盆休みになると、よく父に海へ連れて行ってもらっていた。
父と行くときは、必ず岩場だった。
砂場は人が多くて、水が濁っている。
奥の方までいくと、いきなり巨大なホールが現れて、足がつかなくなる。
濁っているが故に、本当に見えづらく、気づきにくい。
棚のようになっているところは本当に危ない。
それは本当に一瞬のことなので、身体がびっくりして溺れるということがよくある。
だから砂場のビーチにはあまりなじみがない。
岩場もゴツゴツしていて、足を切ったりしてしまうことはあるけれども、
岩場にはカニや貝がひっついてたり、捕まえたものを岩にひっかけて日干しにしておけるから、実用的で楽しい。何より人がいない!
だから人が降りて行きにくいような岩場の場所を見つけて父と泳いでいた。
父はすぐに見えなくなるところまで行ってしまって、しばらく帰ってこないのがいつものパターンだった。
私はその間一人で泳ぐ。
小さいころから泳いでいて分かったけれど、泳ぐのはひとりが気持ちいい。
友達やいとこを連れて泳いだこともあったけれど
やっぱりいろいろ心配がつきまとって、本当につまらなかった。
ひとりで気ままに泳ぐのが良い。
いっちょまえにフィンとシュノーケルをつけて
奥の方まで行った。
足がつかないところまで行くと、
水は透き通って、魚もいて、何より水が冷たい。
冷蔵庫の冷たさじゃない。冬の雪の寒さじゃない。
波の動きに合わせて、底から“冷たいの”がくる。
身体の芯までキンとくる。
それがなんとも気持ちよかった。
日差しが強く出ていればいるほど、海底まで光が届いて、水中に立体的な波模様が現れる。
そこには自分だけしかいない。独り占めでサイコーの気分だった。
だから水族館なんて好きじゃなかった。
なんでわざわざ車を出してお金を払って水槽を眺めるんだと思った。バカかと思った。
家に金魚と出目金がいるじゃんと思っていた。
一度おじいちゃんとおばあちゃんにイルカショーを観に連れて行ってもらったことがあるけど、
私はひねくれたかわいくない子どもだっったから
「イルカに触ってみたい人ー!ハーイ!」
という催しの時に、私が手を挙げることを頑なに拒否して
おじいちゃんおばあちゃんには嫌な思いをさせたことを覚えている。
たぶん、今でもいやだ。
床に寝かせられたイルカがまず気持ち悪い。
今は海に泳ぎに行かなくなってしまった。
行きたいなぁと思いながらも、行かなくなった。
田舎の数少ない良いところ、海があるところ。
身体の傷も治るし、気持ちもいいし、すごく調子が上がるから。
タダだし、最高の病院だと思う。
ただし、安全第一でね。