今日から愛媛県美術館で開催される「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」に行ってきました。この企画展は、産業革命期に英国随一の海港都市として栄えたグラスゴー出身の実業家ウィリアム・バレル卿(1861-1958)1861-1958が収集したバレル・コレクションの日本初公開となる展覧会で、バレル・コレクションの近代絵画の優品73点と、グラスゴーのケルヴィングローヴ美術博物館所蔵の7作品も加わり、スコットランドにある近代の多彩なヨーロッパ絵画を堪能できるまたとない機会となっている。バレル卿は、船舶に設備を据え付ける艤装業や船の売買などによって築いた財によって数千点におよぶ品物を蒐集し、1944年にグラスゴー市に寄贈された「バレル・コレクション」はつい最近まで国外への持ち出しが禁止されていたそうですが、遺産条項の改定と美術館のリニューアル工事に伴い今回の初来日が実現したそうです。

 展示作品はどれも見応えがあって、バレル卿の確かな鑑識眼と、確固とした批評眼がうかがえた。マネの《シャンパングラスのバラ》は、グラスに生けられた2輪のバラを即興的なタッチで瑞々しく描いた作品で、その凛としたたたずまいからは、静物画というより花の肖像画のような華麗さがあった。また、セザンヌがその構築的筆触などの技法を確立する過渡期に描いた静物画と風景画も必見です。他にも、フランソワ・ボンヴァンやアドルフ・エルヴィエ、ジョルジュ・ミシェルなど、初めて見る画家の中にも興味深い作品がたくさんありました。その中でも、クールベの重厚さにロマン派的な要素を混ぜ合わせたようなアドルフ・モンティセリという画家が描く、毛細血管のような枝ぶりの木がとても印象的で、平穏な日常風景の中にどこか不穏な気配のある画風が心に残った。

 美術館のロビーには「選ばれるコレクション」と銘打った出品絵画の人気投票のコーナーもありました。愛媛県美術館に先んじて開催された福岡県立美術館での人気投票のベスト3は、アンリ・ファンタン=ラトゥールの《春の花》、ゴッホの《アレクサンダー・リードの肖像》、アンリ・ル・シダネルの《雪》だったそうです。シダネルは、ひろしま美術館での所蔵作品の人気投票でも《離れ家》が上位に入っていたので、人の気配を暗喩しつつ風景を幻想的に繊細に描く画風が日本人好みなのかもしれない。

 愛媛での展覧会は来年の3月24日までで、その後、東京や静岡、広島にも巡回するそうです。ぜひこの機会に海運王が遺したコレクションを通じて名画を巡る旅を満喫されてはいかがでしょうか。