その後の父
今年の六月末に「外傷性くも膜下出血」と診断され、入院していた父。当初は、起き上がる事も出来ず、一日の大半を寝て過ごし、目が開いても心がここにない顔つきで、会話もおぼつかない状態でした。私は、「もうきっと長くはない」と思い、平常心ではいられなかったのですが…。病院の方々の手厚い看護と、前向きな母の朗らかなサポートにより、逢いに行くたび元気になり、今ではリハビリをこなし、今週末には退院の運びとなりました。病室の張り紙に「起き上がり0秒」と書いてあるので、これはなに?と母に尋ねると「よっこいしょ、なんて間を使わず、動こうと思ったら一瞬でバッ!と起き上がるからこう書かれてるのよ」だそうです。元々父と言う人は、内弁慶というか、家族に対しては口調もきつく、短気で、カッと来たら顔つきがかわるので、ちょっと怖い人なのですが他人様に対してよほどの事がない限りはそんな態度を取ることもなく陽気なおっちゃんなのですが・・・。病院のスタッフの方々は、もう家族のような存在になっているのでしょうか。はたまたボケて自制心が効かないのか。看護士さん達に対して、素直ないい患者とは言えず、申し訳ない気持ちになる事が多々。「リハビリ行きますよー」に対しても「なんでじゃ」「いかん!」「たいぎい」「お前が勝手にやれ、わしはせん」など。わがままやり放題。「父さん、孫が学校に行って先生に○○しなさい、と言われて、そんな態度取ってたらどう?いけんでしょ。ちゃんと言う事きかんにゃぁ」と言うと、起き上がり0秒で「やかましい!やればええんじゃろうが!」と動き出すので、転びやしないかとみんながヒヤヒヤ。リハビリ中も、しょっちゅうストライキを起こして動かなくなるので、スタッフの方も困り顔。私の長男は、こういうぞんざいな横柄な態度を取る顧客が大っ嫌いなので見る見るうちに険しい顔になる。(父もかつては、他人様に迷惑をかける行為は恥とみなし、ずいぶん厳しく躾けられました)どうしたらええじゃろう、と思っていたら。「じいちゃん。じいちゃんの運動神経のよさなら、この数字を100にするくらい、朝飯前でしょ」と長男が横から話しかけると、パッと顔が明るくなり「こんなもん、朝飯前じゃ!」とばかり、起き上がり0秒で猛烈な勢いで運動し始めてあっという間にこなしてしまう。初孫マジックか、はたまた長男の話術のうまさか。スタッフの方も、母も私も助かったのはいうまでもありません。怖い顔をしてみていたのは、どうやったら楽しんでリハビリをしてくれるだろうか?と考えていたそうです。ますます扱いが難しくなった父なので、退院してからが、母の負担が大変なのではと思います。残念な事に、近くに住んでいる弟夫婦の協力はまったく期待できないので遠方ながら、少しでも母の負担が軽くなり、一人で抱え込んでる気持ちにならないように、と思っている所です。ご心配してくださった方、心にとめて事あるごとに声をかけて下さった方、心からお礼申し上げます。じじはますます、ペガサスです。