「んっ、敦賀さん‥」
閉じられていた瞳を静かに開いて小さな声で俺の名前を呼ぶ。
「すみません。撮影頑張ります。だから降ろして下さい。」
目は潤んでいるし頬はほんわりと赤いが真剣な瞳でそう言った。
「駄目だ。ちゃんと休んだ方が良い。これは最上さんのために‥」
彼女を見ると、今にも泣きそうなくらい涙を溜めて俺を見ていた。
最上さん‥
気持ちは分かるけど、お願いだからそんな目で俺を見ないでくれ。
なんでも許しそうになる。
いかん。
ここは心を鬼にして、彼女を家に帰らせなきゃいけない。
どんなことを言われても。
「敦賀さん‥ヒクッ、私、お仕事に穴を空けたくない、んです。お願いします‥ッ」
ついに泣き出してしまった彼女。
「敦賀さん‥」
「いいよ。」
あぁ、許してしまった‥
彼女にあんな顔されたら俺の中にいる鬼も簡単に倒されてしまった。
「そのかわり、辛くなったら俺にすぐ言うんだよ?」
「はい!」
そうして、何も知らないスタッフとキャストさんとの撮影が再開された。
*****
「最上さん?大丈夫?」
高熱のため俺の車で彼女を家の前まで送ろうと思ったんだけど、熱が上がっているのか辛そうにして眠っている。
「んーどうしようか。」
この体調の最上さんを家に帰しても、だるま屋の女将さん達を心配させるだけだし‥
今日は俺の家で看病しよう。
(続く)
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