たった数ページ。
涙が出そうになるのをぐっとこらえた。
どうしてこんなに、胸の奥にことばが響いて、余韻がいつまでも残っている。
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今になってわかる。
高校3年生の受験直前に父を突然亡くしてから、年の離れた弟妹を持つ長女というところからきていた『根本では両親に頼っているにもかかわらず表面的に甘えることができない』という性質の『根本』がゆらいで、心のバランスを大きく失っていたころ。
親ほど年の離れた人に恋という形のわかりやすい愛情を求め(若さを武器に!)、自分の本心-本当は両親の深い愛情に甘え自己を認められたいだけだ-とのギャップに気がつかずどんどん心に無理が来ているというのに、手放す勇気もない。
どんなに愛情を向けた大切な人ともいつかは別れが来る、という事実を突如つきつけられ、しかもあんなに悲しかったのにどんどん記憶は鈍くなり、普通に暮らし続ける自分に辟易とした。
大切なはずの家族と向き合えず、離れて暮らすことでやっとバランスを取れるようになって。
今は社会人になり数年が経ち、結婚して家族を持てたことで随分と穏やかになった。ふつうの恋愛が、そのままの自分を許されることが、どれだけ心を癒し幸せなことかと思う。家族と離れて暮らすことへの不安-例えばもしものときに駆けつけられないリスクなど-は胸の片隅に常にあるけれど、自分の根本を大切に真摯に生き抜くことが、孝行に繋がると信じるしかなくて。
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そんな私の、心の奥底の甘えや葛藤を、おおらかに的確に受け止めてくれているような話だった。
まるで自分の内面を見透かされているような描写がいくつかあり、そのたびにドキドキした。
自分は自分でいいと、温かな許しをそっと置いてくれたような気がした。
あぁ、こう思っていたのは自分だけでなかったんだ!良かったんだ!というように。
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本作品を読んだ後、偶然おなかの手術を受け、数日であったが「おなかに力を入れず、そうっと暮らす生活」をすることになった。手術後の回復の過程とか、そのときの心情など、小夜ちゃんを思い出して乗り越えることができた。
よしもとばななさんの『キッチン』『ひとかげ』とともに、いつまでも大事にしたい本だ。
