3月18日は受診日だった。
2019年8月に前立腺摘出術を受けたが、PSAが下がりきらずに上昇したため、2020年2月から10月までホルモン療法を受け、8月から放射線治療を受けた。
それ以降測定感度以下になっていたPSAが、前回受診時測定感度ぎりぎりの0.003で測れるようになってしまい、主治医は僕と目を合わせることもなくたんたんと次回は4カ月後ですと告げた。
僕も何も言うことは出来なかった。
死へのカウントダウンが始まってしまったことに大変なショックを受けたのだった。
以前にも増して何もする気が起きなくなり、その結果走る頻度も減ってしまった。
診察室に呼ばれ、中に入ると、主治医がニコニコしながら「良かったですよ~」と。
「え?」
数値を見ると、0.006未満の測定感度以下という記載。
測定器が変わったとのこと。
前回0.003だったから0.003以上0.006未満ということかと尋ねたけど、機械が変わったから測定感度以下ということ以外は分かりませんと言われた。
PSAはどれくらい上がってるだろう、命はいつまであるのか、いつまで仕事ができるのか、骨転移が始まったら痛いだろうなあ、薬が始まったら体力が落ちて陰毛が抜けて太って女性化乳房になってしまう、などなど、いろいろ心配していたのに、肩透かしを食らった感じで複雑な気持ちだった。
素直に良かったと思うことは出来ず、もやもやしたまま病院を出た。
心配性の僕は、きっと次回受診日に向けて、0.006以上になっていることを想像して不安な気持ちになるに違いない。
でも、その日の夜は久しぶりに1度も目覚めず朝まで眠ることができた。
取りあえずは良かったと思えたんだろう。
おかげで翌日誘われていた さが桜マラソン の打ち上げに参加する気にもなれた。
2019年以降コロナ禍で会えていなかった仲間にも会えて、楽しいひと時を共有することが出来た。