今回は、男性がパートナーの女性から口にされるとドキッとする(かも知れない)あの言葉「認知」を見てみましょう。

 

認知とは、原則として父親が、嫡出子でない子(=非嫡出子、婚外子)を実の子として認めることです。

 

女性は出産するので赤ちゃんとの母子関係は、認知するまでもなく当然に認められます(判例)。ただし、捨て子など特殊な場合には、母親が認知することで母子関係が成立します。

 

●認知の種類:

認知には、次の2種類があります。

1)自発的な認知(=任意認知(にんいにんち)

父親が自発的に役所へ認知届(または遺言)を出すことで行われる認知。

 

2)強制的な認知(=強制認知(きょうせいにんち)

任意認知がなされない時、子供が父親に求めることで行われる認知。父(または母)を相手に裁判で決着をつけます。なお、父(または母)が亡くなっている時は、検事が被告になります。

認知の訴えは父(または母)の死亡の日から3年を経過すると提起できません。3年も経つと色々経緯も分からなくなりますし、周りも混乱しますからね。

 

 

●ちょっとポイント:

 

民法(親族法)の底流には個人の意思の尊重」と「子の権利の保護」そして「常識と良識と正義」という確固たるポリシーがあります。

 

認知をめぐる論点は色々ありますが、認知する人、認知される人は誰かを考える時は、この発想に立ち返ってくださいね。

 

 

●任意認知するための能力(認知能力):

未成年者や成年被後見人(せいねんひこうけんにん)(※)による認知は可能でしょうか。

(※)成年被後見人は民法総則で学びましたね。「精神上の障害があって、一定して物事を判別したり理解することが難しい状態の人」です。例えば重度の認知症の方などです。

☞これらの方々でも法定代理人の同意なく認知できます。法定代理人が代わって認知することはできません(判例)。個人の意思の尊重です。

 

●承認が必要となる任意認知:

認知するに際して関係する人の承諾を要する場合があり、それが次の3つです。

 

1)成人した子に対する認知

親が成人した子を勝手に認知できるとすればどうなるでしょうか。

子供さんには親御さんを扶養する義務も発生します(民§877親族相互の扶養義務(ふようぎむ)です。後ほど学びましょうね)

☞成人した子の承諾が必要です。子の権利の保護です。

 

2)亡くなった子に対する認知

亡くなった子供さんに、さらにお子さんなどご家族がいた時はどうなるでしょうか。1)と同様、勝手に親子関係を作り出されても迷惑なこともありえます。

☞お孫さんなどで成人した直系卑属がいる場合、その承諾が必要です。子(に準じる人)の権利の保護です。

 

事例40年前に置き去りにした子の世話になりたいX

 

貧乏学生のXは、窓から神田川が見える3畳一間のボロアパートでY子さんと内縁のまま同棲していたが、ほどなく女の子E美ちゃんが生まれます。

 

ところがX、アルバイト先で知り合った資産家の令嬢K子と懇意になり、突然Y子さんとE美ちゃんを捨てK子と駆け落ちしてしまいます。

 

Xはその後、K子と世界中を転々、40年近く気ままに人生を謳歌していたが、やがてK子が事故死、K子の実家も倒産、X自身も病んだ身体で40年ぶりに帰国します。

 

先日、旧友を訪ねたXは、Y子が女手一つでE美を無事育てたが、苦労がたたって最近この世を去ったこと、そして、E美が関西で元気に暮らしていることを聞きつけた。

 

日本に頼れる者もなく、将来を不安に感じたXは、E美を正式に子として認知し、法的な親子関係を確かにして、E美に老後の面倒を見てもらいたいと考えている。

 

果たしてそのようなことが可能だろうか。

 

 

常識的に考えてXのこのような身勝手は許されません。上記の1)の通り、こういう場合、民法もXからの一方的な認知は許しません。

上記の1)や2)は、承諾というプロセスをかませることで無責任だった親の身勝手を抑制しているわけです。(民法さん、厳しいところは厳しいけど素敵!)

 

3)胎児に対する認知

父親が母親に無断で間違った認知をしたらどうなるでしょうか。母親にとっては名誉その他の利害にかかわる大問題です。

お母さんの承諾が必要です。なお、当然ですが胎児本人の承諾はあり得ません。

 

(参考)胎児の民法上の権利(胎児から父親へ認知請求の可否)

 

上述の通り胎児も認知を「受ける」ことは可能です。一方、胎児から認知を「求める」ことはできるでしょうか。

 

答えはノーです。理由は、胎児には権利能力がないからです。権利がないのですから代理、例えば、お母さんが胎児を代理して認知を求めることもできません。

 

一方、胎児には不法行為に基づく損害賠償請求権や相続権が認められます。これは胎児に権利能力があるからではなく、もし生きて生まれて来たならば、その時は権利を認めようという趣旨です。生まれてくることを条件(停止条件)にして権利を認めているに過ぎません。

 

 

●任意認知の取消し:

一度した認知は取消すことはできません。

なお、そもそも認知の意思がなかったり、血縁関係がないのに認知したように認知が真実でない場合は、認知した人本人からも含め「無効」を争えます。(判例)

 

●(任意・強制)認知の効果:

・認知の結果、親子関係が発生します。この親子関係が生まれた時に(さかのぼ)って発生します

・(既述の通り)親子であれば扶養義務(ふようぎむ)が発生します。

・親権は当然に発生するわけではありません。父母が話し合って決めます。(非嫡出子の場合、通常はお母さんが単独行使です)

・戸籍は依然母親の戸籍、苗字も母親のものを名乗ります。ただし、家裁の許可で父親の苗字を名乗れます。

・認知されても非嫡出子ですが、相続の権利が発生します。そして相続分は嫡出子と平等となります。

(注)2013年の民法改正以前は、非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2と規定されていました。しかし、これは法の下の平等に反するという最高裁判決が出された結果、
現在では相続分は平等となっております。

 

●次回、「俺の子じゃない」「嫡出子じゃない」など、どちらかというとお父さん側の主張に関するポイントを見ておきましょうね。

 

“あ~も~一日中文書作成、疲れた~”(帰宅即バタンキューの沙姫(さき)ちゃん)

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