真冬のプールみたいな色の空だった。
今夜は雪が降るかもしれない、白い息をひとつ吐いて俺はチャンミンの家へ急いだ。
今日は、特別に無理を言って休暇を貰った。
こんなに簡単に休暇を取れるなら、今までだって本当は簡単にチャンミンに
会いにいけるはずだった。
なのに、俺はそれをしなかった。
それは、中途半端な自分が嫌だったから。
軍の仕事も、お前とのことも、これからの俺たちのことも。
散々抱いて、泣かせて、何をいまさらとは思うけど
今度チャンミンに会うときはもっとちゃんとした気持ちで、向き合いたいと思ってた。
でも、ちゃんとした気持ちって何だろう。
好きなら全てが許されるわけじゃないことぐらい分かってて、
自分の置かれてる立場も充分すぎるほど分かっていて。
それでも好きな気持ちに変わりはなくて
時々、嫌になる。
いくら軍隊で表彰されても、本当の俺なんてこんなもんで
好きなやつに迷いなく思いを伝えきれない俺は意気地なしで
本当に大事なものって、お前なのか、俺自身なのか、それとも仕事なのかも
正直、今でも決められない。
ただ間違いなく、そのどれひとつが欠けても俺の人生は成立しなくて
全部を手に入れたいと思う俺は卑怯者なのかもしれない。
これが俺の本心。
本当の俺。
ちゃんと、とか
真正面から、とか
いかにもなセリフを考えながら、卑怯な俺は
急かすように何度もインターホンのボタンを寒さのせいにした震える指で押しながら
ドアが開いて、チャンミンの顔を見た途端何も考えることはやめて
結局、ベッドになだれ込んでまた1日中抱き合った。
何度も何度もチャンミンの奥深くに突き刺して揺らす。
さざ波みたいにひいては寄せる快楽の海に溺れそうになりながら絡みあい、重なりあった。
もしかたら、俺はもう溺れてるのかもしれない。
そうだとしたら、もう二度と抜け出せないような気にさえなる。
時折強い快感に震えるチャンミンの弓なりにしなる綺麗な背中のくぼみに唇を這わせると
まるで猫のように気持ちよさそうに天井を見上げるその儚さに息を呑んだ。
このまま消えてしまうんじゃないか、そんな恐怖をどこかで抱えながら
その儚さにどうしようもなく惹かれている。
多分、これは初めてチャンミンにあった日からずっと続いている。
初めて会ったときから思っていた。
チャンミンは、無色透明だと思う。
光の加減で見えたり見えなかったりするシャボン玉のように。
今、俺の目の前にいるお前と
明日のお前はきっと同じようで同じじゃないと思うんだ。
だから俺はこんなにもチャンミンに執着してる。
お前はいつも不自由さの中に自由を隠し持っているみたいに。
儚くて、消えてしまいそうなくせに
しなやかで、強い。
そして、俺はそんなお前に時々嫉妬する。
この世の中で俺が嫉妬する相手はチャンミンぐらいだと思う。
そのしなやかに反る綺麗な背中に俺は小さく歯を立て強く吸い付いた。
「いたっ・・・!」
チャンミンが小さくそう言った。
「俺にも。」
同じように俺にも残してもらう痕。
そう、痛いんだ。
お前も俺も、痛くてどうしようもないのに惹かれあってる。
この赤い痕はいつか消えてしまうだろう。
これが瘡蓋になって、いつか傷跡として身体に残ればいいのに。
こんな趣味の悪い独占欲が俺をかき乱してることを
お前には知られたくない。
でも、やっぱり知って欲しいかもしれない。
こんな俺でもチャンミンは愛してくれるのだろうか。
そんなことを考えながら、ズルい俺はお前を抱いているけれど
本当は俺のほうが抱かれてるのかもしれない、何となくそう思った。
部屋の隅で煌々と光るテレビから
今夜は大雪になるでしょう、と聞こえた。
帰れるかな・・・
帰りたくないな。
そう、やっぱり俺はお前といたいんだ。