…きっと、あの頃の私は知るよしもないだろう。
母と父が亡くなってしまう事を。祖父が可笑しくなってしまう事を。あの子が変わって——いえ、いなくなってしまう事を。
そんな昔の、あの子と私の話。
——約10年前——
「…ちゃん、ゲルダちゃん、起きて。」
何処からか、よく耳にする声が聞こえてくる。
「………んー…どうしたの?テレーザ。」
眠気が飛ばずもそもそと起き上がる。やっぱり昨日寝てないせいかな。
「あのねゲルダちゃん。私、ゲルダちゃんがフルーツ好きだっていうから、お母様に頼んで手伝ってもらってね、アップルパイ焼いてきたの。それでね——」
「食べるっ!!」
テレーザが言い終わらないうちに返事を返す。だって、私の好物は甘い林檎がたくさん入ったアップルパイだもの。
「う、うん。ちょっとまってね、今出すから。」
私の声に驚いたのか、テレーザはビクッと小さく体を跳ねさせ、お茶会の準備を始める(ちょっとモタモタしてるけどね)。
…私達は生まれてからずっと、昔でいう“貴族”のような生活をしてきた。
子どもには充分過ぎる一人部屋、豪華な料理、毎週末には舞踏会。そんな毎日が当たり前な、まさしく豪華絢爛な生活。
でも私には、そんな事興味もなかった。物心ついた頃から親のコネで軍人の教育訓練(だったっけ)を受け、毎日訓練に励んだ。元々私の資質が良かったらしく、あっという間に訓練課程が終わったみたいだけど。私はまだ10だから大人の難しい事分かんないけど、私は普通の大人より実力が遥かに上回っているらしく、それは私も誇りに思っている。大人より強いってすごいし。
「ゲルダちゃん、準備終わったよ。」
テレーザが微笑みながら私を見る。
「うん、じゃあ食べよっ!!」
私はそれにいつものように明るく返事をし、アップルパイを一口。
…やっぱり、テレーザの作るスイーツって最高。甘い林檎がたくさん入ってる、私の予想通りに。
「…どう?林檎多すぎたかな…?」
「ううん、とっても美味しい!!テレーザ、ありがと!!」
大きく口を開きパイを食べる。私は、この時間が一番の楽しみ。
私の家の(他と比べたら)小さなガーデンで、季節の花に囲まれて、テレーザと一緒にお茶を飲み、そしてスイーツを食べる。
私にとってそれはすごく大切で、幸せな時間。
親友のテレーザと一緒に過ごす時間は、とても楽しい。
テレーザの作ったケーキはとても美味しく、今ではもう好物の一つ。魚やお肉もいいけど、果物やケーキは特別に好き。
そんな毎日を過ごすのも束の間、私達は喧嘩をしてしまった。
ゲルダの世界—
…テレーザちゃんが悪いんだもん。テレーザちゃん、私の宝物のクマの置物壊しちゃうから…
私は次のお茶会の日に謝る事にした。私も言い過ぎちゃったし、そこはちゃんと謝らないと。
…でも、テレーザちゃんは来なかった。
何で?何でテレーザちゃんは来ないの?
私は何回も待った。大事な用事があったのかも知れない。
そう信じないといつか友情も私も壊れてしまいそうだったから。
一年待った。二年待った。時々テレーザちゃんのおうちにも行った。でもテレーザちゃんはいなかった。
そんな日々を過ごすうちに5年も過ぎ、私は中学校を卒業する時期へとなっていた。
いつしか、テレーザちゃんの事も忘れてしまっていた。
そして、高校生になった私を待ち構えていたのは、あのテレーザちゃんだった。
テレーザの世界—
ゲルダちゃん、すごく怒ってたなぁ。クマ大好きだったし…
今度のお茶会の日、謝ろう。そうだ、ゲルダちゃんの好きなアップルパイも持っていこう。
そしたらゲルダちゃん、許してくれるかも。早く仲直りしたいなぁ…
…でも、お茶会の日の朝、私はお父様に呼ばれた。
お父様はドイツ軍の中でとっても偉い人。
そんなお父様が私に大事な用だなんて、どうしたのかしら?
…お父様、この人達は誰?ねぇ、どうして鉄の檻へ私を閉じ込めるの?
お父様、お母様はどこ?お母様の泣き声が聞こえる。お願い、一人にしないで。お父様、ここから出して、お母様が泣いてるよ…
薄暗い檻の中…隅に置き去りにされた本。とても古くて、すぐにでも崩れてしまいそう。
でも、私はその本を抱き締めると心が落ち着く。なんでだろう…
ある日、その本の中からお父様とお母様が出てきた。
良かった、お母様は泣き止んでるみたい。
…そういえば、お母様はいつから泣いていたのかな…そんな事はいいか。
あれ?お父様とお母様が小さくなっていく。若返ってるみたい…
小さなお父様とお母様。二人とも両手に収まってしまうくらい小さい。
………あれ、なんだかとても気持ちがいい。何だろう…私、今とても幸せ…遠くから知らない人達の声が聞こえる。私、こコから出ラれるノかナァ…?
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なんかノリで頑張って書いてみた(キリッ

