鹿渡館の寝床では深い眠りが出来て自然と目が覚めたのが朝の5時頃、5~6時間は熟睡できた。
足の痛みは相変わらずだったが、足の裏の腫れは幾分引いていてすっかり暖かくなってしまった「冷えピタ」を剥がして寝床を出る。
寝間着として用意したジャージのまま食事のできる部屋へ行くと昨日一緒に夕食を共にした方々が揃っていた。申し合わせたわけでもないが皆様同じような時間に目が覚めたようで、園山さん、中村さん、中川さん、楽松師匠と挨拶を交わす。小野さんも起きてきていたが次の日の明るい時間にゴールするとのことで、朝ごはんを食べたらまた寝ると言っていた。
川の道レコードホルダーで今回は仕事の都合で後半「小諸~新潟」までのハーフに出ている藤原さんもお風呂から上がってご飯に来て、朝からスタッフの皆様も交え元気に話をする。
賑やかな食事を終え昨日のうちに今日持っていくものの仕度はしてあったのでゆっくりと着替える。スタッフの皆様に御礼を言って残すところ120kmに迫った日本海を目指す。
外に出ると5月とは思えないほどひんやりしている、中川さん、園山さん、中村さんはもう先に出発しているようで、お世話になった鹿渡館をでてすぐ横を見るとニホンカモシカが歩いていたので写真に収める。しばらく行くと後半ハーフに出場している知り合いの千木良さんが鹿渡館に向けて走ってくるので挨拶とお互いの健闘を祈りつつ先に進む。
所々残雪の残る新潟の豪雪地帯をゆるゆると走る、足の裏がズキズキと痛む、たくさん休めたのでまだ眠気は感じない。最初に教わった「走れるうちに歩く」を効果的に実践していたので走るのに必要な筋肉にダメージは殆ど無くどこにも筋肉痛らしい痛みは感じなかった。昨日までと同じくゆっくり走り、時々歩いて初めて訪れる場所をキョロキョロと見て回った。豪雪地帯らしく信号機や町並みにも雪対策の工夫がされていて、大きな除雪機も至る所に目に付く。
たくさん休んだはずなのにぼーっと走っていると眠気が出てくる。鹿渡館を出て26km今日はじめてのチェックポイントで眠気を感じながらチェック表に記録を書いていると後ろから調子の良いピッチで走ってくる藤原さんの姿が見えた。今朝も少しお話をしていたので挨拶を交わししばらく並走する。
小柄な女性ランナーだが坦々と刻んでゆくピッチはキツくもなく楽すぎもせず、たくさん話をしながら走ったわけではないのに眠気を感じないで不思議なくらい楽しく走れる。走っているフォームを後ろから見ると、足を優しく置くようなミッドフット着地を少し速いピッチで繰り返す走り方で私の走り方の歩幅を狭めてピッチを上げたような感じだった。
このレースでお会いしたランナーは足をあまり上げず地面に擦るように走る方が多くて真似できなかったが、私と似た走り方で走っている藤原さんを参考にしたくて色々聞きながら付いて行かせてもらった。
先を走っていたが、吐き気を感じてペースダウンしている中川さんにも追いつき「藤原さんのペースは凄く走りやすいから付いて行きましょう」と誘って3人で走る。
藤原さんは気持ち悪そうにしている中川さんにガスター10を1錠差し入れ、コンビニがあったら牛乳を飲むと良いと教えてくれた。
「走れない時は足の骨が折れている時だけ、そうでなければ気持ち悪くても、どこか痛くても走れるよ」前日の説明会で館山さんから聞いた、とんでもなく厳しい言葉を優しい口調でにこやかに話す。
しばらく走ったところにあったコンビニでご飯にする、3人でゆっくり座って話しながらデザートまで食べる。後半ショートをトップで走っているとは思えないのんびりとした食事を楽しんだら「食べた後だから」と言うことでいきなり走り出さない。
中川さんも薬が効いてきたようで体調が良くなってきた。3人で走ること約20km川の道名物となっている私設エイド「和田エイド」に到着する。先に付いていた園山さん、中村さんと合流して酒盛りが始まろうとしていた。
残すところ約80km、私は飲むと走れなくなる方なので遠慮してオレンジジュースをいただいた。
ウルトラランナーは酒が好きな人が多い、ほろ酔いの少しの間だけ痛みを抑えることが出来るらしく、痛み止め代わりにビールを飲む人もいる。園山さんと藤原さんは喉の渇きを潤すという名目であっという間に4本目の缶ビールや日本酒を飲んでいた。
私は十分休ませてもらったので先に行くことにしてしばらく飲んでいる藤原さんと園山さんを残して、中川さん、中村さんと先に進んだ。先程まで藤原さんの走り方を見て覚えた事を参考にしながら坦々と走る。
それぞれのペースになり、一人になると集中力が下がってまた眠気が顔を出すがコンビニに寄ってアイスを食べたりしながら気を紛らわし、少しの坂でも早歩き、平坦と下りはゆっくり走ることを繰り返して前へ進んだ。
町並みに立っている建物が大きくなってきて、長岡駅周辺につくと残りは約60km、アスファルトの路面は赤茶けていて関東から離れ、自分の足で走ってきたのにとても遠い所まで来たような感覚になる。長岡駅を過ぎたところのコンビニでまた食事休憩。今朝3人で休んだ食事休憩を思い出しながらゆっくりと休む。反対車線の歩道を川の道ランナーが走って行き、遠くだが手を上げてお互い挨拶をする。休憩をちょうど終えて食べたものを片付けていると飲み会が終わった藤原さんが通り過ぎる。
ゆっくりと再出発してしばらく行くと信号待ちで先に行った藤原さんに追いついて少し話す。
コンビニでしばらく休んだのが良かったのか、良いペースで走れて「お腹が減った」と言っていた藤原さんの姿がいつの間にか後ろに見えなくなっている。
スタート前日の説明会でも話に出てきた評判の悪い20kmあまりの直線道路、国道8号線に出た。自分が進んでいるのかわからなくなって精神的にキツイとの事で、どれほどキツイのか楽しみにしていた。確かに長く続く直線、行けども行けども前には同じような道路が続いているが。横を見れば美しい田園風景が広がっていて事前に聞いていたほどキツくはなかった。
長い直線を経て第 23CP 三条大橋 に辿り着く。長かった川の道もあと40kmで終わる。480kmを走ってきた満身創痍のこの足で残りのフルマラソンの距離を何分で走りきれるかチャレンジをしようと思いSNSにその思いを投稿する。すぐにレスポンスがある応援が嬉しかった。
今日は朝から走り通しで、ゆっくりペースとはいえ疲れも溜まってきている、出来る限りスピードを上げてみると意外にも足はスムーズに動いた。
自分の中ではキロ5分程のペースで走っている感覚だったが、実際はキロ6分出ていなかったかもしれない。残り30kmほどまで走った所で久しぶりに前をゆくランナーが見える、しばらく並走してお話すると今年初参加の杭本さんという方、なんと66歳。これが終わったら2週間後に私も参加する「野辺山ウルトラマラソン」を走るそうで10回完走以上のランナーに与えられるデカフォレストに今年からなったそうで嬉しそうに話してくれた。
500km近く走っているはずなのに良いペースで走っていて、私の親よりも上の年齢なのに「今年初挑戦ですよ」とにこやかに話してくれる。残りを全力で走ろうと思っていることと、次の野辺山での再開を約束して先に行かせてもらう。
途中で身体が斜めになって苦しそうに走っておられる方もいた。みんなそれぞれのペースで全力を尽くしている。
~つづく~



















