幕で独自の「砂詰まる理論」を展開した。
キムのこのテンション感。
これは間違いなく砂が原因だろうと俺も結論付けた。

く、くそ~っ!!
こんな素晴らしいPVが出来たのにこんなオチが付くなんて!!
悔しい!!

それからというもの引越しの直後ということもあり、
これ以上の出費を増やす訳にもいかず洗濯機を買うのを後回しにして(現実逃避もあった)、
コインランドリーに通う生活をここ二ヶ月続けていた。


ベランダにはひっくり返った洗濯機が放置されてままである。



そしてつい先日、
さすがにコインランドリーに通い続けるのは手間もかかるし、
金銭的にも、もったいないということでネットで手頃な洗濯機を探し始めた。

するとどうだ。
すぐにヤフーオークションで素晴らしい洗濯機が出てきた。

二年くらいしか使用していない洗濯機が5000円即決。
しかもうちの近くで直接、引き取りに来てもいいと言うではないか!
これで決まりだ!

俺はすぐに落札し、車で取りにいった。


どうこれ。立派な洗濯機ではないか!!



以前使っていた洗濯機より大きく、6Kgサイズ!!
しかも簡易的な乾燥機まで付いてる。最高!!


早速、俺は溜まりに溜まった洗濯物を洗おうと思い、
次々に衣服を放り込みスタートボタンを押した。

勢いよく水が流れ込む。
いいね!最高!

遂に洗濯機が回り始める。
汚れが落ちていく様が手に取るように想像出来る。
いいね!!グレート!!

俺は洗濯機に寄り添ってその一挙一動を楽しんだ。
やっぱり自宅での洗濯は最高だ!!!!
この世界は素晴らしい!!!!
生きてて良かった!!!!

そして「洗い」が終わり、次は「すすぎ」だ。
さあ、君はどんな「すすぎ」を見せてくれるんだい?

勢いよく排水が始まる。排水管に水が流れていく音が聞こえる。
その甘美な音に酔いしれる。


しかしその直後である。
俺は自分の目と耳を疑った。

買ったばかりの洗濯機が「ピィィーッ!!」と音を発して動きが止まった。
液晶部分が赤く点滅している。どことなく悲しそうな点滅。

うん?どゆこと?

この症状は前の洗濯機と全く同じである。

これは夢か現実か??


俺は深呼吸して、冷静さを装い洗濯機を眺めた。

液晶部分に「E-3」と表示されている。
冷静になれ、俺。
俺はそのままネットで洗濯機の「E-3」を検索した。

するとすぐに原因が特定できた。

排水管が洗濯機より高い位置にあると、
上手く排水できずにこのエラーが出ると表示されている。
なるほど!!

確かに排水管が15センチほど高い位置に付いている。



しかし洗濯機の位置をどうやってこの排水管の位置より高い所に持っていくのか??


暫く考えた後、
閃いた俺は「島忠ホームズ」に自転車で向かった。

そして150円で売っているコンクリートブロックを四つ購入した。
むちゃくちゃ重い。
しかしそれどころじゃない。
そのブロックを自転車のカゴにぶっ込む。
ギリギリ入った。
恐らくチャリンコのカゴのキャパシティを超えているのだろう。
いまにもカゴがもぎ取れそうだが、
そんなのもおかまいなしに無我夢中でペダルをこいで帰宅。

洗濯機の足の部分に四つコンクリートブロックを並べ、
ネットに書いている様に排水パイプが洗濯機より低くなる様に設置した。

そして恐る恐る電源を入れ、
洗濯を始める。

「洗い」が終わり問題の「脱水」も難なくクリア!!

びっくりしたよー!驚かせんなよ~、この~!



その次の瞬間。
ふと目に入ったのがベランダに横たわっていた古い洗濯機…。

ま、待てよ…、もしかして…。
この洗濯機が排水しなかった原因は砂なんかじゃなくて、
新しい洗濯機と同じく排水管の位置が原因だったのでは…。


俺は恐る恐る古い洗濯機を起こし、
新しい洗濯機と同様に排水管の位置より高いところに設置。
そして電源を入れておもむろに洗濯を始めてみた。

数ヶ月振りに生命を宿した洗濯機。
勢いよく「洗い」を始めた。
悪くない躍動感。
「まだまだ現役だぜ!!」と言わんばかりだ。

そして「すすぎ」入り、問題の脱水が始まる。
俺は息を飲んで見守る。
なんてことなく脱水完了。

ふ、普通に使える…。

突如、俺を底知れない絶望感と猛烈な筋肉痛が襲う。
一人で洗濯機をあっちこっちに移動させて、
コンクリートブロックを買いに行き、
俺の身体は限界だったのだ。

そのままベッドに倒れ込んで俺は気絶するように深い眠りについた。


一体、何時間眠っていたのだろうか。
西日が部屋に差し込んでいる。

そしてさっきから廃品回収車のアナウンスが響いている。

ベランダに二つ洗濯機が並んでいるのを見つけた廃品回収車が粘り強く。
俺のアパートの前から動かない。


かれこれ20分はいる。


廃品回収車よ、
残念ながら俺はこの洗濯機を棄てるつもりも、売るつもりもない。


たった今、俺はこの二台の洗濯機と共に生きていく覚悟を決めたところだからな…