週末、NHK土曜ドラマが待ちどうしいH&T係長ですが、婚姻の締めくくり、婚姻の無効と取消だけはご一緒に見ておきたいと思います。どうかお付き合いくださいね。

 
頑張って!引きこもり先生!

 

民法、親族・相続法は「個人の自由意志の最大の尊重」がポリシーです。受験で解答の判断に困ったとき、最後はこのことを思い出してくださいね。

 

最初に下表の無効と取消のまとめにざっと目を通しましょうか。

区 分

婚姻の取扱い

パターン

婚姻届なし

婚姻関係にない

婚姻届あり

(実質要件のうち)婚姻意思なし

婚姻無効

婚姻意思あり

(婚姻意思以外の)実質要件なし

婚姻取消可能

(婚姻意思以外の)実質要件あり

有効な婚姻関係

婚姻意思に瑕疵(かし)あり

婚姻取消可能

 

【婚姻の無効】

婚姻の形式要件(=婚姻届)が出されていない場合は無効でしょうか。答えはノーです。そもそもこの場合、婚姻は成立してません。無効もへったくれもないわけですね(パターン①)。

 

婚姻が無効とされるは、婚姻届は出ていても実質要件のうちの婚姻の意思(社会通念上婚姻と見られる夫婦の共同生活を送る意思)がないことです。(パターン②

 

(無効の効果は?)

無効となれば婚姻関係は最初からになかったことになります。その結果二人の間に子供がいれば、放っておくと非嫡出子(ひちゃくしゅつし)婚外子(こんがいし)として扱われます。

嫡出子、非嫡出子については親子関係のところで学びましょうね。

無効は利害関係があれば誰でも主張できます。

 

【婚姻の取消し】

婚姻は、婚姻届さえ出ていれば婚姻の意思がない場合(無効となる場合)を除き、とりあえずすべて有効です。(パターン③、④、⑤

 

取消が可能となるのは限られた場合、すなわち、婚姻の意思を除く婚姻の実質要件がそなわっていない場合パターン③)と、婚姻の意思に瑕疵(かし)(欠陥)がある場合パターン⑤)です。

 

●パターン③

婚姻の実質要件は第323回配信で学びましたね。確認の意味で「婚姻意思」以外の実質要件を一応挙げておきましょう。(民§73136

1)婚姻年齢にある満たさぬ例:18歳未満の幼な妻との結婚)
2)重婚禁止に反しない(満たさぬ例:一夫多妻的な結婚)
3)再婚禁止期間に反しない(満たさぬ例:舌の根も乾かぬ間の再婚)
4)近親婚禁止に反しない(満たさぬ例:近親相関的な結婚)
5)直系姻族間の結婚禁止に反しない(満たさぬ例:お(しゅうと)様と結婚)
6)養親子間の結婚禁止に反しない(満たさぬ例:養子と結婚)

 

ここで1)~6)を30秒ほどじっと眺めてください。共通点が見えて来ませんか。そうです、これらは「こういう関係はむやみやたらに認めちゃうと社会そのものがヤバくなるかも」という性格ですね。

パターン③の場合、婚姻の取消は、当事者や親族に加え、国(社会秩序)を代弁して検察官からも裁判所へ取消請求が可能です。

 

●パターン⑤

取消パターン③に加え、婚姻の意思に瑕疵(かし)(欠陥)がある場合、即ち詐欺(さぎ)強迫(きょうはく)の時も認められます(パターン⑤)。詐欺や強迫を理由とする婚姻の取消は家裁へ被害当事者本人が求めます。

 

(取消しの効果は?)

取消の効果のうち、身分関係は将来に向かってのみ発生し、過去には遡及しません。だから無効の時のように子供が非嫡出子(婚外子)になることはないです。

一方、財産関係は、過去に遡及します。よって、婚姻後財産を得ている場合には返還(きれいに清算)せねばなりません。返還すべき財産の内容は、婚姻した時に取消原因を知っていたかどうかで違ってきます。

婚姻当時、取消原因を知っていたかどうか

返還すべき財産

注意点

知らなかった

現存する利益のみ返還

浪費してしまったら返還義務なし。一方、生活費に充てていたら返済義務あり

(この結論に少し納得いかない場合、納得いかないということで記憶にとどめてくださいね)

知っていた

得た利益の全てを返還

 

 

発展事例:(だま)されていると知りながら夫婦関係を続けたM子さん

 

M子さんはX雄と結婚、入籍して夫婦生活を始めた。ところが、結婚直後からX雄が頻繁に出張するようになり、また、知らない女から電話が掛かってくることに気付いた。

 

不審に思ったM子さん、とうとうX雄を問い詰めた。最初はのらりくらりと口実を並べていたX雄だが、M子さんの厳しい追及を前についにM子さんを最初から騙していたことを認めた。

 

M子さんはX雄を激しく憎悪しながらも男女の関係は不可解なもの。半年もダラダラと関係を続けていた。だが、身も心もボロボロになったM子さんはついに別れを決意する。

 

M子さんが結婚詐欺にあっていたことは事実。果たしてこの婚姻を取り消せるだろうか。

 

 

解答:

 

詐欺を発見、または、強迫を免れた後、3か月を過ぎてしまった場合、もはや取消は不可能です(民§747②)。詐欺に気づいて半年が過ぎてしまったM子さん、残念ながら婚姻を取消せません。

 

ただし、実際、X雄のような人間と婚姻を続けることは難しいわけですし、離婚を目指した勝負の道はまだ残っています。

 

 

●次回からは婚姻を離れ、親子関係のテーマに入ります。

 

P“彼に裏切られたあの時、本気で刺し違えようか考えてたと思う”(下町人情気質なP子ちゃん/東京都台東区出身)

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