…苺氷こと、西野雪那。只今絶賛迷子中。
 友人の家から歩いて3分の場所にあるはずの駅が、今はどこへ行ってしまったのだろうと私はあらぬ方向へと足を向けている。どうしたらいい、私はどうしたらいいの!!
 迷子になったらその場から動かないようにっていう言葉を聞いたような気がするのだが、動かなくてはシグマさんを見つけることはできない。
 というかなんという格好イイ服を着ているんだろうか(首から下を写メ)!!もしかしなくてもシグマさんってば超イケメンさんだったりするのだろうかとか考えたりそうでなかったり。いや、考えていますとも。
 すると、突然「わーかーれの時にー強がる僕は~…」と携帯が歌い始めた。びくっと慌てて通話ボタンを押すと、聞き慣れない声が。けれど、聞き覚えはある。
 

『今どこやねん』
 

「あ、あの…大阪中央病院前…」
 

『どないしたらそこに辿り着くんや…。絶対そっから動くんやないで』
 

「…わ、かった」
 

 乱暴なのに滲み出る優しさが嬉しくて、思わず笑みが零れた。どんな人なのだろうなと 思いながら待っていると、写真と同じ服を着た少し大人びたように見える少年がこちらに歩いてきていた。シグマさんかなと思って、声を掛けようとしたとき、ふと耳に付いているピアスが気になった。
 

(綺麗な色…って多いな。痛くないのかな…)
 

 ぼうと見ていると、その少年は辺りを見回してから私のことをじっと見た。
 

「…苺氷?」
 

「シグマさん?」
 

「…ほーん、改めて初めましてやな」
 

「はい。私は西野雪那って言います」
 

「財前光や」
 

 無愛想に言うと、首に手を当てて空を仰いだ。気まずそうに顔を逸らしてから、「着いてき」と言って歩き始めてしまった。慌てて後ろを追い掛けながら小さく首を傾げた。そして、思わず耳にあるピアスに手を伸ばす。
 ピアスまでもう少し、というところで、少しだけ顔を振り向かせて流し目でこちらを見てきたシグマさん、もとい財前さんは、彼の顔のすぐ手前にある手を、じっと見る。
 

「あ、ごめんなさい…。ピアスが綺麗だったから思わず」
 

 手を下ろそうとすると、軽く手を握られてふっと口元を緩ませた。
 

「このピアス、気になるん?」
 

「ぇ、うん」
 

「持ってみる?」
 

「え、いいですよ。見るだけで満足です」
 

 そう言って笑うと、一瞬間の抜けた…というか、きょとんとした表情をしてから「さよか」と言って再び前を向いた。歩いていると気付いた、彼は途中から私の歩調に合わせてくれてる。ありがとう、というと何がや?と返されてしまったけれど、ありがとう。
 けど、改めて見ても、かっこいい。何度見しても、かっこいい。
 こんな人の隣を歩いてもいいのかな、と僅かな不安が過ぎるけれど、今は楽しみたい。何をするのかな、と何も考えていないのを思い出す。
 

「あ、あの財前さん」
 

「さん付けやなくてええよ。で、何?」
 

「えっと…会ったのは良いけど、何をするか考えてなかったなって思いまして」
 

「せやな…とりあえず、近くのカフェにでも寄って行こか」
 

「はい」
 

 チョコラテとケーキを頼んでから、席に座る。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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*****あとがそ*****

チョコラテ美味しい、生クリーム乗っているとなお良し←

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To.シグマ
Sub.遅れてごめんっ
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お母さんの説教で時間掛かっちゃってごめんね><
場所はわかりやすければどこでもいいよ♪
シグマさんに任せます☆

 

-END-
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 長い時間が空くことなく、すぐに返信が来て心臓が飛び跳ねる。

 

 

 

from.シグマ
Sub.Re:遅れてごめんっ
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りょーかいb
てか、俺に委ねるとかやめとき(笑)
-END-
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To.シグマ
Sub.Re:Re:遅れてごめんっ
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大阪詳しくないですもんw
あ、じゃぁ駅とかにします?見つけにくいかな(笑)

 

-END-
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from.シグマ
Sub.Re:Re:Re:遅れてごめんっ
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駅ならええよ?
-END-
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To.シグマ
Sub.Re:Re:Re:Re:遅れてごめんっ
----------------------------------------

 

さっすが♪
じゃあ何時頃にします?

 

-END-
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from.シグマ
Sub.Re:Re:Re:Re:Re:遅れてごめんっ
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そっちに合わせるわ
その日決めよ
-END-
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To.シグマ
Sub.Re:Re:Re:Re: Re:Re:遅れてごめんっ
----------------------------------------

 

はぁい、かしこまりました!!

 

-END-
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「「早く時間が過ぎないかな」」
 

 

 携帯を持って心の中でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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*****あとがそ*****

財前君が素っ気ないメールだとちょっとキュンとくるんじゃないかt((ry

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「ぁ、メール来たー」
 

 少し高揚した気分で、携帯を開く。食事中に。
 

「携帯仕舞いなさい」
 

「…はぁい」
 

 シグマさんからというのは確認できたから、まあ良しとしよう。
 早くメールを返信すべく、ぱくぱくといつも以上に早めに手を進めていく。それを疑問に思ったのか、こちらをじっと見ている父親をちらりと見ると、じと目で先程以上に見てくる。
 
気まずくなってきたので、聞いてみると。
 

「大阪って…友達に会いに行くって言ってるが…」
 

「…何、何か問題アリ?」
 

「……最近お前のはまっているチャットとかいうので会った男に会いに行くんじゃ…!!」
 

 変なところで鋭い古い父親に、思わずご飯を吹きそうになる。何故それを!!
 しかしそれを悟られないように、ゆっくりご飯を咀嚼する。
 

「行くわけないじゃない、お父さんの頭の中は男の子ばっかなわけですか」
 

 嘲笑い気味に言えば、顔を真っ赤にして朝でもないのに新聞紙で顔を隠す。難は無事に逃れた。ほっとしたのもまた束の間、今度は強き母がこちらを見ながらにやにやと、やらしい笑みを向けてきた。
 

「……雪那、後で話があるからね」
 

 にっこり笑顔に、無言で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、付き合っている子はいるの?」
 

「いません」
 

 清々しい顔で一言そう言うと、席を立ってから部屋を出ようとする。家の家族は何かと色恋沙汰に物事を向けようとする性質があるのは何故だろう。しかし母はそれを許してくれそうにはない。
 

「甘いわよー。お母さんの目は誤魔化せない」
 

「彼氏はいないって…」
 

「大阪で会うのは友達もそうだけど、会うのはその子だけじゃないでしょー」
 

 女の観察眼は、本当に恐ろしい物だ。
 色々な話を左から右へ、右から左へと流しながら携帯でメールの返信をする。

 

  

  

  

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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*****あとがそ*****

敬語キャラなのかそうでないのか…^q^←

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 ………―

 
  海渡:細かいことは気にせずにみんなでやろーや!!
 

  苺氷:えーーーーー私めっちゃ遠いじゃないですかぁ!!
 

  海渡:大丈夫、いちごならイケるbb
 

  苺氷:wいwwwけwwwなwwwいww
 

  シグマ:無理はさせない方がいいんじゃね?俺らまだ中学生だし
 

  海渡:ほらまたそんなこと!シグマってば悪い子ね!!
 

  シグマ:誰やおまww
 

  実央:あーちなみに僕パスww
 

  海渡:みおーちゃんまで何言ってんのぉぉぉぉおおおお!!!
 

  実央:で落ち☆
 

  苺氷:私も落ちwww実央ちゃんお疲れ様w
 

実央さんが退室しました。お疲れちゃん☆[10/26/00:07:46]
 

苺氷さんが退室しました。お疲れちゃん☆[10/26/00:07:50]
 

シグマさんが退室しました。お疲れちゃん☆[10/26/00:07:59]
 

  海渡:シグマもかよぉぉぉおおお!!!!
      
俺も落ちよ…惨めッ(泣)
 

シグマさんが入室しました[10/26/19:28:19]
  

  シグマ:誰もいないか
 

苺氷さんが入室しました[10/26/19:30:37]
  

  シグマ:こん
 

  苺氷:こんーw ってシグマさんだけ?
 

  シグマ:他の人来ないんか?
 

  苺氷:みたいですねー・・・ シグマさん今日も部活ですか?
 

  シグマ:そそ
 

  苺氷:へー・・・ 何部でしたっけ
 

  シグマ:テニス部や
 

  苺氷:テニスかw私も小学校の頃は少しだけやりましたよ
      まぁ最近は全然ですけど(-ω-`)
 

  シグマ:テニス好きなん?
 

  苺氷:うんwwテニスは好きですよー 楽しいですし♪
      シグマさんは好きじゃないんですか?
 

  シグマ:いや、好きやけど
       嫌いだったらやってへんしw
 

  苺氷:それもそうですね(笑)
 

  シグマ:話変わるけどいい?
 

  苺氷:もちろんいいですよ?w
  

  シグマ:オフ会のことなんやけど本当にこっちまで来るん?
 

  苺氷:あー、やっぱ迷惑かな
 

  シグマ:いや金銭面とか色々な意味で
 

  苺氷:大阪には友達もいますし、大丈夫ですよw

      それにシグマさんともなんだかんだ言って1年以上のつきあいだし(笑)

      頼りにしてます☆←
 

  シグマ:俺のこと頼りにされても困るんやけどww
 

  苺氷:だって頼れるのがシグマさんしk(

      私も友達も方向音痴で頼りがいがゼロなんですw
 

  シグマ:誇ってるわけじゃないよな、それw
 

  苺氷:むしろ残念な部分だってことは重々承知してますよ・・・(自嘲
 

  シグマ:自嘲とか吹いたwww

       まぁ、そん時になったらなったで宜しゅう
       写メ送っといた方がいいか?
 

  苺氷:いや!!服と携帯を目印にwその時のお楽しみにしときましょw
 

  シグマ:せやなー
       そろそろ一旦落ちるわ
 

  苺氷:乙ー
 

  シグマ:じゃあ詳しいことはメールでー
 

  苺氷:了解した!!ノシノシ
 

シグマさんが退室しました。お疲れちゃん☆[10/26/20:09:26]
 

苺氷さんが退室しました。お疲れちゃん☆[10/26/20:09:34]

 

 

 

 

 

 

 

 

 チャットルームから退室すると、俺は携帯を取り出してメールボックスを開いた。
 片手で携帯を弄りながらもう片方でパソコンを弄る、という動作にも今は随分慣れた。パソコンは、今はもう大きな用事がないので、サウンドプレーヤーを立ち上げて音楽を流す。
 そうすると携帯に集中することができるのだが、改めて何を送ればいいのかわからない。他の人にはここまで悩む必要もないのに、どうしてだろうと思いながら適当に文章を打っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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*****あとがそ*****

何だかんだ言って、財前面倒見よさそう←

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 小さなその思わず

 

 

 
 

 

 

 西野雪那、14歳。
 
最近、気に鳴る音があります。
 

「………」
 

「…………さっきから何なんや、ウザイわ」
 

「………あ、ごめん」
 

 隣の財前くんの耳に付いているピアスが奏でるかちっかちっという、軽く堅い音。
 幼い頃から耳はよくて、ヴァイオリンもやっているのだけど、楽器とはまた違った音を出す彼の耳に付いた鉄に、最近は意識を奪われていることが多々ある。

 

 

 

 

 財前光、14歳。
 
最近、気になる視線がある。
 

「…こっち見んなや、目障りや」
 

「あ、ごめん」
 

「前々から思っとったんやけど、何が気になるん?その視線がやらしいわ」
 

「やらしくなんてないし。貴方の耳に付いているピアスがぶつかる音が気になってただけです」
 

 口を尖らせて不機嫌そうな表情を見せる。やらしいと言われたのが気に障ったのか。いずれにせよ彼女の本当の感情はわかりづらい。
 いや、どちらかというと単純という部類に入る阿呆な子なんだけれど、時々見せる真面目な表情や、同じような頻度で見せる複雑そうな表情。反応を見ればすぐわかるのだけど、よくわからないこともある。
矛盾しているのは、自分の方がわかっている。
 

「この音が気になるん?」
 

「うん、綺麗な音だよね」
 

 そんなの初めて言われた。
 もちろん、こんなピアスの音が気になるのは近くにいる人間なのだろうけど、ダブルスを組んでいる先輩にだって、そんなことは言われないし、普段過ごしている家族だって言わない(言ったら言ったで不気味だが)。
 そもそも、こんな小さい音に気が向くほど、暇人じゃないのだろう。
 

「…こんなちっさい音が気になるんか…」
 

「……何か、悪いかな」
 

 しょぼんとする彼女は…まるで耳を垂らした子犬のようで。 

(顔は可愛い、性格はまだ知らない)
 小さいことに気がつくのが悪いわけではなくて、ただ単に驚いただけだけど、それを言葉に出すほど素直じゃない。
 

「いや、自分にとって嫌なことも目に付くんやろな思て」
 

 嘲笑気味に言ったのだが、けろりとした表情でうんと軽く頷く。
 

「目には付かないけど、よく聞こえるよ」
 

「…聞こえる?そない耳がええの?」
 

「うん、だからね」

 

 

 

 

 

 

 ―…財前くんが部活で一生懸命テニスしてるのも、聞こえてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ざーいーぜん。おーい」
 

「…………何すか、耳元でうっさいっすわ謙也さん」
 

「ずっとぼぅっとしとって、反応せえへんからやん」
 

「…そんなん気のせいですわ。頭だけやなくて目も悪ぅなったんじゃないですか。はよ耳鼻科行ってください」
 

 いつもの嫌味も、どこか勢いがないような気がして堪らない。(作者の能力不足大)
 この会話も聞こえていると思うと、変に緊張している自分がいる。
 自分らしくないと思っていながらも、丸聞こえというのはやはり気が引けるのは当然だよな。と、言い聞かせるように心の内の声を反芻させる。
 ふと、気付けば教室の方を見上げている自分がいることに気付いて、慌ててコートに戻る。

 気になっている?
 そんなことがあるわけないじゃないか、あんな変人に。
 けど、あの笑顔に一瞬でもときめいてしまったのは、認めてしまおう。

 

「……認めたら、どうなってまうんや」

 

 その先を知りたいとも、知りたくないとも思ってしまう。

 部活が終わって、謙也さんの話しかけにも意識半分であしらってから、生徒玄関に向かう。
 下駄箱を覗くと、可愛らしい封筒が入っていた。
 今時そんなことはないだろうと思って、名前を確認してみると、西野からだった。
 驚いて中身を開いてみると、一通の手紙。
 

「……なんやねん」
 

小さく零れた独り言に口を押さえて、辺りを見回す。
そうして、手紙をバッグの中に入れると耳にイヤホンを付けて帰路に着いた。

  

  

 

 

 

 

 

 
―…また明日も、見てていいかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ええに、決まっとるやろ)

  

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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*****あとがそ*****

何度目か、財前むずい←

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