数学の論証を言うとどんなイメージを思い浮かべるのでしょうか?標準答えとしてもちろん、その論証によって数学定理ができあがり、永遠の真実を成立させているもの!でも、こういう永遠の真実を支えている論証そのものは、原則として無限にあるはず。つまり、同じ数学命題を証明することには、無数の論法があるはず、という話だ。絶対的に間違いのない数学定理を支える論証そのものの多様性は、もっとも代表的な「√2が無理数であること」へのさまざまな論法によって示されている。すべての論法は読んだことのある本からのものでご了承ください。この命題への証明には少なくとも、三つの論法があります。
論証1
これはもっとも一般的な論法
√2を有理数とする。すると√2 = p/q。pとqも正の整数でq ≠ 0。pとqはこれ以上の約分ができないことにする。
√2 = p/qを両辺二乗して、すると
2 = p2 / q2
2q2 = p2
p2は2の倍数だからその平方根pは必ず偶数である。なんでこの場合ではpが必ず偶数なのかというと、任意の奇数を定義したら次のようになるはず。
2n + 1
という表現を考えましょう。ゼロより大きい任意の正の整数をnに入れてそれに2を掛けると必ず偶数になるのでその積にまた1を足すと奇数になるはず。それを二乗したら
(2n + 1)2
= 4n2 + 4n + 1
この表現からわかるよう、4n2と4nも四の倍数なのでそれぞれも偶数である。そして、二つの偶数を足すとその和はやはり偶数である。さらに偶数の和に1を足すと必ず奇数になる。よって奇数の二乗は必ず、奇数である。
これで
2q2 = p2
という式のなかのpは必ず偶数のことを証明する。
今度k = p / 2と定義する。すると、
2q2 = p2
2q2 = (2k)2
2q2 = 4k2
q2 = 2k2
同じ理屈でq2は2の倍数だから平方根のqも必ず、偶数である。
最初にq / pはこれ以上の約分ができないとしているものの、結論としてqとpも明らかに偶数で2という共通の因数を持っている。矛盾の結果が導き出される。よって√2が必ず無理数であることがこれで証明された。
論証2
個人的にはこの論法が一番好き。
今回も√2を仮に有理数として、√2 = p/q、pとqも正の整数でq ≠ 0としている
やはり式の両辺を二乗して、すると、
2q2 = p2
でも、今回はpとqの素因数分解を考えてみよう。もしpの素因数分解にs個のメンバーがあって、qの素因数分解にt個のメンバーがあるとしたら、
2t + 1 = 2s
という式が成立するはず。でも、ご覧のように式の左側は明らかに奇数ものの、その右側は偶数である。よって、奇数=偶数という矛盾の関係が導き出されるから、√2は必ず無理数である。
ここで少しの補説をさせてもらいたいんですが、素因数分解には一つの興味深い性質を持っているのです。それは、一つの合成数にはただ、一つの素因数分解のパターンしか持っていないこと。たとえば、ある合成数のmとして、それを素因数分解の式に書き換えたら
m = p1p2p3p4… pn
といちおう、定義しましょう。pは素数のことでmという合成数をn個の素数の掛け算に書き換えられるのなら、この書き換え方は唯一のものでなければならないのである。それも簡単に証明されるはず。もし一つの合成数mに対して二つの素因数分解の式が可能になるとしたら、すると、
m = p1p2p3p4… pn
あるいは、
m = r1r2r3r4… rn
も、mの素因数分解となっているはず。それぞれのpとrは素数のこと。
二つの違ってくる素因数分解も合成数mを表しているので、
p1p2p3p4… pn を
r1r2r3r4… rnで割るのも、
r1r2r3r4… rnを
p1p2p3p4… pnで割るのも
必ず1になるはず。でも、それが可能になるのは、二つの素因数分解のメンバーとメンバーの数も同じでなければならないのだ。なぜなら分子と分母もちょうど同じものだったらキャンセルでき、分子と分母をなしているすべての成分も同じ場合では全部約分されて 1 になるからだ。一つだけのメンバーが違ったらpi / riになっちゃうし、たとえメンバーの成分が同じとしても、メンバーの数が違ったら、分子のメンバーが1個だけ余る場合ではpiになっちゃう。逆にもし分子のメンバーが1個だけ足りない場合では1/riになっちゃう。よってこの二つの素因数分解は必ず、同じものでなければならない。
2q2 = p2という式をもう一度考えてみてください
2q2とp2も同じ数値を表しているからその素因数分解は、メンバーの成分かつ、メンバーの数も同じでなければならない。でも、それぞれの素因数分解のメンバーの数を数えると
2t + 1 = 2s
となる。そして、ゼロより大きい整数をtとsにどうやって入れてみても式が満たされえないからこそ、おかしい結果を得たことによってもとの命題(√2が無理数であること)が成立するわけです。
論法3
これは数論らしい論法で一番理解しにくいもの
今回もやはり、√2を仮に有理数として、√2 = a / b、aとbも正の整数でb ≠ 0としている。すると、集合S{k√2 | kとk√2も正の整数}(この表現は、集合Sのメンバーがすべてもk√2のような形を取って変数kも変数kに√2を掛ける積も正の整数と、定義する数学の言語です)は空っぽい集合ではない(というのも、a = b√2は集合Sのメンバー)。だから整列順序プロパティに基づいて集合Sには、一番小さい元素を持っていてこれを、s = t√2と仮に定義する。
すると、s√2 – s = s√2 - t√2 = (s – t) √2。s√2 = 2tだから、かつ、同じく整数、s√2 – s = s√2 - t√2 = (s – t) √2も必ず整数である。さらに、正の数。というのは、s√2 – s = s(√2 – 1)、そして√2 > 1のである。これ(s(√2 – 1)という表現をさす)はsよりも小さい。なぜなら、√2 < 2、だから√2 – 1 < 1(1 + 1 = 2 > √2から,そして、1よりも小さい数を掛けると積はもとの乗数よりも小さくなるわけ) のである。sを集合Sのなかで最小の数値とするという定義と矛盾している。よって、√2は無理数である。
ややこしいこの論証だと思いますが、集合といった面倒くさい数学の言葉を取り除いて書くと次のようになるかもしれない。
まずはやはり、√2を有理数と仮定しててある分数の形を取ることはできる。よって a / bという分数の形を有している。もし、k√2を整数のパターンとしたらこのような形をしている整数たちのなかで一番小さい数値も定義できるはずだろう?これを仮にt√2とする。おもしろいことに、k√2の変数kにそのままt√2を入れ替えたらt√2√2という整数が得られる。(仮に√2を有理数とみなすのでその論理を踏まえていちおうt√2にどんな算術を働きかけても整数が得られるとする)t√2√2からt√2を引くとどうなっているのでしょうか。つまり
t√2√2 - t√2 = ?
という引き算の質問ですね。代数学の演算で計算したら
t√2√2 - t√2
= t√2 (√2 - 1)
じゃあ、t√2 (√2 - 1)は果たして
> t √2 ?
それとも
< t √2 ?
なのでしょうか?
肝要なのは、(√2 - 1)の値です。もしそれは1より小さいのなら
t√2 (√2 - 1) < t √2
前述のように1 + 1 = 2 > √2だから、√2 – 1は必ず < 1。この結果によって次のような矛盾の帰結が得られる。
t√2を最小値とするたびにいつもt√2√2 - t√2 という表現によってt√2 より小さいt√2 (√2 – 1) が得られるということになる。
論法3は、この矛盾の帰結を利用して√2は必ず無理数であるという命題を証明しているわけです。
ご覧のように三つの論法はその細部が違ってくるにもかかわらず、論法の原理は同じです。
背理法の運用
つまり、数学は矛盾と曖昧を嫌っているものの、矛盾への嫌みを利用してて永遠の真実を導出しているのだ。これこそ数学の本質だと言える。問題だらけの矛盾から永遠の真理を手に入れるなんて、皮肉すぎることでもあるし、美しすぎることでもある!
論証1
これはもっとも一般的な論法
√2を有理数とする。すると√2 = p/q。pとqも正の整数でq ≠ 0。pとqはこれ以上の約分ができないことにする。
√2 = p/qを両辺二乗して、すると
2 = p2 / q2
2q2 = p2
p2は2の倍数だからその平方根pは必ず偶数である。なんでこの場合ではpが必ず偶数なのかというと、任意の奇数を定義したら次のようになるはず。
2n + 1
という表現を考えましょう。ゼロより大きい任意の正の整数をnに入れてそれに2を掛けると必ず偶数になるのでその積にまた1を足すと奇数になるはず。それを二乗したら
(2n + 1)2
= 4n2 + 4n + 1
この表現からわかるよう、4n2と4nも四の倍数なのでそれぞれも偶数である。そして、二つの偶数を足すとその和はやはり偶数である。さらに偶数の和に1を足すと必ず奇数になる。よって奇数の二乗は必ず、奇数である。
これで
2q2 = p2
という式のなかのpは必ず偶数のことを証明する。
今度k = p / 2と定義する。すると、
2q2 = p2
2q2 = (2k)2
2q2 = 4k2
q2 = 2k2
同じ理屈でq2は2の倍数だから平方根のqも必ず、偶数である。
最初にq / pはこれ以上の約分ができないとしているものの、結論としてqとpも明らかに偶数で2という共通の因数を持っている。矛盾の結果が導き出される。よって√2が必ず無理数であることがこれで証明された。
論証2
個人的にはこの論法が一番好き。
今回も√2を仮に有理数として、√2 = p/q、pとqも正の整数でq ≠ 0としている
やはり式の両辺を二乗して、すると、
2q2 = p2
でも、今回はpとqの素因数分解を考えてみよう。もしpの素因数分解にs個のメンバーがあって、qの素因数分解にt個のメンバーがあるとしたら、
2t + 1 = 2s
という式が成立するはず。でも、ご覧のように式の左側は明らかに奇数ものの、その右側は偶数である。よって、奇数=偶数という矛盾の関係が導き出されるから、√2は必ず無理数である。
ここで少しの補説をさせてもらいたいんですが、素因数分解には一つの興味深い性質を持っているのです。それは、一つの合成数にはただ、一つの素因数分解のパターンしか持っていないこと。たとえば、ある合成数のmとして、それを素因数分解の式に書き換えたら
m = p1p2p3p4… pn
といちおう、定義しましょう。pは素数のことでmという合成数をn個の素数の掛け算に書き換えられるのなら、この書き換え方は唯一のものでなければならないのである。それも簡単に証明されるはず。もし一つの合成数mに対して二つの素因数分解の式が可能になるとしたら、すると、
m = p1p2p3p4… pn
あるいは、
m = r1r2r3r4… rn
も、mの素因数分解となっているはず。それぞれのpとrは素数のこと。
二つの違ってくる素因数分解も合成数mを表しているので、
p1p2p3p4… pn を
r1r2r3r4… rnで割るのも、
r1r2r3r4… rnを
p1p2p3p4… pnで割るのも
必ず1になるはず。でも、それが可能になるのは、二つの素因数分解のメンバーとメンバーの数も同じでなければならないのだ。なぜなら分子と分母もちょうど同じものだったらキャンセルでき、分子と分母をなしているすべての成分も同じ場合では全部約分されて 1 になるからだ。一つだけのメンバーが違ったらpi / riになっちゃうし、たとえメンバーの成分が同じとしても、メンバーの数が違ったら、分子のメンバーが1個だけ余る場合ではpiになっちゃう。逆にもし分子のメンバーが1個だけ足りない場合では1/riになっちゃう。よってこの二つの素因数分解は必ず、同じものでなければならない。
2q2 = p2という式をもう一度考えてみてください
2q2とp2も同じ数値を表しているからその素因数分解は、メンバーの成分かつ、メンバーの数も同じでなければならない。でも、それぞれの素因数分解のメンバーの数を数えると
2t + 1 = 2s
となる。そして、ゼロより大きい整数をtとsにどうやって入れてみても式が満たされえないからこそ、おかしい結果を得たことによってもとの命題(√2が無理数であること)が成立するわけです。
論法3
これは数論らしい論法で一番理解しにくいもの
今回もやはり、√2を仮に有理数として、√2 = a / b、aとbも正の整数でb ≠ 0としている。すると、集合S{k√2 | kとk√2も正の整数}(この表現は、集合Sのメンバーがすべてもk√2のような形を取って変数kも変数kに√2を掛ける積も正の整数と、定義する数学の言語です)は空っぽい集合ではない(というのも、a = b√2は集合Sのメンバー)。だから整列順序プロパティに基づいて集合Sには、一番小さい元素を持っていてこれを、s = t√2と仮に定義する。
すると、s√2 – s = s√2 - t√2 = (s – t) √2。s√2 = 2tだから、かつ、同じく整数、s√2 – s = s√2 - t√2 = (s – t) √2も必ず整数である。さらに、正の数。というのは、s√2 – s = s(√2 – 1)、そして√2 > 1のである。これ(s(√2 – 1)という表現をさす)はsよりも小さい。なぜなら、√2 < 2、だから√2 – 1 < 1(1 + 1 = 2 > √2から,そして、1よりも小さい数を掛けると積はもとの乗数よりも小さくなるわけ) のである。sを集合Sのなかで最小の数値とするという定義と矛盾している。よって、√2は無理数である。
ややこしいこの論証だと思いますが、集合といった面倒くさい数学の言葉を取り除いて書くと次のようになるかもしれない。
まずはやはり、√2を有理数と仮定しててある分数の形を取ることはできる。よって a / bという分数の形を有している。もし、k√2を整数のパターンとしたらこのような形をしている整数たちのなかで一番小さい数値も定義できるはずだろう?これを仮にt√2とする。おもしろいことに、k√2の変数kにそのままt√2を入れ替えたらt√2√2という整数が得られる。(仮に√2を有理数とみなすのでその論理を踏まえていちおうt√2にどんな算術を働きかけても整数が得られるとする)t√2√2からt√2を引くとどうなっているのでしょうか。つまり
t√2√2 - t√2 = ?
という引き算の質問ですね。代数学の演算で計算したら
t√2√2 - t√2
= t√2 (√2 - 1)
じゃあ、t√2 (√2 - 1)は果たして
> t √2 ?
それとも
< t √2 ?
なのでしょうか?
肝要なのは、(√2 - 1)の値です。もしそれは1より小さいのなら
t√2 (√2 - 1) < t √2
前述のように1 + 1 = 2 > √2だから、√2 – 1は必ず < 1。この結果によって次のような矛盾の帰結が得られる。
t√2を最小値とするたびにいつもt√2√2 - t√2 という表現によってt√2 より小さいt√2 (√2 – 1) が得られるということになる。
論法3は、この矛盾の帰結を利用して√2は必ず無理数であるという命題を証明しているわけです。
ご覧のように三つの論法はその細部が違ってくるにもかかわらず、論法の原理は同じです。
背理法の運用
つまり、数学は矛盾と曖昧を嫌っているものの、矛盾への嫌みを利用してて永遠の真実を導出しているのだ。これこそ数学の本質だと言える。問題だらけの矛盾から永遠の真理を手に入れるなんて、皮肉すぎることでもあるし、美しすぎることでもある!