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Born to Run

人類は走るために進化してきたらしい。

次なる目的地はA4 すばしり、須走インターチェンジの近くなのかな?などと考えながら山中湖村を後にする、かなり長い間平坦に近い登り基調の舗装路を走る。特に急な上り坂は無かったが足はもう6時間前から痛い。

富士山をモチーフにしているのか白と青にLEDライトで装飾されている派手な歩道橋を渡るとA4 すばしりだった。


真夜中なのに応援で迎えられる。エイドのトレーにたくさん並べられたチップスターがあった。チップスター大好きな自分には夢のような光景、スタッフさんと話ながら5分ほどお茶とチップスターを食い続ける。多分売られている筒状のもの1本分位は食べたと思う。先に進むと こあしす山民会の人達がプライベートサポートとしてエイドを出していた。あげはさんが居たので挨拶、レモンを戴きながらあうとさいどさんも1時間ほど後に続いていると聞いて安心した。スタート前にお腹を壊したと聞いていたので走れているのかな?と心配だったけどさすが鉄人…。お礼を言いながらエイドの奥へ進む奥にはキノコ汁とチョコバナナを出しているエイドがあったのでキノコ汁を二杯戴いてエイドを出た。長い間ゆっくりしてしまったので体が冷えて足の痛みが大きくなる。

次のエイドはA5 富士山太郎坊、すばしりを出てからずっと上り坂のアスファルト道、どこまでも続くように感じられる。早歩きで4kmほど進んで左に折れた。どうやらこの中は普段立ち入ることのできない自衛隊演習場の中のようで、細かい火山岩の道が延々と続いた。スタート直前に砂防止のためにスパッツ買っといて良かったと思いながら歩く。星空が素晴らしくて上を見ながら進んだ。


丘の上からスタッフの元気な歓声が聞こえてきてエイドが近づいていることがわかる、砂利に足を取られる進みにくい坂道だったが何とか上りきってA5 富士山太郎坊 に着いた。エイドでは六花さんも手伝いをしてくださっていて、配られるソバは美味しかった。お代わりしてもいいか尋ねると人数分しかないからゴメンとすまなそうに謝られる。

こちらこそ申し訳ないと謝り、水を戴いて6km先にあるはずのA6 水ヶ塚公園を目指す。
砂利道を登った分と同じくらい舗装路を下る、足の痛みはまだ我慢できるものなので堪えながら走る。少し広目のアスファルト道に出たらまた延々と上る、道路にパイロンが並べられており、このレースのためにこれを誰かが並べたのかなぁ、と考えながら進む。

道が単調なので眠気を感じるが前を歩く人も蛇行してパイロンにぶつかったり逆にある側溝に落ちそうになったり、私より辛そうに見える。声をかけると大丈夫です、と小さな声で返ってくる。延々続いた舗装路の先に明るくなっている場所が見えて、そこから引き返してくる選手も見える。

だんだん空が明るくなってくる朝の4時近くにA6 水ヶ塚についた。たくさんのスタッフの方々が出迎えてくれて食事を勧められる。水餃子うどんを二杯、カツサンドを一つ戴く。両方ともすごく美味しくてお話ししたりしながら食べているうちに朝の富士山が目の前に現れた。ああ、もう朝かと思いながら次を目指す。

A7 こどもの国 このレースの半分辺り、同時に開催されるSTY(Shizuoka to Yamanashi)のスタート地点でもあり、デポしたドロップバックを受け取れる地点でもある。A6~A7間は9kmで大きな上りもない、普段の足なら気持ちよく走れるトレイルだけど両足太股に激しい痛みがあり下り坂で踏ん張る力を無くしている。

イエティという冬になるとスキー場になるらしい急斜面を降りるが痛くてとても走れない。

ロキソニン服用を考えたが鏑木さんが言っていた「楽しむ勇気」を思い出す。村上春樹さんの著書に載っていた言葉「Pain is inevitable.Suffering is optional.」を思い出す。Born to Run の中でアン・トレイソンは「痛みと友達になる」と言っていた。毎週通っているヨガの先生は痛みは内観への手掛かりだと言っていた。

薬で和らげるのはやめようと思った。眠気や疲れ、苛立ちや焦りも楽しんで苦しみと捉えず、どんな結果になっても今の自分を感じるために参加してるんだ。

尊敬する人たちを思いだして、開き直ると少しだけ楽になった、夜を徹して参加者を誘導してくれている山中のスタッフさんに「おはようございます」と挨拶をする。「ご苦労様です」と走り去ろうとすると、「この先に熊が出たらしいので注意してください。」……とんでもないことをさらっと言われた「熊ですかー!?今日ですか?」

何度もしたやり取りなのか、なれた感じで「はい、でももう大丈夫だと思いますよ。」と言ってくれる。

先日上野動物園で見たヒグマは絶望的なデカさだったけど、ツキノワグマの方なら何とかなるかもしれない…持っている携行食はハニースティーガーだから熊にあったら上げれば良いかなぁ、熊=ハチミツ好きは合ってるのかな?あれはプーさんだけ?色々考えながら取り敢えず熊鈴の活躍を願いつつノロノロ走った。

幸いにして熊には会わずにこどもの国へ向かう林道に出る。こどもの国から出てきて次を目指すランナーとすれ違うので応援しながら走ると前からイッシーさんの姿が。

A1の時点で前を走っていたし、その後も会うことはなかったので、もっと先にいると思っていた。

挨拶と少しだけ話ながらすれ違った、A7で1時間ほど休憩していたらしい。

私のペースは下りも緩やかな上りもキロ7分~8分ほどのスローペース、急な下りと急な登りは走れない。

すれ違う選手たちと挨拶を交わしながら緩い下り坂の砂利道を抜けると、こどもの国の入口らしきところに着く、大きな施設なんだろうなということは解るんだけどどの辺がこどもなのかは一見してもわからない。


入口からかなり敷地内を走ってエイドとなっている場所に到着。ブルーシートが敷かれた上では寝ている選手がたくさん。私は眠くはないし休憩が必要なほど疲れてもいなかったので、預けたドロップバックを受け取って後半への支度をする。

着替えをする予定SKINSのロングスリーブを準備してあったけど、今の感覚が変わって窮屈になったら嫌だなと思い面倒なのも手伝って着替えるのはやめる。ライト類も替える必要はなさそうだ、ジェル系の補給もボトルに一本半とカフェイン入りカーボショッツ、ハニースティーガー(チョコ味)、ベスパプロが入っているはずだから追加する必要はない。

結局トレランポールを受け取って、ドロップバックに入れておいたOS-1ゼリーを飲み干してドロップバックは返却。

エイドに並んでいる食料を一通り食べる。ひらら?という米粉を使った麺の食べ物を戴いて、何かのコンクールで優秀作となったらしいおにぎりを食べ、隣にあった緑茶を戴く。眠気対策のために一週間前からカフェイン抜きの生活をしていて、このレースでも日付が変わって辛くなるまではコーラも飲まないことにしていたので、これが久しぶりのカフェイン摂取となった。

お茶を頼むとお湯を淹れる温度のところからきちんとやってくれて、有り難く頂戴するとびっくりするくらい美味しい。もう一杯を戴いて気分がスッキリした感じになる。

購入以来初めてトレランポールを両手で持って、どういう風に使えば良いのかなぁ?と考えながら 次を目指す事にする。

見よう見まねで周りの人のように地面を突いて進むと足がすごく楽に感じられる、昔の武士のように足と同じ手にもったポールを出したり、両手のポールを一度についたり、ノルディックウォークのように足と逆のポールをついたりしてみる。

どうやら最後に試したノルディックウォーク方式が私には一番しっくりきて、どれ程の効果があるか半信半疑で使ってみたトレランポールだったけど足への負担が随分減ってさっきまでとは違うペースで走れる、A7~A8は25kmほどあるが高低差表の感じだとほぼ平坦な林道が続くイメージ、この調子で走れれば楽にたどり着けそうだなぁと安心して走る。

道中何人かの人と話した、過去に出たレースの話、これから先にある天子山地の大変さ、待っていてくれる家族や仲間の話。年齢もバラバラで、足の痛みや眠さに耐えながら進んでいて本当に苦しそうだけど精一杯成し遂げようとしている表情が清々しく見えた。

私は普段通っているジムで上半身の筋トレも多くやっている、お陰でトレランポールを力強く使えて今まで出場してきたレースでは重りでしかなかった上半身の筋肉が初めて役に立って楽しく進めた。

走りやすい林道を10kmちょっと進むと水だけ戴くことができるエイド、WA 北山 に到着。仮設トイレと大量に用意されたミネラルウォーターの前で座って休んでいる人がたくさんいた。


私は足は痛むがそれほど疲れてるわけではないので、座ったりはせず水を貰ってエイドの方と少しお話しする。これからSTYのスタートを控えているので準備に忙しそうだ った。

ボトルに給水してあと10kmほど先にあるはずのA8 西富士中学校 を目指してノロノロ走る。短い下り階段があり、すぐ見える階段を上って立っている鉄塔を迂回しまたしばらく続くあぜみちのようなトレイルを走る、このA7~A8の区間は送電線を管理するための道のようで幾つもの鉄塔を同じようにやり過ごす。下り階段は痛みのため走れなくて歩いて下り、上り階段は急なので歩いて上る。結局走れるのはフラットに近い道だけだったが、周りの人たちも大差ない様で、誰にも追い付かれることはなかった。


何回も同じパターンで鉄塔をやり過ごした、最近では叩かれることの多い電力会社の人の苦労を考えたりしながら走ると、やっと繰り返しが終わったようで、誘導スタッフさんに挨拶しながら後ろを振り返ると富士山が見えた。


ここからストック&熊鈴禁止区間ですと言うスタッフさんの指示通りストックを畳んで、熊鈴を黙らせる。次のエイドまでは4kmを切ったようで、あと少しだと言う思いと、しばらくストックを使って足の負担を減らしていたからか、ストックが無くても意外なほど走れた。


応援の方々に会い、エイドが近づいている喜びで元気に挨拶しながらA8 西富士中学校 到着。ここからUTMF最大の難所を迎えるとあって、西富士中学校で休憩していく選手が多い、私もマッサージが受けられることを教えてもらい促されたが、「くすぐったいの苦手なんで~」とお断りをしてエイドにある食べ物を食べまくった。

富士宮焼きそばはチャレンジ富士五湖のゴールでも食べたことがあって、B級グルメグランプリを取ったと聞いてたけどそんなに美味しいと言う印象はなかった。大事な炭水化物と思って1パックに手をつけると、冷めているのに想像以上に美味しくて、結局3パック戴いた。これから難所なので腹一杯にしようと思い、スタッフをしてくれている方とお話ししながら、おしるこやフルーツをたくさん食べ、おつまみに出てくるようなスモークチーズを3つ補給食として頂戴して明るいうちに登っておきたいので、座ったりする休憩はせず、天子山地に向かうことにした。

~もうすこしつづく~