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公開記事なので記録として





現在の医療を支えているのは、過去に行われてきたさまざまな基礎研究の成果だといえるだろう。


m3.com意識調査で、医師会員1358人に、特に将来の臨床への応用に期待している基礎研究は何かを尋ねたところ、開業医の65.0%、勤務医の61.0%が「iPS細胞/再生医学」と回答した。


理由については「細胞→組織→臓器と再生できれば、夢の医療であることには間違いない」といった声が寄せられた。自由回答をあわせて紹介する。(まとめ:m3.com編集部)




【調査の概要】


調査期間:2024年6月11日-6月17日
対象:m3.com医師会員
回答者総数:勤務医1055人、開業医303人
※統計に基づく世論調査ではありません



Q1. 以下の中で、特に将来の臨床への応用に期待しているものを教えてください。(複数選択)


 医師会員1358人に、特に将来の臨床への応用に期待している基礎研究は何かを複数の選択肢を示したうえで尋ねたところ、開業医(303人)の65.0%、勤務医(1055人)の61.0%が「iPS細胞/再生医学」と回答した。

 開業医では、iPS細胞/再生医学がトップで、次いで「AI(人工知能)」が42.6%、「ゲノム編集/エピゲノム編集」が30.4%、「ナノテク/ドラッグデリバリーシステム」が16.8%と続いた。

 勤務医でも傾向は同じで、iPS細胞/再生医学に続き、AI(人工知能)が46.4%、ゲノム編集/エピゲノム編集が30.5%、ナノテク/ドラッグデリバリーシステムが18.1%となった。








Q2. Q1で選択されたものも含め、将来の臨床への応用に期待している基礎研究分野やテクノロジーと、なぜそれに期待しているのか、その理由について教えてください。(自由回答)



iPS細胞/再生医学は「夢の医療」

iPS細胞/再生医学。細胞→組織→臓器と再生できれば、夢の医療であることには間違いない【内科開業医】



神経再生医療。不可逆的な病態をなんとかしたい【内科勤務医】



組織再生。ゆくゆくは器官の再生も可能になるのではないかと期待している【内科勤務医】



何でも再生できるようになったら、悪い部分を気にせず、摘出できるようになる【耳鼻咽喉科勤務医】



眼疾患は網膜細胞の再生に大変期待している。ドラッグデリバリーシステムは副作用の強い抗がん剤が使えるようになる気がする【内科開業医】



iPS細胞/再生医学による肝硬変、糖尿病などへの応用、AIによる抗がん剤治療方針の決定、AIによる手術ナビゲーション、マイクロバイオームによるがん予防に期待している【消化器科勤務医】


がんを専門にしているので、オートファジーとマイクロバイオームは免疫機能との絡みやがん細胞での代謝変化などとの関係で注目している。ドラッグデリバリーは、リポソーム製剤などで特に代謝経路の変化を起こす薬剤(メトホルミンやスタチンなど)のがん応用に期待している【呼吸器科勤務医】



AIによる情報の集約化で、ビッグデータを扱った研究の発展が予測される。また、再生医療はすでに起きてしまった組織破壊を修復する方法として、ゲノム編集は異常を修復してそれ以上の異常を起こさせない方法として、普及する可能性がある【呼吸器科勤務医】



ゲノム編集/エピゲノム編集で、先天性の遺伝子疾患を発生初期から治療する手法が開発できると思う【内分泌・血液科開業医】



倫理的な課題はあるが、ゲノム編集技術の臨床応用は、基礎研究と臨床の距離を大幅に近づける可能性を秘めているため、期待している【産婦人科勤務医】



AI(人工知能)。画像分野では医師よりも有能になる可能性が高い【消化器科勤務医】



訪問診療で、認知機能が保たれながらもADLが障害された人たちを少なからず診ていると、BMI(ブレイン・マシーン・インターフェース)とAIを組み合わせれば、場合によっては健常者よりもできることが増え、結果的に我々が患者とみなしてきた人を頼る時代が来るのかもしれないという期待がある【内科開業医】



ゲノム編集/エピゲノム編集。遺伝子が原因となる病は多く、ターゲット臓器のみに遺伝子改変や修復を施すことができれば、治療が飛躍的に進歩する疾患が増えるため【内科勤務医】



腫瘍微小環境の研究。がん治療の新しいターゲットとなる可能性があるため。微生物叢はさまざまな自己免疫性疾患や腫瘍性疾患との関わりが報告されている【内科勤務医】



生体パッチの開発。生体パッチができれば血管損傷や胆管損傷に対応できる【消化器科勤務医】



マイクロバイオーム(微生物叢)。微生物の健康への寄与を解明して、病気をもっと自然な形で治すことに期待している【消化器科勤務医】



体内時計/概日リズム。脂肪細胞の分化とサーカディアンリズムについて研究している論文がある。朝と夕のどちらに運動したかで痩せ方が変わるなどと言われるが、サーカディアンリズムの研究はそのメカニズムの解明に繋がるのではないかと思っている【内科勤務医】



娘に麻痺があるのでロボット支援に期待している【腎・泌尿器科勤務医】





Q3. 医学や生命科学の基礎研究について、何かご意見があれば教えてください。(自由回答)



「知的財産が海外に流出しないように早急に対策を」

良い基礎研究の種は日本にも多くありそうだ。商業化、特許を取って世界標準にするルール作りまでもっていく国力や人材が不足していることが問題だと思われる。研究者の周囲をサポートする法律家や起業を手伝う経営の専門家、そして欧米からいちゃもんを付けられた時にも国策として跳ね返すことができる政治家が求められている【外科系勤務医】



遺伝子治療の分野は、日本は諸外国にやや後れを取っている。重点的に育成して行くべき分野ではないかと思う【小児科開業医】



質の高い論文を出して、世界を牽引していってほしいけれど、既に中国の後塵を拝することになっているので、逆転は厳しいかな。国内の争いはやめて、しっかり投資するところには投資してほしいものだ【内科開業医】



自分は臨床医だが、基礎研究に従事しても多額の給料がもらえるシステムにして、知的財産が海外に流出しないように早急に対策するべきだ。ノーベル賞受賞レベルの研究者がこれ以上、海外に移住してしまうのを防ぐべき【耳鼻咽喉科勤務医】



基礎研究、そして教育それ自体の価値と面白さを疎かにされてきたのが我々の世代だった。次か、その次の世代でなんとかその悪習を断ち切りたい【内科開業医】



東北大学のような大規模長期グラントを出せる大学が増えていくと良いと思う。地方大学にもお金がほしい【内科勤務医】



日本の医療界全体の能力の低下が危惧されている昨今だが、基礎研究に従事する若い研究者が増える環境の整備が重要だと考える【循環器科勤務医】



100年後、1000年後を見据えた研究に注力できる体制作りが必要だ【眼科勤務医】



研究費が減らされている現状で、日本から有益な研究成果が出せるのか疑問がある【外科系勤務医】



血清療法による感染症に対する抗体治療は最も熱い分野だ【外科系勤務医】



若手の医師が基礎研究に触れる機会を増やすため、待遇の改善を期待したい【産婦人科勤務医】



基礎研究に回す資金を増やすべきだと思う。大学病院などは研究もしている機関なので、そこで働く医師に対してもう少し給与面で援助してもよいのではないかと思う【産婦人科勤務医】



国も企業ももっと長期的に広い視野に立って、研究費の投下、人員採用を行うことが必要だ【消化器科勤務医】

時間のかかる基礎研究には、国がしっかりと援助すべきだと思う【小児科勤務医】



m3.com 8月24日