渋谷にあるセルリアンタワー東急ホテルの目玉の一つは、パリのラグジュアリーホテル「ル・ブリストル」のシェフパティシエで、2002年以来の技術提携関係にあるローラン・ジャナンさんの監修するケーキが頂けることですね。
ローラン・ジャナンプロデュースのケーキの数々は、1階の「かるめら」とロビーラウンジ「坐忘」で通年提供されています。
ですが、ジャナンさんとの提携による最大のハイライトは、40階のフレンチ「クーカーニョ」で開催される年一度のイベント、「ローラン・ジャナン プロモーション(Laurent Jeannin Promotion )」でしょうか。
同レストランの永妻シェフが手掛けるプロヴァンス料理のコースと、ジャナンさんのケーキがデザートに頂けるこのイベント、ジャナンさんご本人も来日されるので、会えるのを毎年楽しみにされているファンも多いとのこと。
私自身は今年初めて、最終日のランチタイムで伺えるよう、何とか都合をつけることができ(出張からの帰国翌日ながら午後半休がとれた!良かった)、とても楽しみにしていました。
が、7月に入って、ジャナンさんの体調がよくないために来日は中止…との告知がウェブサイトにありましたが、その後程なくして、7月7日残念ながら亡くなられたとのこと。
来日中止、そして訃報の際にはそれぞれ、レストランから連絡がありました。
プロモーション自体は予定通り実施するものの、ジャナンさんとの対面は叶わないため、予約客一人一人に確認をしていたようです。
私はというと、初の機会でこのようなことになるしまった残念さはあるものの、今後同じイベントが実施される保証もないため、参加には迷いがなく。
というわけで、7月14日の遅めのランチタイム、「クーカーニョ」に行って参りました。
入り口すぐのところにジャナンさんのお写真。
できればお会いしたかったけれど。
前回来たのはもう何年前だったか…。
毎日、隣のセルリアンのオフィス棟で働いているというのにね。
窓際のお席。天気がよくてラッキー!
テーブル上は爽やかな白と黄色を基調に、シンプルに。
ドリンクはサンペレグリノのアランチャータを。
オレンジフレーバーのミネラルウォーターですが、微炭酸なので、強い炭酸が苦手な私にはピッタリ。
お通し。
でんでん太鼓(?)風ルックスのこちらは、薄焼煎餅みたいなパンにアンチョビとバター風味のマッシュポテトを挟んだもの。
サクサク生地にアンチョビの香りたっぷりで、これはかなり好み。
こちらは白いチーズと、生ハム、枝豆を載せたチーズクッキー。
土台のクッキーはサブレ風のしっかりした歯応え、濃厚な味わいで存在感バツグンです。
プロモーションのランチメニューです。
左にデセールメニュー、右はお料理のメニュー。右ページ下には、「クーカーニョ」シェフの永妻さんのサイン。
ランチは、「セヴェンヌ」と「ヴォークリューズ」の2種類ありましたが、今回はメインが1品の「セヴェンヌ」にしました。
コースの内容はこんな感じです。
「セヴェンヌ」(7,365円)
・アミューズ ブーシュ
・鱸のカルパッチョ クールジェットのサラダとトマトヴェルジュソース
・クーカーニョ スープ・ド・ポワソン
☆メイン料理は以下から一品チョイス。
・イサキのポワレ アンショヤードとタジャスカ種オリーブをピケしたフヌイユとともに
・松阪ポークのロティ ジロール茸とじゃがいものソテー タプナードをそえて
・牛フィレ肉のグリエ 三方原馬鈴薯のピューレ ジュ・ド・ヴィアンド
・柔らかいマンゴーのジュレ オリエンタル風のソルベ
・ローラン・ジャナン スペシャルデザート2017
・小菓子・コーヒー
・紅茶 またはハーブティー
ちなみに、「ヴォークリューズ」は以下のようでした。
スープの代わりにオマール海老の前菜になり、あとはメインが魚、肉一品ずつです。
「ヴォークリューズ」(10,929円)
・アミューズ ブーシュ
・鱸のカルパッチョ クールジェットのサラダとトマトヴェルジュソース
・オマール海老の冷たいジュレ アヴォガドのエスプーマ オレンジ風味
・イサキのポワレ アンショヤードとタジャスカ種オリーブをピケしたフヌイユとともに
・牛フィレ肉のグリエ 三方原馬鈴薯のピューレ ジュ・ド・ヴィアンド
・柔らかいマンゴーのジュレ オリエンタル風のソルベ
・ローラン・ジャナン スペシャルデザート2017
・小菓子・コーヒー
・紅茶 またはハーブティー
さて、この日頂いたコースに話を戻します。
こちらはアミューズ。
向かって左から、少しソフトなのとハードなタイプのフランスパン2種、ほうれん草など緑の野菜を練り込んだパン、ゴマやひまわりの種など雑穀入りのパン、海藻入りのパン、そしてソフトなパン2種類です。
一通り味わえればよいんですが、やはり気になるのは、一味違うフレーバーのハード系。
2種のソースは混ぜて頂きます。
貝とお肉のミックスソースは、パンチのある味で、普通なら魚より肉料理と合わせそうな感じです。
でも、皮をパリパリに香ばしく焼いたイサキも、味、ボリューム共にばっちり存在感があるので、決してソース2種類の強さに負けたりしていないのがさすがです。
付け合わせは、タジャスカ種オリーブを埋め込んだ、フヌイユことフェンネル。
主張の強いお魚とソースの傍らで優しく寄り添うような、柔らかでほんのり甘い仕上がりです。
アヴァンデセールはマンゴとミントのジュレに、ミント風味のライムのソルベ。
ジュレといっても、プルプルではなく、トロリとソースのように柔らかに仕立てています。
ソルベは、爽やかな酸味に加え、とにかく鼻に抜けるような清涼感が印象的です。
何というか、パクチーとかライムとか、あの辺の東南アジア風な組み合わせが好きな人には猛烈にクセになりそう。
でも、一方でバニラの香りも効いていて、単に尖った酸味ばかりが残るのではなく、よい後味と余韻に浸れます。
最後はミニャルディーズ(小菓子)にコーヒー。
ミニャルディーズは、パッションフルーツのギモーブ、キャラメル味のマカロン、コーヒー風味のショコラ。
淡い黄色がほっこり可愛いギモーブは、パッション味はそこまで強くなく、優しい味わいです。
マカロンもキャラメル風味よりは、さっくりした表面と、中のトロリと柔らかな食感のコントラストを主に愛でる感じ。
でも、ローラン・ジャナンさんのブランディングのショコラはやはり一番濃厚、〆に相応しいリッチな味。
酸味やハーブの効いたアヴァン・デセール、グラン・デセールの後で、味の濃淡もうまく計算されたミニャルディーズ、さすがですね。
食後は、お料理担当の永妻シェフ、パティシエの牧野シェフがテーブルまでご挨拶に来て下さいました。
やはり、どうしてもジャナンさんのことに話が集中してしまいます。本当なら、7月8日に来日されるはずでしたが、亡くなられたのは奇しくもその前日の7日。
永妻シェフは今年3月に渡仏し色々ジャナン氏と打ち合わせもできたので、このプロモーションは彼の意思を反映したものにできたかと思います、と仰っていました。
永妻シェフ、牧野シェフとも、長年の提携を通してジャナンさんからは多くを学び、また仕事の上では勿論厳しい面はあったけど、その人柄は優しい、素晴らしい人だったので、本当に残念と語っておられました。
また、最後まで「ル・ブリストル」の現役バリバリパティシエであった彼が突然いなくなってしまったことで、もう今ごろあちらは大変なことになっていると思います…とも。
ジャナンさんの冠の企画はこれからも残していただければと話したところ、「残してくれたノウハウは膨大なので、今後も彼の作品はセルリアンで引き続き提供できればと思いますが、やはりこれから色々大変そう…」と仰っていて、契約、権利関連で難航しそうなことを匂わせておられました。
でも、「やはり継続するためには、皆様のお声があってこそですので、ぜひ応援頂ければ」とのお言葉でした。
さて、お腹も心も満たされた帰り際、お土産にと紙袋を手渡し頂きました。
中はパン5つ!
ランチで頂いた3種に加え、フランスパン2種。
わーい、ハード系ばっかりだ。嬉しい。
…それはともかく、ご本人不在でも、永妻シェフ、牧野シェフ他の皆様のご尽力で、ローラン・ジャナンさんの精神をしっかり感じるプロモーション、堪能させて頂きました。
ごちそうさまでした!