「お前ってさ、何で黙って抱かれるの?」
汗ばむ身体をあなたは床に落ちたタオルで乱暴に拭った。
髪の毛から背中へ伝う汗が痩せてシャープになった身体に一粒、
ベッドランプに照らされて小さなダイヤのように光った。
あの人が僕を乱暴に抱いたあとにそう聞いた。
体の節々が痛みを訴えてる、起き上がるのにも苦労するぐらい。
それなのに、僕を残して1人部屋を出て行く。
自分から質問しといてその答えを聞かずに。
でも生憎僕は
その答えにまだ確信が持てずにいる。
自分でも不思議だった。
僕は何故、抱かれるのだろう。
それも、ひどく乱暴に。
閉まる扉を確認してから僕は静かに起き上がった。
何も身に着けていない自分の格好を惨めだと恥じながら、
それを払拭するように気丈に振舞う。
誰も見ていないのに。
乱れたシーツや
行為のあとのあの篭った空気
転がったままのペットボトル
立ち上がったら太ももに流れ落ちてくる冷たい感触にはいつまでたっても慣れない。
それらを一つ一つ片付けながら
僕はシャツを羽織って、シャワーへ向かう。
水からお湯へ変わるのをじっと待ちながら
あなたに聞かれたことの答えを考える。
抱かれるのは、嫌じゃない。
そう、思う。
気持ちいい。
そして、なにより勘違いしてしまう。
愛されているんじゃないか、って。
でもそのあとに込み上げる虚しさには、どうしても慣れない。
なのにどうして僕は抱かれるのだろう。
結局、答えは出ないまま
僕は腹の奥深くにある、あなたに吐かれた熱を搔き出す。
その一瞬でまた僕の身体は熱く疼くのに。
その瞬間が、一番虚しい。
シャワーが勢いよくそれを排水溝へ吸い込んでいく。
それを最後まで見届けて、ようやく僕は息が出来る気がした。
そして足音を立てずに近づいたリビングでは、かすかにコーヒーの香りが漂っていた。
昨晩の僕との情事はすっかりなかったかのような雰囲気に
胸がチクリと痛くなる。
僕はわざと勢いよくドアを開けた。
ほんの少しの反抗心が僕にそうさせる。
「何だよ、静かにしろよ。」
その音に驚いた瞬間、僕の方を振り返り
それだけ言うとまたすぐにテレビに視線を戻す。
うるさいのはいつも自分のくせに。
そう思うけど言い返したことは、ない。
反抗心はすぐさま項垂れて、小さな後悔へ変わる。
わずかに開けた窓の隙間から吹き込む風が湿気を帯びて部屋を通り抜ける。
肌に張り付くような不快感は、この風のせいなのかあなたのせいなのか。
今日は雨が降るのだろう。
雨雲らしきものが見えた。
今にも降りそうな空。
その時テレビのニュースで「大雨注意」と聞こえた。
僕は、何のためにここに居るのか
時々分からなくなる。
自分のために居るのか
あなたのために居るのか
分からなくなるんだ。
ユノ。
小さくその名を呼んでみても、あなたにはひとつも聞こえていない様だった。
雨が降り出した。
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ご無沙汰しております。
久しぶりの更新です。
少し違う視点から、二人を書いてみたくなりました。着地点は不明。
あまり長くならない程度に書き上げたいと思います。
お付き合いくださると嬉しいです。
今日からアリーナ&ドームツアーのエントリーが開始ですね。
無事に当選しますように。